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第十三回 政教分離不耽誤 霸王揮師取荊州

建安十五年、十年という歳月を経て高順は中原の覇者として、その地位を確固たるものとしていた。


しかし、高順の野望は、まだ終わっていなかった。残る一州、益州を制圧し、真の天下統一を成し遂げるため、高順は諸将の配置を行うと共に、内政と軍事の更なる改革を進めていた。


「諸君、我々は、天下七州を制圧した。しかし、天下は、まだ一つになっていない。残る一州、益州を制圧し、真の天下統一を成し遂げる」


高順は、諸将に語りかけた。その瞳には、天下統一への強い意志が宿っていた。


「高順様、益州は、地形が険しく、攻略には時間がかかります。しかし、我々は、必ずや高順様の御旗の下、益州を制圧し、天下を一つにしてみせます」


諸葛玄が、高順に進言した。


高順は、諸将の配置を始めた。


「文遠、稚叔、国譲、子経、伯珪、貴殿らは、并州、幽州にて異民族、遼東公孫氏に備えよ。北方の守りを固め、異民族の侵攻を許すな」


高順は、北方の守りを固めるために、張遼らを配置した。


「文淵には豫州を、正礼には兗州を、胤誼には徐州を各々任せる。後方の安定を計り、戦乱の芽を摘み取れ」


高順は、後方の安定を図るために、朱皓らを配置した。


「呉資、章誑、汎嶷、張弘、高雅、趙庶、魏越、成廉らは、俺の直属の将軍として、共に戦う」


高順は、直属の将軍として、呉資らを配置した。


「張燕、曹性、王当、楊鳳、楊醜、陶昇、張五、羅胤、上官敵、昌豨、孫観、蕭建、尹礼、貴殿らには、自由行軍権を与える。各地で戦闘を始められるように任せる。益州攻略、北への進軍、その他、必要に応じて自由に動け」


高順は、自由行軍権を与え、各地での戦闘を任せた。


「将軍、承知いたしました。我々は、将軍の御旗の下、必ずや天下統一を成し遂げてみせます」


諸将は、高順の指示を承諾し、それぞれの任務へと向かった。


高順は、天下七州の生産性を飛躍的に向上させるため、内政改革を断行した。誰でも読み書きができるよう教育機関を充実させ、識字率を向上させた。これにより、高度な情報伝達と技術革新が促進され、農業、工業、商業の各分野で生産性が大幅に向上した。


光武帝の時代を遥かに凌ぐ繁栄が、七州にもたらされた。


軍事面では、府兵制と屯田制を組み合わせた新たな兵制を導入し、軍の安定化と効率化を図った。兵種は、歩兵を盾兵、長矛兵、長刀兵、弓兵、弩兵に細分化し、騎兵を重騎兵、軽騎兵、戦車兵、騎弓兵に分類。さらに、軍医と土木工兵という特別兵科を設け、兵站と医療体制を強化した。


これにより、高順軍は、総勢百五十万という大軍を維持しながらも、高い機動性と戦闘力を発揮できるようになった。


高順軍は、益州攻略に向けて動き出した。高順は、諸将の配置を終え、内政と軍事の改革を完成させ、天下統一への最終段階の準備を進めていた。


「俺は、必ずや天下を一つにする。そして、この戦いの先に、安らぎを見つけるのだ」


高順は、静かに誓った。その瞳には、天下統一への強い意志と、安らぎへの渇望が宿っていた。


高順が益州攻略に向けて着々と準備を進める中、天下は再び動き始めていた。


荊州では、孫策がその卓越した軍才を発揮し、攻略を開始していた。孫策は、高順の勢力拡大を警戒しつつも、自らの勢力圏を広げるために、荊州の攻略を急いでいた。


「荊州は、豊かな土地と水運を有しており、我が軍の発展に不可欠だ。必ずや、荊州を我が手に収め、天下に覇を唱えてみせる」


孫策は、その若き情熱を燃やし、荊州攻略に全力を注いでいた。しかし、荊州は、劉表が治める難攻不落の地であり、孫策の前に立ちはだかる壁は高かった。


「父の仇、劉表。必ずや、貴様を討ち、荊州を我が物としてみせる」


孫策は、父、孫堅の仇である劉表への復讐心を胸に、荊州攻略に挑んでいた。その軍勢は、勇猛果敢であり、荊州の各地で激しい戦いが繰り広げられた。


一方、洛陽の朝廷では、曹操が国家全体の運営に奔走していた。高順が天下七州を制圧したことで、朝廷の権威は地に落ちていた。しかし、曹操は、その卓越した政治手腕を発揮し、朝廷の立て直しを図っていた。


「高順の勢力拡大は、我が朝廷にとって、大きな脅威だ。しかし、今は、内政を立て直し、国力を蓄えることが先決だ」


曹操は、高順との対立を避けつつ、朝廷の権威回復に努めていた。その政策は、農業、商業の振興、法制度の整備など、多岐にわたっていた。


「民が豊かになり、国が安定すれば、孝父に対抗できる力を蓄えることができる。それまでは、耐え忍ぶしかない」


高順は、益州攻略を前に、許昌の朝廷に赴いた。その目的は、朝廷への忠誠を示すと共に、曹操との関係を修復することにあった。


「孟徳、久しぶりだな。お前さんにとっておきの贈り物を持ってきた」


高順は、曹操に笑顔で声をかけた。その表情には、かつての敵意は微塵も感じられなかった。


「孝父、よく来たな。お前の来訪を何処か心待ちにしていた。一体、どのような贈り物を?」


曹操は、高順を温かく迎え入れた。しかし、その心中には、高順の真意を測りかねる警戒心も残っていた。


高順は、朝廷に租税、塩、鉄などを献上した。その量は、朝廷が十五年間、一切の税を徴収する必要がないほど膨大であった。


「孟徳、これは、俺が治める七州からの献上品だ。民の暮らしを豊かにし、国を安定させるために役立ててほしい。そして、これは、私からの個人的な贈り物だ。かつての友情に免じ、受け取ってほしい」


高順は、曹操にそう告げると、さらに続けた。高順は、そう言って、曹操に一振りの剣を贈った。それは、高順がかつて愛用していた宝剣であり、友情の証であった。


曹操は、高順の贈り物に深く心を打たれた。その膨大な献上品と、友情の証である宝剣は、曹操の警戒心を完全に払拭し、高順への信頼を深めた。


「孝父、そなたの誠意、しかと受け取った。もはや、そなたと敵対するつもりはない。かつての友情を胸に、共に天下の安寧を願い、協力し合おう。そなたの贈り物、十五年分の献上は、我が国の民を救うだろう。感謝する。そして、この剣、そなたの友情の証、大切にしよう」


高順と曹操は、昼夜を問わず、政治、軍事、文化、あらゆる分野について議論を重ねた。時には、激しい口論となり、互いの意見を譲らず、顔を赤らめて罵り合うこともあった。しかし、夜になれば、二人は酒を酌み交わし、互いの健闘を称え合った。喜び、悲しみ、怒り、楽しみ。二人は、あらゆる感情を共有し、互い

の心を深く理解し合った。


高順と曹操は、昼夜を問わず、政治、軍事、文化、あらゆる分野について議論を重ねた。時には、激しい口論となり、互いの意見を譲らず、顔を赤らめて罵り合うこともあった。


「孝父、そなたの政策は、民を甘やかしすぎだ!国家の規律が乱れてしまう!」


曹操は、高順の民政に対する考え方に異を唱えた。


「孟徳、民を信じずして、誰を信じるというのだ!民が豊かになり、国を愛するようになれば、自ずと規律は保たれる!」


高順もまた、自身の信念を曲げず、激しく反論した。

しかし、夜になれば、二人は酒を酌み交わし、互いの健闘を称え合った。


「孝父、そなたの情熱には、いつも感服する。時に、熱すぎて心配になるがな」


曹操は、酒に酔い、高順の肩を叩いた。


「孟徳、そなたの冷静さには、いつも助けられる。時に、冷徹すぎて寂しくなるがな」


高順もまた、酒に酔い、曹操の肩に手を置いた。

喜び、悲しみ、怒り、楽しみ。二人は、あらゆる感情を共有し、互いの心を深く理解し合った。


曹操は、高順に全幅の信頼を寄せるようになった。高順の卓越した能力と、誠実な人柄は、曹操の心を捉え、二人の間には、主君と臣下という関係を超えた、兄弟のような絆が生まれた。


「高順殿、そなたは、もはや我が半身だ。そなたがいなければ、私は、何も成し遂げられない」


曹操は、高順にそう告げ、その存在の大きさを伝えた。


高順の存在は、朝廷内でも絶対的なものとなった。皇帝も、高順の能力を高く評価し、警戒心を解いた。さらに、高順の妻が宗室の縁戚であったことから、高順は『郡馬』という敬称を与えられた。


「高卿、そなたは、我が国の宝だ。そなたの力なくして、この国の未来はない」


皇帝は、高順にそう告げ、その功績を称えた。高順は、曹操と皇帝の信頼に応え、国家のために全力を尽くすことを誓った。


「曹操殿、陛下、私は、そなたたちとの友情を胸に、この国のために、命を捧げる覚悟だ」


高順は、二人にそう誓い、その忠誠心を示した。


高順の屋敷、それぞれの思惑と葛藤が有った。


洛陽の都の中でもひときわ威厳を放つ高順の屋敷。そこでは、高順の妻妾と子供たちが、それぞれの役割を担い、賑やかでありながらも、複雑な人間関係が織りなす縮図が広がっていた。



屋敷の中心に位置する居間では、正妻である蔡琰が、二十を過ぎたばかりの長男・高景に書を教えていた。


「景、この『論語』の一節を読みなさい。『学びて時に之を習う、亦説ばしからずや』…その意味を、そなた自身の言葉で語ってみなさい。」


蔡琰は、厳しくも優しい眼差しを息子に向けた。高景は、難しい顔で書を読み、考え込んだ。


「母上、この一節は、学問を修める喜びを説いていると理解しました。しかし、今の私にとって、学問よりも戦場の経験こそが、父上の後を継ぐために必要なもののように思えます」


高景は、率直な思いを吐露した。蔡琰は、静かに首を横に振った。


「景、父上は武勇だけでなく、深い知略と慈悲の心を持っていたからこそ、皆に慕われたのです。そなたも、父上のようになりたいのであれば、武だけでなく、文も修めなければなりません」


その隣では、妙齢の高娟が、刺繍をしながら静かに微笑んでいた。


「母上、蘭姉様はまた稽古場で暴れているのでしょうか?」


高娟が、少し困ったように尋ねた。


「蘭は、少しばかり力が有り余っているだけです。いずれ落ち着くでしょう」


蔡琰は、そう言いながらも、末娘の高華が武芸に熱中している姿を思い浮かべ、苦笑いを浮かべた。


屋敷の奥の間では、董媛が成人目前の次男・高昭を相手に、武芸の稽古をつけていた。


「昭、もっと力を込めろ!甘い!」


董媛は、容赦なく息子を打ちのめし、豪快な笑い声を響かせた。高昭は、必死に食らいつきながらも、その圧倒的な力に押されていた。


「母上、私はいつになったら、父上のような猛将になれるのでしょうか?」


高昭が、息を切らしながら尋ねた。


「ふん!まだまだ青二才だな!父上は、戦場での経験と、鍛錬によって、あの強さを手に入れたのだ!お前も、もっと鍛錬を積め!」


董媛は、息子を叱咤激励し、その武勇を磨くことに余念がなかった。


一方、屋敷の隅では、呂芳が静かに過ごしていた。高順との関係は、未だにぎこちないものの、屋敷の運営には積極的に関わっていた。


「使用人たちへの指示は、滞りなく行われています。何か問題があれば、いつでも私に申し付けてください」

呂芳は、使用人の代表にそう告げ、屋敷の秩序を保つことに尽力した。


劉妙は5歳前後の高傲と生まれたばかりの高輔の世話に追われていた。


「傲、輔、おとなしくしていなさいね。お母さんは、あなたたちが元気に育ってくれることが、一番の願いなのよ」


劉妙は、子供たちをあやしながら、穏やかな笑みを浮かべた。その姿は、高順の心を癒す、優しい母親そのものであった。

十を過ぎたばかりの高輝は、蔡家の後継者として、行政機関で実務を学んでいた。


「民のために、少しでも力になりたい。父上のように、皆を幸せにできるような、立派な政治家になりたい」


高輝は、真面目な性格で、着実に知識と経験を積み重ねていた。


年端もいかぬの高鴻は、張遼の下で武芸の修行に励んでいた。


「いつか、父上や張将軍のような、偉大な武将になる!そして、父上の後を継ぎ、高家を、天下を、平和にするんだ!」


高鴻は、優れた資質を持ち、その才能を開花させつつあった。


高順の娘たちも、それぞれの道を歩み始めていた。

高婉は、曹昂の妻として、幸せな家庭を築いていた。


「子脩様は、とても優しく、頼りになる方です。私は、この幸せを、ずっと大切にしたいと思っています」


高婉は、穏やかな笑顔で、夫への愛情を語った。高娟は、姉妹の中で最も思慮深く、高順の相談相手になることもあった。


「父上、何かお力になれることがあれば、いつでもお申し付けください。私は、父上の右腕として、高家を支えたいと思っています」


高娟は、冷静な口調で、高順を支えようとした。

高蘭は、武芸の腕を磨きながらも、世間知らずな一面があり、高順を心配させていた。


「父上、私は、誰にも負けません!いつか、父上と一緒に、戦場で戦いたい!」


高蘭は、自信に満ちた表情で、高順にそう告げた。

幼い高華は、姉たちに憧れ、武芸に熱中していた。


「私も、いつか、姉様たちのように強くなる!そして、父上を守る、立派な武将になる!」


高華は、元気いっぱいに叫び、木刀を振り回した。

高順の家族は、それぞれの個性と才能を持ちながらも、互いを尊重し、支え合いながら、高家の未来を築いていく。


しかし、その裏では、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、静かなる葛藤が生まれていた。そして、それぞれの道を進む中で、彼らは自らの未来を模索し、高家の未来を築いていく。





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