第八回 禍起中州天下乱 熊虎之将戦豫州
袁術の崩壊後、豫州は群雄割拠の様相を呈していた。かつての袁術軍の残党たちが、それぞれの思惑を胸に、新たな勢力図を描こうとしていた。
蘆江を拠点とする紀霊は、その中でも抜きん出た存在だった。かつての袁術軍の勇将であり、その武勇と統率力は、残党たちの中でも際立っていた。
「袁術様の仇、必ずや討ち果たしてくれる!」
紀霊は、復讐の炎を燃やし、勢力拡大に邁進していた。蘆江の豊かな資源と、かつての袁術軍の精鋭を束ね、その勢いは日増しに増していた。
一方、韓暹は狡猾な策略家だった。各地を転々としながら勢力を蓄え、漁夫の利を狙っていた。
「ここは、おれの好きにさせてもらうぜ」
韓暹は、常に周囲の状況を冷静に見極め、最も有利な選択肢を選んでいた。
楽就、橋蕤、張勲らは、かつての袁術軍の将として、一部の兵を率いて豫州に潜伏していた。
「まだ、おわらんぞ」
彼らは、再起をかけて、密かに兵力を蓄えていた。
馬日磾は、後漢の官僚だった。袁術に取り入っていたが、その死後も豫州に留まり、独自の勢力を築こうとしていた。
「この乱世、生き残るには力が必要だ」
馬日磾は、官僚としての知識と人脈を駆使し、狡猾に勢力を拡大しようとしていた。
楊弘は、袁術の腹心だった。袁術の死後もその残党をまとめようと画策していた。
「袁術様の遺志を継ぐのは、この私だ」
楊弘は、自らの正当性を主張し、残党たちをまとめようと奔走していた。
雷薄は、楊弘と共に行動していた。
劉勲は、元は揚州の豪族だった。袁術の衰退に乗じて豫州に進出し、領土を広げようとしていた。
「この機に乗じて、勢力を拡大する」
劉勲は、貪欲に領土を広げ、豫州における新たな勢力となろうとしていた。
これらの残党勢力は、互いに牽制し合いながらも、虎視眈々と勢力拡大の機会を狙っていた。
高順は、これらの残党勢力の動向を、錦衣衛によってつぶさに監視していた。
「紀霊か。侮れぬ男だ。だが、袁術の残党に、これ以上の好き勝手はさせぬ」
高順は、豫州の安定と、これらの残党勢力の排除を視野に入れ、密かに戦略を練り始めていた。
「錦衣衛よ、豫州の情報を集めよ。特に紀霊の動向は、詳細に報告せよ」
高順は、錦衣衛を豫州各地に派遣し、残党勢力の情報を集めさせた。
「伝書鳩を飛ばせ。長安の朝廷に、豫州の状況を報告するのだ」
高順は、伝書鳩で長安の朝廷に情報を送り、豫州の安定化に向けて動き出した。豫州は、新たな火種を抱え、再び戦乱の予感を漂わせていた。
高順は、豫州に点在する袁術残党の掃討と、同時に自軍の強化を図るべく、大胆な策を講じた。
「豫州の残党どもは、いずれも一筋縄ではいかぬ。だが、各個撃破すれば、さほどの脅威ではない」
高順は、そう言い放ち、手持ちの兵を十一の部隊に分割した。そして、各部隊の指揮官に、以下の者たちを任命した。
王当、楊鳳、楊醜、陶昇、張五、羅胤、上官敵、昌豨、孫観、蕭建、尹礼
「貴様らに、各々兵を分け与える。豫州各地に散らばり、袁術の残党を見つけ次第、容赦なく討ち滅ぼせ!」
高順は、配下の諸将に厳命を下した。
「「ははっ!」」
十一将は、高順の命令に従い、それぞれの部隊を率いて豫州各地へと散っていった。
高順の狙いは、単なる残党掃討ではなかった。彼は、この機会を利用して、自軍の戦術を向上させようとしていた。
「各部隊には、状況に応じた臨機応変な対応を求める。これは、戦術訓練の一環でもある」
高順は、十一将に訓令戦術を徹底的に叩き込んだ。
「戦争は、常に変化する。状況に応じた柔軟な対応こそ、勝利への鍵だ。各々、状況を的確に判断し、最適な戦術を選択せよ」
高順は、十一将に訓令戦術の重要性を説いた。各部隊は、高順の訓令に従い、各地で残党勢力との戦闘を繰り広げた。
王当は、紀霊軍の斥候隊を捕捉し、瞬く間にこれを殲滅した。楊鳳は、韓暹軍の補給部隊を襲撃し、物資を奪い取った。昌豨は、劉勲軍の拠点を発見し、電撃的な攻撃でこれを制圧した。
各部隊は、高順の訓令を忠実に守り、状況に応じた最適な戦術を選択し、着実に戦果を上げていった。
高順は、各部隊の戦果を逐一報告させ、その戦術を分析した。
「各部隊とも、よくやっている。特に、昌豨の電撃戦は見事だ。しかし、油断は禁物。常に状況を把握し、警戒を怠るな」
高順は、各部隊の活躍を評価しつつ、さらなる戦術水準の向上を促した。
豫州における残党掃討戦は、高順軍の戦術訓練の場となった。各部隊は、実戦を通して訓令戦術を体得し、その戦術水準を飛躍的に向上させていった。
高順は、この戦いを通して、自軍を精鋭部隊へと鍛え上げようとしていた。
高順は、豫州に散らばる袁術残党の討伐を命じながら、密かに蘆江制圧の計画を練っていた。紀霊が支配する蘆江は、豊かな資源と戦略的要衝であり、高順にとって喉から手が出るほど欲しい場所だった。
「紀霊め…袁術の残党とはいえ、侮れぬ男だ。正面からぶつかれば、被害も大きくなるだろう」
高順は、紀霊の武勇と蘆江の堅牢さを考慮し、慎重に策を練った。
「残党討伐を口実に、各部隊を蘆江周辺に集結させる。そして、頃合いを見て、一気に攻め込むのだ」
高順は、残党討伐の命令を、蘆江制圧のための偽装として利用することを決めた。
「錦衣衛、蘆江の守備状況、紀霊軍の兵力、そして周辺の地形を詳細に調べ上げよ」
高順は、錦衣衛を蘆江に潜入させ、徹底的な情報収集を命じた。
「伝書鳩を飛ばせ。各部隊に、残党討伐の進捗状況を逐一報告させよ。そして、蘆江周辺への集結を密かに指示するのだ。」
高順は、各部隊に偽の命令を送り、蘆江周辺への集結を促した。
各部隊は、高順の指示に従い、残党討伐を進めながら、蘆江周辺へと徐々に集結していった。紀霊は、高順軍の動きを警戒していたが、山賊討伐という名目のため、油断していた。
「高順め、山賊討伐とは言え、警戒を怠るな。常に周囲に目を光らせ、高順軍の動きを監視せよ」
紀霊は、部下たちに警戒を促した。しかし、高順軍の巧妙な偽装工作により、紀霊は高順の蘆江制圧計画に気づくことができなかった。
「頃合いだ。全軍、蘆江へ進軍せよ!」
高順は、ついに蘆江制圧の命令を下した。高順軍は、電撃的な速さで蘆江へ進軍し、紀霊軍を圧倒した。紀霊は、高順軍の突然の攻撃に動揺し、防戦一方となった。
「なぜだ!?なぜ山賊討伐のはずが、蘆江攻撃に!?」
紀霊は、高順の裏切りに怒り狂った。しかし、高順軍の圧倒的な戦力と、周到な準備の前に、紀霊軍はなすすべもなく敗れ去った。
高順は、蘆江を制圧し、その豊かな資源と戦略的要衝を手に入れた。
「蘆江は、我が軍の新たな拠点となる。ここを足掛かりに、豫州全土を制圧するのだ。」
高順は、蘆江を拠点に、さらなる勢力拡大を狙っていた。
高順が豫州各地を配下に任せ、蘆江を手に入れたという情報は、瞬く間に袁紹と曹操の耳にも届いた。
「高順め、抜け目がない。豫州と蘆江を我が物とするとは、許しがたい…!」
袁紹は、高順の勢力拡大を警戒し、不快感を露わにした。
「高順の勢力拡大は、我々にとって脅威となる。ここは、劉備をけしかけ、高順を牽制すべきだ」
曹操は、袁紹にそう進言した。
「ふむ、劉備か。奴ならば、高順と渡り合えるだろう」
袁紹は、曹操の提案に乗り、劉備をけしかけることにした。
「劉備殿、高順が豫州で勢力を拡大している。これは、我々にとって見過ごすことのできない事態だ」
袁紹は、劉備に使者を送り、高順の勢力拡大を伝えた。
「高順が豫州を?それは、聞き捨てなりませんな」
劉備は、高順の勢力拡大に警戒心を抱いた。
「高順は、いずれ我々の脅威となるでしょう。ここは、協力して高順を牽制すべきです」
曹操も、劉備に使者を送り、袁紹と同様の提案をした。
「曹操殿も、同じお考えですか。ならば、私も協力しましょう」
劉備は、袁紹と曹操の提案を受け入れ、高順を牽制することを決めた。
「関羽、張飛、高順を討つ。豫州の安定を取り戻すのだ!その為に兵を鍛え、銭糧を蓄えろ!」
「「おう!」」
劉備は、関羽と張飛に命じ、高順討伐の準備を始めた。
高順は、袁紹と曹操が劉備をけしかけたことを、錦衣衛の報告で知った。
「袁紹と曹操め、俺を出し抜こうとはな…笑止千万。だが、今の劉備が相手ならば、さほどの脅威ではない。」
高順は、劉備軍との衝突を予想し、迎撃の準備を始めた。
「諸将よ、劉備軍との戦いに備えよ。訓令戦術を駆使し、奴らを迎え撃つのだ!」
高順は、諸将を各地に送り、劉備軍との戦いに備えさせた。
豫州は、高順、劉備、そして背後に控える袁紹と曹操の思惑が入り乱れ、再び戦乱の予感を漂わせていた。
高順は、天下統一などという大それた野望は抱いていなかった。彼の目的は、あくまでも後漢王朝の安定と、民の安寧であった。
「天下統一など、俺には無縁だ。俺が望むのは、乱世の終結と、民が安心して暮らせる世だ」
高順は、そう言い放ち、袁紹と曹操という二大勢力との戦いを、あくまでも後漢王朝の安定を取り戻すための戦いと位置づけていた。
「袁紹と曹操め、貴様らの野望は、後漢王朝を滅ぼし、民を苦しめるだけだ。余は、貴様らの野望を打ち砕き、後漢王朝を再興させる」
高順は、袁紹と曹操に宣戦布告し、彼らの野望を阻止することを誓った。
しかし、高順は、袁紹と曹操の勢力を削ぐために、周到な策を練っていた。
「袁紹と曹操の勢力を削ぐには、彼らを孤立させ、各個撃破するのが最善策だ。」
高順は、錦衣衛を各地に派遣し、袁紹と曹操に敵対する勢力との接触を図った。
「錦衣衛よ、南陽の張繍、并州の張楊、幽州の公孫瓚に接触せよ。彼らは、袁紹と曹操を牽制するのに利用できる」
高順は、錦衣衛に密命を下した。
錦衣衛は、高順の命令に従い、各地に潜伏する張繍、張楊、公孫瓚と接触し、共闘を持ちかけた。
「張繍殿、袁紹と曹操は、貴殿を討とうと企んでいる。ここは、高順殿と手を組み、奴らを迎え撃つべきだ」
「張楊殿、袁紹と曹操は、并州を狙っている。ここは、高順殿と手を組み、奴らの野望を打ち砕くべきだ。」
「公孫瓚殿、袁紹と曹操は、幽州を狙っている。ここは、高順殿と手を組み、奴らを北に封じ込めるべきだ」
張繍、張楊、公孫瓚は、袁紹と曹操の脅威を感じていたため、高順の提案を受け入れた。
「高順殿、貴殿の提案、承知した。共に袁紹と曹操を迎え撃とう」
「高順殿、貴殿の力、借りよう。共に袁紹と曹操を打ち破る。」
「高順殿、貴殿の申し出、感謝する。共に袁紹と曹操を北に封じ込める」
公孫瓚も、高順との共闘を誓った。高順は、張繍、張楊、公孫瓚に武器や兵糧を送り、彼らの戦いを支援した。
「袁紹と曹操め、貴様らの相手は、余だけではない。南陽、并州、幽州の猛者たちが、貴様らを迎え撃つだろう。」
高順は、袁紹と曹操に宣戦布告し、彼らの力を分散させることに成功した。一方、高順は南方の孫堅と同盟を結び、背後を固めることにした。
「文台兄、共に手を組み国を助けようぜ!」
高順は、孫堅に同盟を提案した。
「高順殿、貴殿の提案、承知した。共に太平を目指そう」
孫堅は、高順との同盟を受け入れた。
高順は、孫堅と同盟を結ぶことで、南方の憂いをなくし、袁紹と曹操との戦いに集中できる体制を整えた。
「袁紹と曹操め、貴様らの相手は、余だけではない。南陽、并州、幽州、そして南方の孫堅も、貴様らの敵となるだろう」
高順は、袁紹と曹操に、さらなる圧力をかけた。
高順の策により、袁紹と曹操は、複数の敵と戦わざるを得なくなり、その勢いは大きく削がれた。高順は、この機に乗じて、袁紹と曹操を討ち滅ぼし、後漢王朝を再興させることを目論んでいた。
劉備が徐州から兵を挙げ、豫州へと侵攻を開始した。高順が豫州の地盤を固め、袁術残党を掃討し、蘆江を手に入れたという情報は、劉備にとって看過できない事態であった。
「高順め、豫州で好き勝手に振る舞うとは、許しがたい。ここは、我らが力を示し、豫州の安定を取り戻さねばならぬ…」
劉備は、関羽と張飛を呼び寄せ、豫州侵攻の準備を始めた。
「雲長、益徳!高順を討つ。豫州の民を、高順の圧政から解放するのだ」
劉備は、関羽と張飛に檄を飛ばした。
「承知した。この関羽が、高順の首、必ずや持ち帰って見せまする」
関羽は、青龍偃月刀を手に取り、高順討伐を誓った。
「兄貴、俺に任せておけ!高順なんぞ、この張飛が叩き潰してくれるわ!」
張飛は、蛇矛を構え、高順討伐に意気込んだ。劉備軍は、徐州を出発し、豫州へと進軍を開始した。その兵力は、数万にも及んだ。
高順は、劉備軍の侵攻を、錦衣衛の報告で知った。
「劉備め、ついに動き出したか。だが、恐れるに足らず。我らが力を示し、奴らを叩き潰してくれる」
高順は、諸将を呼び寄せ、劉備軍迎撃の準備を始めた。
「諸将よ、劉備軍が侵攻してきた。訓令戦術を駆使し、奴らを迎え撃て!」
高順は、諸将に迎撃命令を下した。諸将は高順の命令に従い、各々兵を率いて劉備軍を迎え撃つべく、豫州各地へと展開した。
「王当、楊鳳、楊醜、陶昇、張五、羅胤、上官敵、昌豨、孫観、蕭建、尹礼、各々持ち場を守り、劉備軍を迎え撃て!」
高順は、十一将に細かく指示を出し、劉備軍を迎え撃つための陣形を敷いた。
劉備軍は、豫州へと侵攻し、高順軍と各地で激突した。関羽と張飛は、その圧倒的な武勇で高順軍を蹴散らし、高順軍は苦戦を強いられた。
しかし、高順軍もまた、訓練された精鋭部隊であった。訓令戦術を駆使し、劉備軍を巧みに翻弄し、徐々に戦局を有利に導いていった。
「その戦術、恐るべし。高順軍、侮りがたいな…」
劉備は、高順軍の巧みな戦術に舌を巻いた。高順と劉備、両軍の戦いは、激しさを増していった。豫州の地は、再び戦火に包まれようとしていた。