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第三十九回 高孝父丈義捨身 高尚武大発雷霆

関平は呆然とたっていた。夜襲明けの荒れた陣地を見渡し、焼け残った物資と死体が辺りに散らばっていた。


「…、…」


関平は今何も考えられないでいた。


「公子!ご無事でしたか!」


「…、…、叔父さん…私は…!」


「良いのです、責めはこの私が引き受けますので!どうかお気を確かに!」


「でも…」


「誰も皆常に覇王や淮陰侯の様には行きませんよ、彼らだって敗れる時も有りましょう」


「むっぐ…う、うう…うわあああ!」


王甫は心の中で関平を励ました。

(公子、今はお好きな様に泣かれてください、これから貴方は更に強くなる事でしょう…、何時かはお父上の様に天下にその名を轟かす事になるでしょう…)


「う、ヒック、叔父さん…、今全軍を集めて父上と合流しましょう…」


此の知らせは直ぐさま関羽の所に届いた。


「なぁにぃ!?我が軍が敗れるとは…!一体どういう事か!」


「それが…、いつも通り、営内の巡邏を終えた後半数の兵は夜間の警戒に当たっておりましたが、突如として敵軍が襲って来ました…!」


「何と!定国と国山は何をしておったのだ!」


「公子と王将軍は奮戦しましたが…、虚しく、公子は全身に傷を負いつつも味方を助けておりました…、私は公に報告する様に仰せつかったので後の事は存じ上げません」


「そう…か、おのれぇ!高順!皆!軍を整えて襄陽を攻めるぞ!」


「公、成りません!」


「左様、今動けば敵の思うつぼです!」


「…!ならば!」


「此処は脆弱な劉琮の軍を攻めましょう!その隙に…」


「ふむ、それ以外手は無いな、ではそうするように!」


「「はっ!」」


この日は劉琮の軍は甚大な被害を被った。張允が討死し、他の将軍も関羽の武名は聞いた事があるせいからか、怖気付いた者は皆関羽の槊の餌食になった。関羽は槊が折れると腰の剣を抜き敵に斬り凡そ数十人を斬り伏せていた。其処を突破しようとした所に張飛と合流し、更に斬り伏せた。まるで料理人の華麗な包丁捌きの様にバッタバッタと斬り伏せていた。


「我が名は関雲長!死にたく無くば、下がれ!」


「おおぅ!兄貴ィ!楽しそうじゃねぇか!混ぜてくれよ!」


「三弟!来たか!話は後だ!先ずは敵を斃すぞ!」


「おうよ!オラオラぁ!燕人張益徳!死にてぇヤツから来い!」


この二人が揃えば正に驍勇無敵である。


高順は敵が立て直しを図っている時に、今度は自ら陣頭に立ち、突撃し、王甫と関平兵二千人を捕虜とした。


「はぁ…、賭けに勝ったな!」


「大将!出てく時はあんなに自信満々だったのに!」


「うるせぃ!あーでも言わなきゃお前ら付いてこねぇじゃん!」


「あー!大将ぉ!言いやしたね!?」


「あんだこの野郎!勝ったからいいじゃねぇか!」


「かーっ!大将、わかってやせんよ…、わかって…」


「あっしはね、奥方に大将の見張りを…」


「へぇ…?」


「あ、あ、いや…」


まぁ、嫁さん達が何つったかは大体想像つくけどな!


「さて、俺達も文遠達に合流するぞ!」


高順は三千の兵を残し、前線に赴いた。


張遼は焦りを感じ初めていたが、突如背後に居た関羽が謎の撤退を始めたため、焦りを感じていた。


そんな張遼は不安に駆られた。


「い、いかん!今すぐ軍の一部を割いて関羽を追えっ!」


「は…?」


「わからんのか!我らの背後への布陣は《見せかけ》で、其の実は、殿下を誘き出すのが…!」


「だァれを誘き出すってぇ?俺ならここに居るぜぇ?」


「殿下!」


「気にすんな!城ならくれてやってもいいけどよ、戦にゃ勝ちてぇもん!」


「はぁ…」


「なぁに、やつの軍の半分は潰走してんだから大丈夫だろ?」


「殿下…」


「さ!敵は目の前だ!休む時にはしっかり休もうや!」


そう言うと俺はここ数日の内蔵に穴が空きそうになるような痛みがすぅっと和らぎ疲れを癒した。


翌日になり、三千を率いて偵察に行くと其処に『敵軍は居なかったが、民が残されていた』高順は荒廃した戦場に立ち、地平線に沈む夕日は全身に付いた戰袍のと重なり、戦争の残酷さを静かに物語っていた。 その目は刃物のように鋭く、勝利は確実だったが、心は動揺で満たされていた。 高順は部下に戦場を片付けさせ、負傷者の安置を命じ、同時に偵察兵を派遣して周囲に敵軍が潜んでいないか確認した。 その時、ボロボロの兵装を身に着けた刺客が亡霊のように静かに近づいてきた。


刺客の動きは迅速かつ冷酷で、明らかに高度な訓練を受けていた。 死の咆哮とともに彼の匕首は高順の急所を直撃した。 しかし、匕首の先端が高順の体に触れようとしたとき、彼は危険を察知したようで、直感でそれを避けた。 高順の頬にわずかな血の跡を残して死と紙一重であった。


混乱の中、高順の親衛隊である《陥陣営》が駆けつけ、刺客との激しい戦闘を開始した。 高順は難を逃れたものの、混戦の中で別の刺客に襲われ、冷たい光が走り、腰に強い衝撃を感じ、全身が抜かれそうになった。


「おいおい…、てめぇが売りにしてるもん捨ててどうすんだよ…、馬鹿じゃねぇのか?」


程なく曹操も事の次第を知り、駆けつけて来た。


「孝父!どういう事だ!?」


「…!」


「曹操!死ねぇえ!」


「させるかッ!」


更に刺客が現れ、典韋と許褚は刺客を防いだが残念ながら一人ではなかった。俺は残った気力を全て使い間髪入れずに身体を張った。こいつを今死なせたら、俺のやる事なす事が全て水の泡に…!其れだけは何としてでも止めなきゃダメだッ!


「孝父ッ…!」


「遼王!」


「「殿下!」」


「大将ぉ!」


「うぉ!?痛ってぇ!こんちくしょうが!」


「がぁあああ!」


曹操は長剣を抜き、一太刀で刺客を斬り殺した。


「…、孝父、貴様らしくも無い!」


「へっ!知るかよ…、それより、医者を呼んでくれねぇかな?痛くて堪らねぇや…」


「医者ぁ!医者じゃあ!」


それより先、俺の記憶は途絶えた。


曹操は連軍を全て率いて劉備を追い詰め、遼軍は主君の仇と言わんばかりに奮戦し、遂には劉備軍を一万人弱迄に押さえ込んだ。


「フザケるなァァァァァ!!」


「あ、兄者…、落ち着けよ、士気に響くぜ?」


「三弟!今はそんな事を言ってる場合か!我が西川の雄兵が!」


「殿下…」


凶報が洛陽に走った。遼王、生死不明!何時死んでもおかしくない程の重体。と言う情報が走り、遼王府は当然、洛陽中にこの情報が出回り、喜ぶ者、憂う者、恐れる者、三者三様に分かれた。


「クックック!弟よ!聞いたか!?」


「兄上、如何なされたのです?」


「クックックっ!あの忌々しい遼王が死によったで!ハハハハ!ハァーッハッハッハッハッ!」


「何と…!では遼王は…!?」


「おい、その後は?」


「はっ!未だに詳細が分かりません…」


「うむ、ご苦労であった。下がるが良い」


「はっ!」


漢朝の陪都の洛陽に在る宮殿の奥深くに構えてある御書房で、皇帝は厳粛な表情で新たに届けられた情報を手にした。忠臣である高順は、事後処理の最中で暗殺に遭い。、この事件は間違いなく脆弱な漢王朝にとって大きな衝撃であり、彼の帝位を揺らぐ重大な挑戦でもあった。


脇に立った董承の顔は穏やかだったが、心は暗に喜んでいた、何故ならば曹操と高順を片付ければ、董承自身に権力が集中するからである。高順は朝廷内で決して人望が有る方では無いが、高順の身に何かが起きれば、朝廷の百官にしてみれば痛くも痒くも無い。 董承は、高順の生死に関するニュースが広まれば、間違いなく軍内に混乱を引き起こすことを知っており、それはまさに彼と彼の共犯者である竇甫の予想通りでした。 情勢の不安定化は権力構造を調整する絶好の機会となるだろう。


逃亡した刺客は後から考えれば考えるほど恐ろしくなり、董承のような高官にとって彼は状況を左右する為の駒に過ぎなかった。 董承は直ぐふに遣いを送り、竇輔にこの件を静かに知らせ、この盤上の戦が朝廷の状況に変化をもたらすことを予感させた。


その知らせを聞いた竇甫は、言い知れぬ興奮を覚えた。 董承の朝廷での影響力と自身の操作能力に頼って、このような事件を言い訳にして、彼は自分の立場をさらに強化し、適切な機会を伺って他の勢力を一掃する事さえ可能でもあるからだ。 竇甫は書斎の中で右往左往しながら、次の行動を計画し始めた。


遼王府中では一騒動が起きた。


禁軍の将軍としてそれなりの地位にある高景は、父である高順暗殺の報を知り、心の中の怒りが雷霆の様であった。 彼はこの裏にもっと大きな陰謀があるに違いないと判っているが、息子としてその重責と復讐の必要性を感じていた。


「もし父に何か有れば、奴らの血で償ってやる!」


高景の拳はキツく握り締められ、爪は肉にめり込みそうになった。


しかし、家中では、高順の妻達の見方は各々異なっていた。 彼女らは高景の復讐心について深く心配し、高景の盲目的な衝動がさらに大きな危機を招くのではないかと心配していた。


高順の妻達は三人居る。蔡琰は三人の中でも比較的に年長者で安定しており、優れた文学的才能を持ち、国の変革を経験し、世の女性の中で最も大きな影響力を持っています。 彼女は政務の複雑さを熟知しており、生き残る方法を知っており、彼女の暗黙的で哲学的な言葉は、高景の煩わしさを落ち着かせる事が出来る存在でもあった。


董媛は美しく寛大で、繊細な心を持ち、高順が重傷を負った後、董媛の気分は特に複雑になった。 董卓の娘として権力闘争の残酷さをよく知っていた彼女は、董卓の圧政から人の心を見抜く事が出来た。後宮の妃嬪達や朝廷百官達の隠然たる腹黒さを善く知っていた。彼女は夫の容態を心配しており、また暗殺が引き起こした政治的混乱が自分自身と家族全員に及ぼす影響についても考慮していた。董媛は父の教えを深く覚えている。この困難な世界で生き残るためには、冷静さと警戒心を自然と備える様になった。


呂芙には別の考えが有った。 呂布の姉であり、大人しく慎ましい性格であり 彼女は高景に軽挙妄動しないよう勧めた。


「朝廷内外に無数の目が我が遼王府の一挙手一投足を監視していると言う事を覚えて無ければならない。私たちは今、高家を守るだけでなく、父上の公道を追求しなければなりません。 でも、高家がに応じなければ、それは外に対して自らの弱さを示す事になるでしょう。私達は何かをしなければなりません。貴方の父上が健在であれば、間違い無く何らかの手段を構じたでしょう。この隠れた脅威を見極めてから行動されてはどうでしょうか?無力で居ろとは言いません。何らかの措置を講じる必要が有るのは勿論ですが…」


二人の女性の全く異なる意見に直面して、高景は大きな圧力を感じました。 この時の役割を果たしている蔡琰は、董媛と呂芙の気持ちを理解し、高景の怒りが何処に向いてるのかも知っていた。彼女は、この怒りを野放しにすることも、それが禍いとして世に広がる事も許さなかった。


蔡琰の優しい声はしっかりしていた。


「人々の意見は様々で、真実と嘘を聞き分けるのは難しい。今の私達には自分達のの目と耳が必要であり、より多くの味方も必要です。尚武、貴方の行動は熟考した上で動かなければなりません。このままでは自殺行為ですよ?」


この事件には、董承と竇甫の影がぼんやりと浮かんでいた…董媛の視点から見ると、かつては父である董卓が信頼していた董承が、今では高順の暗殺を密かに嘲笑しているように見え、過去への理解がさらに深まったことは間違いない。竇甫はかつて高順を説得しようとしたが、今では高順の存在そのものが不安で今でもその勢力を警戒している。


蔡琰は期待を込めて真剣に言った。彼女の目には、息子が更なる成長する事を願っていた。


「尚武、国の栄枯盛衰には誰もが責任を負っていますが、自分の感情を抑えられないのであれば、どうやって軍隊を統率し、朝廷を安定させることができますか?」


彼女は低い声で念を押した。


「私達は何時如何なる時も慎重でなければなりません。私たちの行動が朝廷の人々に気づかれたら、父上はおろか私達の状況さえ更に危険になるのではないかと心配しています。」


高景はそんなもの何処ぞの風とも思わずに自身のやろうとしている事を告げずに表向きは母親達の言う事を聞き、その後どう動こうが自身の勝手であると思っているようだ。


そんな高景の考えに勘づいた呂芙は高景の腕を掴み涙ながらに訴えた。


「世子よ、感情に任せて判断力を曇らせてはいけません!今一番大切なのは、殿下の安否を確認してから計画を立てることです!衝動は物事を悪化させるだけです!もしそうなれなば私たちには失うものがもっとあるのよ…!」


家族からの骨の折れる説得に直面して、彼の衝動的な炎は懸念の水をわずかに和らげたようだった。 高静は深呼吸をして心の中の怒りを抑えようとしたが、殺意はまだ心の中に残っていた。 彼は怒りだけでは問題は解決しないことを知っていました。三人の母は様々な観点から自分の意見を述べ、彼女たちの助言と説得により、高景の意思決定がより多面的かつより深くなった事が多々あった。 蔡厳は文学と政治に精通し、董源は朝廷の事情に洞察力があり、呂布はある程度の家族的権力を有しており、三人の助言や提案によって高京は物事をより深く考え広く見る事が出来た。


















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