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第四十八回 有情人終成眷属 遼王建国封百官

高順は長春城の前で三日間変わらずに立っていた。山上王は日に日に憔悴して行った。元よりあの者を、遼王を怒らせるつもりは無かった、と言うのが本音だろうが結果は戦争に至った。元より王室の出、君主としての素質は備えてあるが、どの道死ぬであろう…。兄が自分を取って代わると予見はしているが、せめて自分の唯一の子である公主を逃がさんと腐心したが、結果娘は軍に入ったりと、不幸が重なって憔悴しているのだった。


目を開ければ弁韓、辰韓、馬韓、扶余ら諸国の首長らが首を長く揃えていた。


「…、此処は吾が出て話を聞こうと思うが…、どうか?」


首長達はそれぞれ顔を見合わせ、それぞれの腹の中に抱えてる算盤を弾き始めた。


口では『行けません!』『成りません!』の大合唱だが、内心には行って殺されてこい!と言う本音が隠されているのは山上王にもわかっていた。


ふぅ…、どの道あの者とは顔を合わせねばなるまい?


「よい、皆止めてくれるな…、会ってこよう」


「大王!」「行っては…!」「護衛を!」


フフフッ!顔に出ておるわ!まぁ、良い…、これが吉と出るか凶と出るか…!あの王に会わねばなるまい?


高景は傷を暫く癒し、父の横に立った。


「父上」


「おぅ、来たか!バカガキ!」


「少々強引に出過ぎました…」


「ん?てこたァ…惚れてんだな?」


「はい…」


「んだよ!煮えきらねぇな!」


「しかし…」


「腹の中にお前の子が居るのだろう?」


「はい…」


「なら、もはや我が高家の嫁だ、その子も儂の孫だろうよ!お前も父親なんだからシャンとしろ!」


「はい!」


同時に城門前の吊り橋が降りて門が開かれた。


野郎、三日も待たせやがって!適当こいたら承知しねぇぞ?


山上王は出て来て高順と互いに挨拶を交わした。


「将軍…、いや、遼王久しいですな」


「うむ、見たところ陛下も恙無くお過ごしのようで何より…」


ここから心理戦に突入した。


「フフフッ、此度は何用で?まさか『国を追い出されて山大王(山賊)にでも』なられたか?」


高順も理解した相手は嫌味を言っているのである。


「ハハハッ!ま、『家を喪った犬が遠吠え』して無為に事を荒立てるよりかはマシでしょうな」


嫌味には嫌味で返すのが高順である。横で聞いている高景は気が気で無い、片や惚れた女の父親だ、そんな息子を横目に高順は更に意地を悪くする。


「そろそろ、『鳩に巣を返してくれんかな?』雀の居場所では無いから困るでな」


これに山上王は怒りを示した。どちらが鳩でどちらが雀か、これには納得しなかった。貴様らが我らを攻め、我が父祖伝来の土地を奪い、挙句の果てには…!と沸沸と怒りが湧いてきた。


「ならば、高句麗を返して下さらんかな?」


「ふん、何が高句麗を返せだ、お前の先祖の東明聖王が漢の孝武皇帝より掠め取ったのだろう?」


「…!」


見方を変えれば山上王は否定出来ない。楽浪、玄菟、真番、臨屯の四郡を漢から奪ったのも高句麗であったため、何とも言い難い事であった。


「さぁ、どうすんだよ?」


「戦は避けられませんか?」


「避けようがねぇだろ?ま、言っておくが我が配下の兵達は皆、百戦錬磨にして百戦して後にその身を余らせた猛者たちぞ?」

(百戦して後にその身を余らせる:数多の戦を戦い、生き残ったの意)


「…、なるほど…、彼らは納得しないでしょうね…」


「ハハハッ!良いだろう!時間はくれてやる、一戦じゃ!尚武、行くぞ!」


「は、はっ!」


高順は諸将を三州と半島の各地に拡散させ、連合軍側の精鋭を叩き、偽情報をバラ撒いた。この偽の情報を踊らされた長春城内の連合軍首脳は出撃を決めた。


「大王!今こそ…!今こそ攻め時でございますぞ!」


「しかし…、少しばかり時期尚早では無いか?」


「何を仰いますか!敵軍の減りが異常に早いではありませんか!」


「罠では無いのかね?」


「そんな…!」


「もう暫く様子を見よう」


確かに高順の軍は徐々に減っていった、それは高順が単純に吉州内に敵が居たとしても自身が囮になって敵を誘うか、分散した各軍が敵を撃破していくと言う二段構えの戦略であり、何としても三州を手に入れねばならんと言う強き信念に依るものであった。


長春城内は食料が少なくなって行った。日に日に強奪、窃盗等が明るみになり、山上王らはこれに対処する為に仕方なく兵を組織し、高順を攻めるのであった。


「報告!敵軍の動き慌ただしく…」


「うむ、戦闘準備をしろ…、来るぞ?」


「はっ!」


高順は張亮、羅胤、呉資、章誑、麹義が直属内で独立した将軍となり、新たに陥陣営の指揮官を取り立てた。新たに抜擢した将軍には上官敵、尉遅統、拓跋形、慕容聡、令狐満の五人だ。


どれも、実戦で軍功を上げ、軍内では誰も文句言わないほどに仕上がっている。


この五人の新人指揮官達は先輩達に比べると少し手を焼くが、それでも目を潰れるほどの実力は持っている。上官敵、矛を手に持つ勇将で、遠距離からの奇襲に長けている。高順が袁紹と戦っていた頃に入隊し、一兵卒から成り上がった猛者でもある。


尉遅統、鮮卑尉遅出身の武将、『騎兵の指揮を任せたら軍中随一の才』を持つ【陥陣営】の先鋒。


拓跋形、鮮卑拓跋部出身の剛勇無比な猛将、高順の切り札でもある。


慕容聡、鮮卑慕容部出身の草原の賢者と渾名される智将である。


令狐満、匈奴系鮮卑族令狐部出身の武将、武将として単独で軍を率いる事はまず無いが、外交等の政治、謀略を駆使する謀将。


「さて満よ、どうする?」


「…、拓跋将軍は迂回し城を占領してください、尉遅将軍は敵の退路を…、慕容将軍は敵と正面より、上官将軍は王と共に」


「っ…!おい!テメェらで手柄を独り占めかよ!」


「いえ…」


「っざけんな!殺すぞ!」


「敵、落ち着け…、満もその様な意図ではあるまい?其れに鮮卑同士連携取りやすいんだろ?」


「しかし…!」


「お前は俺の横に付いてろ、指示あるまで離れるな!」


「はっ…」


「よぅし!動くぞ!」


そこからの行動は早かった。


「敵、腐るな、この位など戦とは言わんぞ!」


「しかし…!」


それ以上言うなよ?俺がキレるぞ?


「しかし、殿下…、この先どうするんですかい?」


「どうもこうも有るかよ…!なるようにしかならねぇよ!」


高順、高景、上官敵の三人で軍を率いていたが、高景が安倩を見つけた為、自身の部隊を率いて突撃していった。


「敵、バカ息子を任せたっ!」


「はっ!」


上官敵は高景の援護をしつつ、敵を包囲した。


「坊ちゃん、お行きなされっ!」


「ありがとよ!」


高景は少し下腹を出した安倩に近づき、安倩は自身を汚した男が近づいてくるのを感じ取り剣戟を交えた。


「また会ったな」


「…!」


「そう、いきり立つな。腹の中の子に悪かろう」


「だからって…!この子は渡さない!」


「ふざけるな。俺の子であろう?ならばお前は俺の妻だ」


「はっ!今この状況で!?貴方は馬鹿なの?」


「ふっ、楽になれ」


高景は馬を近づけ、安倩の手を強く握り剣を棄てさせた。


「どうせ、お前らの軍にはこれらを統制する将等もはや残っておるまい?」


「くっ…!」


「そう、悔しがるな、どうせ首長どもは尽く討ち果たす。父上がそう言っておったぞ」


「なっ…!?そ、それじゃ父上も?」


「そうだ。高句麗の王としてだ」


「そんな…!」


「お前の父親が正しかろうが悪かろうが関係ない、誰かが責任を負わねばなるまい?」


「私は…、私は…!」


「国が滅べばもはや、公主とは言えぬだろう?」


「貴方…!」


「黙って俺の女になれ、それ以外は許さん」


「何様のつもりよ!」


「俺が勝者でお前が敗者だからだ」


安倩は反駁の余地すら与えられなかった。


「わかったわ…!でも、私以外の女に目移りしたら殺すわよ?」


「あ、あぁ、わかった。」


高景は自身の戦場で一応の決着をつけた。


高順は戦場で武芸が不得手の山上王と対峙し、其れを討つ一歩手前まで来た。


「王よ、勝敗は明らかだ。降れ」


「私にも退けぬ理由と言うのが有るのですよ!」


「そうか、ならば死んでもらうしかないな」


山上王の剣を高順の槍が弾き、同時に高順は鐙から足を外し山上王を蹴り落とした。


「…、亡国の王に相応の死に様を見せろ」


「感謝致しますぞ!」


決着は着いたが、屈強な高句麗の兵が敗れたとあっては城内も決して穏やかでは無かった。


「なんと!敗れただとぉ?そんな事があってたまるか!」


「そんな事言って場合か!我らは…、我らはどうすれば良い?」


拓跋形は城内に入り込み内城を取り囲んだ。


「おい、中の奴らは良くけ聞けっ!大人しく死ぬか、最後の力で反撃するか、二つに一つだ。それが我が王の言伝である!」


拓跋形が城内で暴れてる頃、俺は城外で全軍に残党を残らず殺せと命じた。草刈りと一緒で文字通り根を取り除かねば時を経てまた生えてくるのが草である。


董勇が飛熊軍を指揮し、領内の全ての朝鮮族を処刑仕切った。


後世の歴史家は高順の事を暴君と呼ぶ者も居れば、北の覇王と呼ぶ者も居たと言う、見方次第では賛否両論であったのは言うまでもない。


高順は全てを終わらせ、こうして高句麗、百済、新羅加耶等の諸国を滅ぼし、全てを自身の領土とした。


侯城を瀋陽と改めて遼を建国する。


そして、即位の儀を済ませて、文武百官を冊封した。


大将軍張郃、驃騎将軍張遼、車騎将軍張燕、撫軍将軍張繍、衛将軍張亮(張五)、左護軍魏越、右護軍成廉、前将軍呉資、左将軍章誑、右将軍羅胤、後将軍麹義、驍騎将軍曹性、輔軍将軍張弘、水師都督甘寧、虎威将軍董勇、兵部侍郎高雅、吉州刺史魏種、廷尉秦宜禄、兵部尚書劉何、帯方太守蕭建、城門校尉張超、瀋陽府尹張邈、兵部侍郎毛暉、刑部侍郎李鄒、錦衣衛総校尉李封、尚書省賈詡、中書省陳羣、門下省沮授、都察院田豊、吏部尚書辛評、礼部尚書辛毗、刑部尚書逢紀、戸部尚書諸葛瑾、大司農王修。


高順は苦悩したが、結局はこの様に任じていった。


まぁ、こういうのは苦手なんだよなだ…、本音を言えば適材適所で勝手にやってくれって話なんだけどよ…、そうは行かねぇってのが朝廷ってやつなんだろうよ。文官に関しては権力が集中しない様に三省六分に設定し、武官に関しては功績の順に任じていった。あとは人材と器量によって変動は出るだろう。


高景の立太子、婚礼は済まされて安倩は晴れて遼太子妃となった。


此処に軍二百万、民三千万の国家が成立した。


高順は高らかに宣言した。


高順が「遼」王国の建てる時、彼は群衆の前に立ち、頭を高く上げて力強く宣言した。


「漢も鮮卑も朝鮮も関係ない、北は草原、東と西と南は海至るまで、ここは我々の土地だ!【今日、吾、高順はここに『遼』建国を宣言する!我々は中央の混乱からは距離を置く】漢の時代のことを考えて、対岸から火を見守ってください。」


高順の声は空に響き渡り、その場にいた人々を鼓舞し、温かい拍手と歓声で応えました。


「『遼』の建国は、我々が漢王朝の束縛から解放されることを意味するだけでなく、我々の独立と自治を意味します。我々はこの地を守り、この地を守り、『遼』王国を繁栄させる!」


高順は腕を上げて叫び、その力強い誓いは人々を心から説得しました。 その後、高順は大きな金色の文字で書かれた遼王国建国の宣言が書かれた紙を手に取った。


「私たちは、協力して遼王国の大義を築く所存!私たちの子孫がこの情熱と信念を引き継ぎ、遼王国が永遠に続くように!」


群衆からは次々と宣誓が起こり、その宣誓は長い歴史の中で記憶されることになるだろう。 高順は笑顔で遠くを見つめ、遼王国の旅はまだ始まったばかりであり、自分がこの国を将来の栄光に導くだろうと確信した。


漢では高順が建国した事に恐怖を覚える者、不満を述べる者、頭を悩ませる者、三者三様に否定的な考え方を示した。


「見よ!結局は叛臣よ!儂は正しかったのだ!」


「父上?」


「息子よ、今から陛下に上奏するぞ!」


「はっ!」


「孝父は何をしておるのかっ!ゴホッゴホッ…!ウーフッ!ガハァッ…!」


「「父上…!」」


馬超はこれを聞いて漢に公然と叛乱を興し、劉備はこれを機に自立に向けて地盤を固め始めた。


「フハハハハッ!なぁにが【忠臣】だ!結局はてめぇの野心に素直じゃねぇか!野郎ども!戦じゃぁ!俺達も俺たちの国を建てるぞっ!」


「「おおぅ!」」


「あんの逆臣め!やはり…!先生、二弟、三弟よ!」


「「はっ!」」


曹操は更に権力を高める為に、軍を増やした。


「ふむ…、孝父…、吹っ切れたか…!子脩、これより戦は酷くなるぞ?兵を増やせ」


「はっ!」


江東の孫家は未だに漢の臣となるか、高順の様に独立するかを悩ませて居た。


「どうすりゃいいんだよ!北の高順、西は劉備、中原にゃ曹操が居座ってやがる!ウチは?このままだと呑まれて終わりだぞ!?」


「伯符、一旦落ち着け、これからの動向を見てから決めても遅くはないだろう?」


「けどよォ!」


「兄上…、公瑾の言う通りだと思います」


「うるせぇ!おめぇみたいな青瓢箪に何がわかるんだよ!」


国を建てたとは言え、錦衣衛を七十万から半数にまで減らしてもその情報力は健在であった。


「あらら、こりゃァ揉めるな…へっへっへっ!今の俺にゃ関係ねぇわな!孟徳…、すまんな…」


中華の大地に再び戦乱の嵐が吹き荒れる事となっていった。






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