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第四十一回 龍纏虎身不得動 無中生有座冤牢

葬儀は途中でお開きになり、伏氏兄弟は大恥をかいて家路についた。


俺はと言うと錦衣衛からとんでもない情報を報告された。伏氏兄弟がここまで跳梁跋扈出来たのは曹操の息子である曹丕が裏で糸を引いて居たのであった。


これに俺は愛想が尽き、朝廷を離れ封地に帰り二度と中原に入らないと心に誓った。怪我も治りきらない身体では動きようが無いのだが、息子に先ず禁軍の兵符を返し、北へ帰る準備させた。


「尚武、朝廷に兵符を返し遼世子として朝廷より離れよ」


「何故です?」


「ここでは言わぬ、一先ず返してからだ。今は父の言う事を聞いてくれ」


「はい」


「フッフッフッ!不満か?」


「いえ…」


「顔に書いてあるぞ?」


「…」


「幾ら不満があろうとも腹の中に溜めとけ、男とはそういうものである。良いな?」


「はっ!」


董祀に一万の衛兵を束ねて妻達を先に帰らせるように指示を出し、俺は傷が癒えたら張五と共に帰る予定だ。


因みに張遼は北の戦が多忙な為か兵を連れてそそくさと前線に向かった。


俺は死にかけてる最中の一連の騒動を聞いて肝胆寒からしめた。これが中国史に於ける権力闘争か、と思い知った。


クソがッ!にしても野郎ども手際が良すぎるだろ…!ぜってぇ…誰かが裏で絵描いてやがる…。


残ったのは錦衣衛の六千人と各地に散らばった錦衣衛だけだ。人材だけを確保しようとしたのが裏目に出て、結局は戦争に駆り出されて死にかけた。やってる事に馬鹿らしくさ覚えた為か、漢朝に愛想が尽きてしまったのかは判らんが俺は3人の妻に囲まれて息子らと共に平穏に過ごせればと思ってる。


高順はそれを実現する為に、皇帝に封地に帰り二度と中原の土に自らの足で踏まないと上奏する。


錦衣衛にも階級は存在する。

指揮使、総管、校尉、百戸、標旗と続く、指揮使は総司令官にあたりその下は順序よく権限が下がっていく仕組みだ。場合に応じて生殺与奪を行える権限は末端も持っているけどね!


俺はこの後、遼に帰れば今までの戦争で朝廷に掛けた負担をどうにかしないと行けない上に、竇輔とかゆう正義の英雄ぶった愚か者を征伐してやらにゃいかんし、やる事が多すぎる。


旅立とうと、黄河の南岸に着いた頃には伏氏兄弟が有難くもない三万の刺客を送って来た。


「ケケケ!遼王様よォ!王様だかなんだか知らねぇけど死んでもらうぜ?」


「ほぅ?随分とかき集めたなぁ…、感心感心!良かったらうちに来ぬか?一軍の将として召し抱えるぞ?」


「何ィ!?」


「大兄貴!儲けもんだろ!」


「黙ってろ!んな簡単にコロッと騙されちゃァ俺達もおしめぇよ!」


「そらぁ…、そうですが…」


「どうするんです?あっしら…」


「おい、元浩将軍よ!どうすんでぇ!」


内心知るか!と叫びたい元浩である。あの日、許昌で殺されそうになっと事を思い出した。


(なんてこった!取り立ててくれるたァ聞いたが…、殺す敵ってのぁ…、あの鎮北将軍かい!あんなもんに勝てるか!俺ァどうすらええんじゃい!?)


董承が取り立てた元浩は昔日、許昌の街で高順に絡んだゴロツキであった。


当の高順は覚えてなどいないので、構えた槍には殺気が満ちていた。


「おい!どうするのだ!戦うのか!帰るのか!選ばせてやる!ただし後悔するなよ!?」


これを聞いた董承が養ってる私兵達は勇み出し、高順に斬りかかったが、親兵である陥陣営が立ちはだかり、叶わなかった。二百人飛びかかって帰って来れたのが三人のみであった。これを見た 元浩麾下三万は動揺した。


「おい…、あらァバケモンの集まりじゃねぇか!」


「どうすんだよ…、戦うってんなら俺は逃げるぞ?」


「野郎ども!狼狽えんじゃねぇ!このまま帰ってたまるか!」


「んだと!?」


「進んでも死、帰っても死ぬぞ!」


「どうすりゃ良いんだよ!」


「待ってろ!」


仮にも、街の裏を仕切った者である。腹の括り方はよく知っている方である。目を開くと、動くなと令を発し一人前に躍り出た。


「遼王殿下!董国丈が配下元浩と申します!昔日は許昌の街で世話になりました!ですが、今日は主の為にその御首を頂戴致す!」


「あ?そんな事あったのか?街のゴロツキなんざ覚えてるわけねぇだろ…、なんだあの野郎独りで盛り上がりやがって…」


当然、元浩は叫んだから高順は聞こえるのだが、高順は普通に呟いてるだけで聞こえる訳が無い。


「そこで一つお頼み申す!」


はぁ!?おいおい…、戦場だぞ?んな甘ったれた事言うやつは…、なかなか居ないぜ?まぁ、なんて言うか気になったから聞こ(笑)


「おう!なんだ、言ってみろ!」


「この軍の将は俺だが、この軍は俺の軍であって朝廷の軍ではない!ある者は貧しい村の口減らしのため…、ある者は草莽に身を落とした者、どうか!この戦に勝てばこの者らを見逃して下さらぬか!?」


え?まぁ、ゴロツキなだけに義侠心はあるってか?まぁいいや、そんくらいなら許してやるよ!暇じゃねぇし!


「おっしゃ!吾、遼王高順が了承した!かかって来い!」


高順も馬を駆け、相打つがどうしても分は高順に有り、高順が手加減をしつつ戦っている。


ん〜…、こいつセンスがねぇな…ダメだ。でも、自分の命を差し出してまで思い入れの無い兵達を慈しめるのなら良い将にもなれるか!欲しくなった!よっしゃ!なら捕まえるか!


そうと決まれば高順は手加減をせずに元浩を馬上から一撃で撃ち落とした。


「さて、あの兵達を見逃してやらん事も無いが…、条件がある」


「なんでぇ!さっさと言ってくれ!焼くなり煮るなり自由にしてくれ!頼んますよぉ〜」


「お前、今からあの者らを説得して俺の所に来い、三万の将軍として、だ」


「皆、先行して夫人達の護衛に付くように!」


「「はっ!」」


俺はどうするかって?あの三万を連れていかにゃならんので馬を降りて待つ事にした。


元浩は戻るなり、生き残った董承の私兵三人を斬り殺した。


「お、おい!将軍狂ったのけ?」


「ありゃイカれとるな…、おい、構えろよ?」


「お、おう…」


「おうし!邪魔は居なくなった!オメェら!このまま逃げて罪人として殺されるか!俺に従って、遼王もの元に付いてお天道様を拝むか選べ!」


情報供給過多で皆が追いついていない状況だか、一つだけ結論が出ていた。元浩に付いて、高順に従えば死なずに済む。それだけを聞けば皆武器を構えずに、そのまま高順に駆け寄った。


「んで?」


「我らこれより、遼軍の一兵として忠誠を誓います!」


「「遼王!遼王!遼王!」」


烏合之衆ではあるが、三万の兵を二百という最小限の損害で手に入れたのだ。その三万は戦には向かないが虚仮威しならば、と中軍に組み入れた。


「元浩、中軍の指揮は息子に任せてる。その指揮下に入ってくれ」


「はっ!」


元浩も馬鹿では無い、破落戸、野盗、山賊等の者らを構成し、外側に元浩自ら統制を行い、そう出ない者らは内側に配置された。要は案山子である。高景も其れを了承したが、流石に新参の兵を母や弟達を護衛させるつもり等毛頭ない、むしろいざ、戦えばこの者らを母達以上に庇いつつ戦わねばなるまい?と考えていた。


高景の予想は悪い方向へ的中した。


董承本人が、軍勢を引き連れて、行く道を塞いだ。


「遼王殿下!」


「全軍止まれ!」


あの野郎、のらりくらり選り取り風見鶏野郎…、おそらくいい事じゃ無いだろう…な。


「董大人、如何なされた?」


「いやぁ〜、その様に去られるとは少しばかり寂しいでは有りませんか!」


ケッ!どの面下げて言ってんだよ、その顔には殺意が薄らと浮いてきたぜぇ?さて、話は聞いてやる。


「ふふふ、目障りであれば見ぬが良し、耳障りであれば聞かぬが良しと言うでは有りませんか!はははっ!して、回りくどい物言いはよせ、本音で語らおうでは無いか」


「ふん、余程去りたいと見えるな」


「あぁ、そうだ。アンタらが俺の事を目障り耳障りと思うのであれば去るのが良かろう?」


「ふん!貴様が引っ掻き回しといて!今更居なくいなるのは虫が良すぎるのでは無いか!」


「てめぇが、高麗のボンクラと裏で繋がってんのは知ってんだぜ?どうすんだい?」


「ぐ…!ぬぬ!」


「安心しな!朝廷ってのぁ俺からすりゃあ居心地が悪くて敵わん!だから、俺を怒らせなけりゃどうにでもすりゃいいさ」


「何!?聞いた話とは違うぞ?」


「おい…、話が違って言うのはどういう事だ?」


「…」


高順は剣を抜いた。高順が剣を抜けば其の親兵達も当然構える。


「い、いや、待て!早まるな!」


董承が焦るのも無理は無い、高順は刃を立て薄らと斬り込みを入れているのだから…。ぱっくり裂けた皮膚から剣に血が滴る、董承は確信した、この男は何時でも誰でも関係無く無差別に人を殺せるのだ。と


「りょ、遼王!」


「早く言え…」


剣に高順の力が伝わる。董承は言わざるをえなくなった。


「し、し、ししし…!刺客を放ったのは竇輔じゃ!竇輔と皇叔が…!」


「ほう?ならば書面に残せ…」


「な、なら!筆と紙を…」


「…」


高順はその場で董承の服から布を切り取り、首から流れる血を墨として竇輔、劉備らと裏で繋がり、曹操、高順を排除しようとした事等を書かせて証拠を残した。


軍を発したは良いが、匈奴の一団とばったり会った。が俺の知ってる友好的な匈奴の奴らじゃ無く、敵対してる奴らだった。


何言ってんのかわからんけど、とりあえずやるしか無さそうだと言うのが肌で解る。


「全軍戦闘用意!」


元浩の兵もとい賊兵達がいきり立って、仕掛けた。相手になるはずがない俺は陥陣営を七部隊に分けて、敵の指揮官クラスの者を狙い撃ちにする戦術に出てみた。言うて、今の陥陣営は七万に膨れたから少し扱いずらいんだよなぁ〜、やっぱ最初の七百に愛着が有り相変わらずアイツらを良く連れ回す。


「殿下…」


呼びかけるのは新たな副官の羅胤である。


「おう、どうした?」


「背後に敵の新手が…」


「そうかい、ならたまにゃ息子に活躍させてやるか!」


「はっ…」


仕事以外喋ったとこを見た事ないが、戦術、武勇に関しては俺が全軍の指揮を采ってる間に任せられるからだ。


「おっしゃ!お前も残りを連れてアイツらを消して来い!」


「背後のヤツら新参だろ?めんどくせぇから」


「はっ!お任せを…」


ま、大丈夫だろ!


これを遠巻きに見てる一団が高順側の動向を伺っていた。


「ふん!流石、武力だけで成り上がった者よ!匹夫めが…!待ってろ!何時かは我が朝鮮帝国を取り返してやる!」


竇輔は静かにその動静を伺っていた。


「ふふふ…、董大人、これであの男の本性が解っただろ?」


「…、なぁに、我らの仲間は他にもいる。気にするな」


送った匈奴の一団が高順の軍によって溶けたのを見ると姿をくらました。


高順は殲滅をすると、やはり怪しいと感じた。急ぎ呼廚泉と劉豹を呼び話を聞くことにした。


侯城に戻る途中、皇帝の勅令により国賊董卓の娘を妻として迎えた罪で高順を投獄するという事を聞いた高順らは朝廷のやり過ぎにウンザリしていた。高順が都を去った後、高順に好意的な人間の殆どが投獄、謹慎ないし、処刑されたのであった。


「クククッ!クァーハッハッハッ!よかろう!付いて行ってやる!」


この高順のあっさりとした行動に勅使は焦ったが、命令に逆らう事も出来なかった。


「勅使よ、暫し待てぬか?」


「え?はっ?はい、共に都へ…」


「行く代わりに待ってくれ、家族に話がる」


「はい」


勅使は思った。


あの、傲岸不遜にして傍若無人な遼王高順を…!?天よ!なぜ私なのだ!私は何も罰が当たるような事はしてないはずである!何故だ…?そして、私は今その遼王を目の前にしている。


来てくれと詔勅を読んだが…、まさかあっさり来てくれるとは思わなかった。其れに家族と話すから少し待ってくれとまで言って本当に来てくれた。遼王はそんなに悪い人じゃ無いのかもしれない…。


「おう、今戻った!行こうか!」


「あのぉ…、今はまだ冀州から出ておりませんので…」


「ふん、気にするな!陛下の詔勅とあらば直ぐに戻るまでよ!」


しかし…、この遼王について私は余りにも多くの悪評を聞いてきた。


董卓に取り入り婿になり勢力を拡大し今の名声と地位を得たとか、内閣府属官の竇大人を冤罪で追い出した挙句高句麗を無理やり滅ぼしたりとか、とにかく悪評が止まらない



都に着いた。政殿に着くと、高順の見知った顔の殆どが居なかった。


チッ、野郎ども上手いこと外しやがったな!ま、大丈夫だろ


「罪人高順!謀反の罪により明日午門斬首と致す!」


早いわ!クソボケぇ!何やねん、その速度は!?嘘だろ?おいおい、勘弁してくれよ〜!


「陛下の詔勅であらば…」


こうして俺は地下牢に入れられてしまったのだ。しかも、貴族や、政治犯を入れるような牢獄だったならばまだマシ何だけど、一般庶民の殺人犯が入るような牢獄に入れられてしまった。


当然チンピラ達が絡んで来るわな


「おい!新入り!挨拶もねぇのか?」


「ふむ、すまんな、どれも似たような顔だと思ってしまって誰に挨拶すれば良いのか検討がつかなかった。で?誰に挨拶を?」


「てんめ〜!許せねぇ!おい、みんなやっちまえ!新入りに教育でぇ!」


へぇ〜!来んのか…、ま、正当防衛って事で!久々だなぁ〜!

楽しむべ!


高順は嬉々として、チンピラ達と殴りあった。基本的には金的、目潰しで応戦し、相手もそれを警戒すると鳩尾やもも裏にローキックなどで応戦し、全員が立てなくなってから1人ずつ馬乗りで半殺しにして行った。


「ご…、ご勘弁を…!」


「けっ!てめぇで喧嘩ふっかけといてこれかい!まぁ、俺も心はそんなに狭かぁねぇけどよ、寝首かかれる様な事がありゃぁお終いだしなぁ…」


高順は全員の片腕と片足を無理やり折った。


梃子の原理ってやつよ!支点、力点、作用点ってな!


「いいか?お前ら、俺の機嫌を損ねれば今度は貴様らの人生をへし折ってやるからな?わかったな?」


囚人達は一瞬にして高順の奴隷となり、誰も歯向かう事は無かった。高順も必要以上に彼らを痛めつける事をせず、ちょっかい出さなければ制裁を加える必要も無いという事である。


囚人達は獄卒達に高順を別の牢に移す事を哀願し、それが聞き入れられる筈も無く…、暫し苦楽を共にせざるを得無かったのだった。


三ヶ月過ぎた頃に、高順の元に一通の手紙が届いた。内容は高順の妻の一人である董媛が来月に処刑されるとの事である。


これを見た高順はまさに鬼の形相であった。囚人達は一斉に高順と対極の隅で固まって震えていたが、高順はそんなものに歯牙にもかけ無かった。


「…、貴様ら…、覚えておけよ…?」


静かにそう言い放つと食指を上にしてクイクイと引っ張る。つまり、囚人達に来いと言っているのだ。


「方法は構わん、獄卒を呼び出せ、そうしたら貴様ら全員を解放してやる」


「大親分…、良いんですかい?」


「構わん」


囚人達は高順に逆らえるはずも無く、ただただ従い獄卒を呼び出した。


すると高順は格子越えにチョークスリーパーを決め、鍵を奪い、獄卒の数人を斬り殺した。


「おい、貴様ら!俺は遼王高順である!俺に付いて来る者は無罪とする!逆ならば牢の中で大人しくしてろ!騒いだ奴は殺す!」


百人が高順に付いてきた。全員が処刑を待つだけの者達である。


「大親分、これからどうするんで?」


「宮殿に乗り込む!」


事前に遼王府に入り、甲冑、槍、佩剣を身に付けると、囚人達を引き連れて、宮殿に入り込んだ。


「貴様ら!よく聴け!この遼王高順の行く道を遮る者は殺す!阻むと言うのであれば無事に済まさん!それ以外は大人しくしてろ!」


出動した禁軍の者は全員高順が并州時代に鍛えた兵達である。当然、知らぬ振りや、戦うと見せかけて少しばかり会話をする者が居た。


「遼王殿下…、夫人はご無事です。どうか、お救いください…」


「おう、辛れぇ目に遭わせちまったな…、下がってろ」


兵士の腹を蹴るとそのまま倒れて動けないフリをして、高順らを通した。


高順は槍を付いて来た者に手渡し、持たせた。


「こっからは俺の戦いだ。お前らは見とけ」


そう言うと宮殿の正門に向かった。政殿ではこれからの方針を話し合っていたが、凶報が飛んできた。


「急報!」


「何事か!陛下の御前である!」


「遼王…!」


「何が遼王だ!たかが罪人であろう?」


「ざ、罪人高順が…、す、直ぐ其処まで…」


「何ィ!?禁軍は何をしていた?」


「…、禁軍の者らは皆高順の兵だったのだ」


「ふん!今更情が湧いたか!良かろう!陛下の御為に討ち取ってご覧いれましょう!」


だが、事はそれだけではすまなかった。高順は百人の囚人のうち、二十人ほどを董媛の救出に向かわせた。


「おうおうおう、おいでなすった!」


出てきたのは伏氏兄弟と皇后であった。


「罪人めが!これ以上罪を重ねてどうする!」


高順はこれを聞いてせせら笑った。


「ふん!貴様らこそ何故、我が妻を貶めるのじゃ?返答の次第によっては殺すぞ?」


「ふん、逆賊の一族がのうのうと生きてる事自体が陛下への不敬であり、不忠である!逆賊の娘と知りつつそれを娶るとは流石は逆賊に付いて行くだけの事はあるな!」


「ハハハハ!これを滑稽な事を言うものだな!?なぁ、董承、董大人!」


「…」


「何故、董大人が出てくる!?」


「貴様らと同じ外戚である董大人もかつては太師に従っておったものよ!ハハハハ!其れを俺に当てはめるだと?笑止千万!」


「ぐぬぬ!貴様の妻を貴様の目の前で抱いてやるわ!朝中の同僚の慰み者にしてやる!」


高順は微笑んだ。同時に手の中にある剣を伏典に向けて投げた。剣は喉に突き刺さり、その場で即死である。


百官は高順に避難の目を向けるが、伏典も悪いと認識している。


「で?他には?」


高順は一歩ずつ伏徳に近づき、伏典の死体から剣を抜いては突き刺した。


「きっさま〜」


「殺すぞ?」


「うっ…!」


「黙って見てろ」


皇后である伏寿も気を失いそうになったが、何とか気を取り直してその場に立った。


事態を重く見た皇帝は直ぐに表に出て事態を治めようとしたが、この状況を見て無理だと悟った。


「皇后…、国舅…」


「陛下、罪臣が拝謁致します」


「高順…!貴様!」


「陛下、恐れながら…」


その時、高順は聞き慣れた女の声がした。


「待ちな!陛下だろうが、何だろうが知らないけどね、うちの旦那に手ぇ出そうもんならあたしが黙っちゃ居ないよ!」


「姉ちゃん…」


姉ちゃん!?ちょっと待て!聞いてないぞ!


「あら、坊や覚えてくれてたかい?」


あのぉ〜…、お二人以外全員面食らってるの知ってる?


「へ、陛下?」


「うん?どうした?高順、そちの妻ではないか、何をとぼけておる?」


いや、そこじゃねぇんだよ!それは知ってるんだけれども!違う角度でビックリしてんの!こいつアホなん!?


「それは存じ上げておりますが…」


「夫君、悪いね!今まで黙ってて」


「お、おう…」


「姉ちゃん!今度は何時まで居られるの?」


え?何?どういう関係?


「悪いけど、旦那連れて帰るだけだから」


「左様か…」


うん、今度ばかりは敵味方関係無くビックリしてる。全員お目目真ん丸よ?


とにかく一件は落着したかな?








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