第四回 高孝父転戦徐州 董相国納敵為友
高順は、黒山賊と白波賊を討ち滅ぼした後、生き残った者たちを配下に加えることにした。彼らは、高順の圧倒的な武勇と、容赦ない戦いぶりに恐れをなし、忠誠を誓った。
「降参だ降参!殺されちゃ何者こりゃしねぇからな!なぁ、将軍!太守!大将軍!許してくれぇ!何でもするからよォ!」
賊たちは、高順に命乞いをし、その足元にひれ伏した。高順は、彼らの忠誠を受け入れたが、その目は、冷たく、警戒心を隠そうともしなかった。
「ほぅ?『何でも』か、良いだろう!ならば当分河内の奴隷になれ」
高順は、賊たちを厳しく戒め、彼らを自軍の兵士として組み込んだ。そして、彼の軍勢は、賊軍の残党を吸収し、さらに強大なものとなった。
高順は、軍勢を再編成し、兵士たちを様々な兵科に分けた。騎兵、歩兵、弓兵、騎弓兵、戦車兵、土木工兵。それぞれの兵科に、熟練の兵士を配置し、彼らを徹底的に訓練した。総勢八十万である。
「騎兵は、敵陣を突破し、戦場を駆け巡る。歩兵は、敵兵を足止めし、陣地を守る。弓兵は、遠距離から敵を射抜き、戦況を有利にする。騎弓兵は、騎馬の機動性と弓の射程を活かし、敵を翻弄する。戦車兵は、敵陣を破壊し、突破口を開く。土木工兵は、陣地を構築し、攻城戦や籠城戦で活躍するから皆で励む様に!」
高順は、各兵科の役割を兵士たちに徹底的に教え込み、彼らを精鋭部隊へと育て上げた。彼の軍勢は、様々な戦術に対応できる、柔軟で強力な軍隊へと生まれ変わった。
高順は、再編成された軍勢を率いて、各地の情勢を探っていた。その過程で、高順はある陰謀の存在に気づいた。
待てよ?うちのあの脳筋刺史が草原の奥地まで行ったのって…誰かが仕組んだとしたら…お坊ちゃんとあの雑草魂くらいか…?
高順は、直感的にそう感じ、配下の張五に調査を命じた。張五は、高順の命令を受け、各地を奔走し、情報を集めた。そして、ついに、高順が疑念を抱いていた陰謀の全容を掴んだ。
「大将ォ!大変ですぜ!袁紹と公孫瓚が手を組み、北の異民族を唆して丁刺史を…!」
張五の報告に、高順は愕然とした。袁紹と公孫瓚は、互いに敵対しているはずだった。しかし、彼らは、高順を陥れ并州を手に入れるために、手を組んだのだ。
「んだと!?袁紹と公孫瓚が…!まさか…!」
高順は、怒りと驚きを隠せなかった。袁紹と公孫瓚は、高順の勢力を削ぎ落とすために、并州を北の異民族に差し出そうとしているのだ。
「奴ら…!刺史を討つだけでなく、并州をも手に入れようというのか…!」
高順は、怒りに震え、拳を固く握りしめた。袁紹と公孫瓚の陰謀は、高順にとって許しがたいものだった。
「張五、すぐに全軍に伝令を送れ。袁紹と公孫瓚を殺す!そして、奴らに、生まれてきたことを後悔させてやる!」
高順は、復讐の炎を燃え上がらせ、袁紹と公孫瓚の陰謀を打ち砕くことを決意した。彼の軍勢は、再び戦乱の世へと身を投じた。
高順は、袁紹と公孫瓚の連合軍を迎え撃つため、万全の準備を整えていた。しかし、連合軍の兵力は、高順軍を遥かに上回っていた。
「能無し二人がァ!殺しちゃる!」
高順は、復讐の炎を燃え上がらせ、自らの精鋭部隊『陥陣営』を率いて、連合軍へと突撃を開始した。
『陥陣営』は、高順の指揮の下、圧倒的な武勇を発揮し、連合軍を次々と斬り倒していった。しかし、連合軍の兵力は、高順軍を遥かに上回っていた。
「将軍、自重を!勝機何時でも望めます!」
部下たちは、高順に退却を進言したが、彼は聞く耳を持たなかった。
「わかった!おめぇらは兵を退かせろ!俺ァやる事があるからよ!」
高順は、狂乱した獣のように単身で敵陣へと突撃を繰り返した。その結果右肩、左足、脇腹等に多数の手傷を負い、一旦退却した。
その時、味方の援軍が到着した。劉虞は、張楊の協力を得て、幽州を奪還し、高順軍の援護に駆けつけたのだ。
「高将軍!援軍に参りました!共に、袁紹と公孫瓚を打ち破りましょうぞ!」
劉虞軍は、高順軍と連携し、連合軍を挟撃した。その結果、戦況は一変し、連合軍は混乱に陥った。
張遼もまた、袁紹軍と激戦を繰り広げ、前線を死守していた。其の武勇は袁紹軍を恐れさせ、その進軍を阻んだ。
「袁紹め!貴様の相手はこの張文遠だ!丁原様の仇、ここで討たせてもらうぞ!貴様のような卑怯者には、丁原様の偉大さはわかるまい!」
張遼は、愛馬を駆り、敵陣を縦横無尽に駆け巡り、敵兵を次々と斬り倒していった。
そして、高順は傷の応急処置を済ませると一休みを入れて生き残った兵で袁紹軍を叩き回った。
「袁紹、公孫瓚!貴様らの首は、この高順が必ずや刎ねてくれる!主の仇、ここで討ち果たしてくれる!」
高順の怒号は、戦場に響き渡り、袁紹軍を震え上がらせた。彼の圧倒的な武勇の前に、袁紹軍は次々と倒れていった。
「くそっ!高順め、ここまでとは…!ここは一旦退却だ!公孫瓚、貴様も引け!」
袁紹は、形勢不利を悟り、撤退を決意した。公孫瓚もまた、高順軍と劉虞軍の挟撃を受け、撤退を余儀なくされた。
「高順…!覚えていろ!必ずや、この屈辱を晴らしてみせる!丁原の仇だと?笑わせるな!貴様もいずれ、その無力さを思い知る時が来るだろう!」
公孫瓚は、捨て台詞を残し、兵を引いて退却した。
高順は、連合軍を追い払い、勝利を収めた。
高順は傷を癒し、河内まで退き今後の情勢を見極めると同時に董卓を責め滅ぼすという大義も忘れていなかった。
ハァ…クソ!頑張り過ぎたな…!クソ!クソ!クソ!丁原の死は俺にも責任がある…俺が并州を無駄に大きくしなけりゃ…!
この頃、徐州では曹操の父らが殺されると言う事件が起きた。
曹操にとって、父の曹嵩の死は、徐州侵攻の絶好の口実であった。陶謙が実際に父を殺害したかどうかは、彼にとってはどうでもよかった。
「陶謙…!貴様、父上を殺したのか!必ずや、その罪を償わせてくれる!」
曹操は、復讐の炎を燃え上がらせ、徐州へと侵攻を開始したが、その内心では、徐州を手に入れるための戦略を練っていた。
「徐州は、豊かな土地だ。これを手に入れれば、我が勢力はさらに拡大する。陶謙…!貴様の死は、我が天下統一への第一歩となるだろう。」
曹操は、陶謙を追い詰め、彭城で決戦を挑んだ。しかし、陶謙もまた、必死の抵抗を見せた。
「曹操…!貴様に父上を殺した覚えはない!だが、貴様の侵攻は許さない!徐州は、我が民の土地だ!貴様のような暴虐な男に、渡すわけにはいかない!」
陶謙は、劉備や田楷らの援軍を得て、曹操軍を迎え撃った。しかし、曹操軍の勢いは凄まじく、陶謙軍は各地で敗退を重ねた。
曹操軍は、取慮、睢陵、夏丘と、徐州の各地で陶謙軍を打ち破り、ついに郯の地まで追い詰めた。しかし、曹操軍もまた、兵糧が尽きかけ、撤退を余儀なくされた。
正史では曹操軍は各地で凄惨な殺戮を行った。男女合わせて数十万人規模の住民が殺され、犬や鶏まで残らず殺されたという。泗水の流れが、殺された住民の血で堰き止められるほどだったとも伝えられている。
高順は、『陥陣営』を率いて曹操軍に突撃し、虐殺を阻止した。河北の戦役で数万の消耗と引き換えに数十万の精鋭を手に入れた高順には天下広しと言えども手が出せるのは袁紹、袁術くらいなものである。
「孟徳兄、その辺にしたらどうだ?食料なら兗州に戻るまでの分を分ける故!」
ここまで言われたら曹操は下がるしか無かった。
「高将軍、ご厚情痛み入る!私もここで兵を引かせてもらおう!」
しかし、曹操は兵を引いた訳では無く侵攻方向を変えただけである。高順も其れを理解している為、諸将に徐州に入り、『高』の旗を常に掲げさせた。
また、陶謙の配下であった笮融が、徐州の経済的中心である下邳、広陵、彭城を掌握し、半ば独立したため、陶謙軍は苦境に立たされた。
曹操は、再び徐州へと侵攻した。五城が陥落し、琅邪を越え、東海まで攻め込まれた。陶謙は、曹豹と劉備を郯の東に駐屯させていたが、曹操軍は帰還途中に彼らを撃破した。
曹操軍は高順と戦う事を避ける為に民は傷つけずに進んだ。
しかし、その時、曹操の本拠地である兗州で、張邈、張超兄弟と陳宮らが反乱を起こした。曹操軍は、本国を守るため、撤退を余儀なくされ、陶謙は危機を脱した。
この戦いで、劉備は陶謙から厚遇を受け、豫州刺史に推挙され、小沛に駐屯した。
曹操は、徐州を手に入れることはできなかったが、高順の介入により、虐殺の被害を一部食い止めることができた。しかし、徐州の力は大きく削がれ、曹操の戦略は、着実に進行していた。
曹操軍が撤退した後、徐州は一時的に静けさを取り戻した。しかし、その静けさは、嵐の前の静けさであった。陶謙は、疲弊した徐州の復興に努めると同時に、再び迫りくるであろう曹操軍の侵攻に備えていた。
高順は、曹操軍の虐殺を阻止したことで、徐州の民から感謝された。
これでよかったのか?それとも…
高順は、虚ろな目で天を見上げ、自問自答を繰り返した。
一方、劉備は、陶謙から厚遇を受け、小沛に駐屯していた。彼は、徐州の惨状を目の当たりにし、民を救うために力を尽くしたいと考えていた。
「陶謙殿、私はこの徐州の民のために、力を尽くしたいのです。どうか、私にこの地を守らせてください」
劉備は、陶謙に懇願し、徐州の防衛に尽力することを誓った。
その頃、曹操は、兗州での反乱を鎮圧し、再び徐州へと目を向けていた。
「徐州…!必ずや、貴様を我がものとしてくれる!陶謙…!貴様の首は、必ずや我が手で刎ねてくれる!」
曹操は、復讐の炎を燃え上がらせ、再び徐州侵攻の準備を始めた。
徐州を巡る戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。陶謙、高順、劉備、そして曹操。それぞれの思惑が交錯し、徐州の地は、再び戦乱の渦に巻き込まれようとしていた。
高順は、曹操の再侵攻を知り、再び軍を率いて戦場へと向かうことを決意する。
「ったく…懲りねぇ野郎だなぁ…まぁ、いいや。ちょうど練兵にもってこいだからな!」
徐州各地に配下をばら撒き軍令を出した。
「お前達は今まで軍の中では校尉だが、この戦に勝てば全員将軍に格上だァ!」
「「おおぅ!」」
曹操軍との戦いで張燕、孫輕、王當、楊鳳、于毒、左髭丈八、劉石、青牛角、黃龍、左校、郭大賢、李大目、於氐根、白繞、眭固、楊醜、陶升らは皆、張り切って曹操と戦ったが、その内の于毒、左髭丈八、劉石、青牛角、黃龍、左校、郭大賢、李大目、於氐根、白繞、眭固が戦死、五十万いた黒山軍も三十万にまですり減らした。
その代わり、張邈、張超、陳宮、昌豨、孫観、蕭建、呉敦、尹礼を引き入れた。
これで将官も増えたのは良いが、流浪の将軍…劉備と一緒じゃねぇか!
河内は董卓の侵攻により陥落し、その董卓に勧誘された。
董卓からの誘いか…。確かに、今の俺たちには後ろ盾が必要だ。曹操との戦で大損害を受けた今、単独で生き残るのは難しい。しかし、あの暴虐の限りを尽くす董卓の傘下に入るのは、あまりにも危険すぎる。
「皆、どう思う?董卓からの誘いだ。後ろ盾としては申し分ないが…」
俺がそう問いかけると、張邈が口を開いた。
「確かに、董卓の力は魅力的です。しかし、彼の悪行は天下に知れ渡っています。彼に従えば、いずれ我々も悪名を被ることになるでしょう。」
他の将たちも、張邈の意見に同意する者が多かった。
「しかし、今の我々に拒否権はない。董卓の誘いを断れば、彼は軍を率いて我々を討ち滅ぼすだろう。」
陳宮が冷静に分析する。
「ならば、ここは一つ、董卓の誘いに乗り、彼の力を利用するというのはどうだろうか?力を蓄え、機を見て彼を討つ。それが最も現実的な選択ではないだろうか?」
俺はそう提案した。
「しかし、董卓は容易ならざる人物。彼を欺くことは、容易ではないでしょう」
張超が懸念を示す。
「それでも、他に道はない。我々は生き残らなければならない。そのためには、一時的に彼に従うこともやむを得ない」
俺は決意を固めた。
「皆、覚悟は良いか?我々はこれから、虎穴に入ることになる。細心の注意を払い、機をうかがうのだ。」
俺の言葉に、皆が頷いた。
こうして俺たちは、董卓の誘いに応じることにした。しかし、それは決して服従を意味しない。俺たちは、虎の尾を踏む覚悟で、董卓を利用し、力を蓄え、いずれ彼を討ち滅ぼす機会をうかがうのだ。
董卓との同盟は、俺たちにとって新たな戦いの始まりだった。
河内の領地は戻してもらえた上、将兵らも一切分断されずに済んだがせめてもの救いだった。
高順が董卓と手を結んだという報せは、瞬く間に天下を駆け巡った。かつて董卓の暴虐に苦しめられた諸侯たちは、再び立ち上がった。袁紹を盟主とする第二次反董卓連合軍の結成である。
「高順め、董卓と手を組むとは…!許しがたい!」
袁紹は、憤怒の表情で叫んだ。
「もはや、董卓と高順の暴走を止めるしかない。再び、我らが力を合わせるときが来たのだ!」
曹操が、冷静に告げる。
「我らも、漢室の復興のため、そして天下の安寧のため、再び立ち上がろう!」
劉備が、義勇軍を率いて参陣する。
各地の諸侯が、それぞれの思惑を胸に、連合軍に加勢した。袁術は、江南の地から軍勢を派遣し、他の諸侯たちも、董卓討伐のため、兵を挙げた。
連合軍は、袁紹を盟主とし、各地の軍勢を結集し、董卓軍への包囲網を形成した。曹操は、機動力を活かし、董卓軍の補給路を遮断する作戦を展開した。劉備は、民衆からの支持を集め、董卓軍の内部から崩壊を狙った。袁術は、水軍を率い、董卓軍の背後を突く戦略を提案した。
一方、高順と董卓は、連合軍の動きを警戒し、情報収集に努めていた。
「連合軍は、再び我々を討伐しようとしている。高順、どうする?」
董卓が、高順に問いかける。
「董卓様、ここは一つ、我々も積極的に動くべきかと。彼らの包囲網を突破し、各個撃破するのです。」
高順は、冷静に答える。
「なるほど、そなたの言う通りだ。我々も、ただ守るだけではいけない。積極的に攻めに出て、彼らを打ち破るのだ!」
董卓は、高らかに宣言した。
高順は、董卓軍の軍備を増強し、連合軍の攻撃に備えた。董卓は、并州を拠点とし、連合軍との決戦に臨む覚悟を示した。
こうして、第二次反董卓連合軍と董卓・高順連合軍の戦いが、再び始まろうとしていた。天下の命運をかけた、壮絶な戦いが、今、幕を開ける。
暫く戦った後、連合軍と膠着した。
洛陽の都に、不穏な空気が漂っていた。董卓の暴虐は日に日に増し、民は不安におののいていた。そんな中、董卓は突如として遷都を宣言した。
「長安へ都を移す!洛陽はもはや用済みだ!」
董卓の言葉に、周囲の将たちは戸惑いを隠せなかった。その中にあって、高順だけは静かに董卓を見つめていた。
「董卓様、遷都は得策とは言えません」
高順の言葉に、董卓は眉をひそめた。
「何だと?余の決定に異を唱えるのか?」
「はい。長安への遷都は、多くの民を苦しめるだけでなく、我々の軍勢も疲弊させます。それよりも、まずは皇帝の陵墓に眠る財宝を頂戴し、その上で并州へと進軍すべきかと」
高順の言葉に、董卓は目を輝かせた。
「ほう、それは面白い。具体的に申してみよ。」
高順は、静かに言葉を続けた。
「皇帝の陵墓には、莫大な財宝が眠っています。それを手に入れれば、軍資金も潤い、兵士たちの士気も高まるでしょう。そして、并州は軍事的に重要な拠点であり、資源も豊富です。そこを制圧すれば、我々の勢力はさらに拡大するでしょう」
高順の言葉に、董卓は満足げに頷いた。
「なるほど、そなたの言う通りだ。遷都は中止し、まずは皇帝の陵墓から財宝を頂戴する。その後、全軍を率いて并州へ進軍する!」
董卓の号令一下、軍勢は皇帝の陵墓へと向かった。陵墓からは、目も眩むばかりの財宝が運び出され、兵士たちの士気は最高潮に達した。
そして、董卓は全軍を率いて并州へと進軍した。并州の地は、董卓軍の前に次々と陥落し、董卓の勢力は拡大の一途を辿った。
董卓の予想外の行動に、反董卓連合軍は困惑の色を隠せなかった。彼らは、董卓が長安へ遷都するものとばかり思っていたのだ。
「董卓め、我々の裏をかいたか…!」
連合軍の盟主、袁紹は悔しげに呟いた。
「しかし、これで董卓の勢力はさらに拡大した。我々も、早急に対応を考えねば」
曹操が冷静に分析する。
董卓の并州侵攻は、各地の群雄にも衝撃を与えた。彼らは、董卓の勢力拡大を警戒し、今後の動向を注視した。
長安の都に、不穏な空気が漂っていた。董卓の暴政は、味方であるはずの高順の心にも、深い失望を刻み込んでいた。
董卓は、勢力拡大のため并州への侵攻を開始した。并州は、軍事的に重要な拠点であり、資源も豊富であった。董卓は、この地を制圧することで、自身の勢力をさらに強固なものにしようと目論んでいた。
董卓軍の圧倒的な軍勢を前に、并州の張楊、張遼らは抵抗を諦め、董卓に服従した。張遼は、その武勇と才能を董卓に見込まれ、配下として迎え入れられた。
并州を手に入れた董卓は、ますますその勢力を拡大し、長安へと戻った。しかし、その暴政は日に日に増し、味方であるはずの高順の心にも、深い失望を刻み込んでいた。
「相国、馬騰討伐の件承知いたしました。」
高順は、静かに董卓に告げた。その瞳の奥には、冷たい光が宿っていた。
もはや、この男を討つしかない…
高順は、心の中で呟いた。董卓の暴虐は、もはや許容できるものではなかった。彼は、董卓を討ち、この乱世を終わらせることを決意した。
高順は、馬騰討伐の準備を進めながら、密かに董卓暗殺の計画を練り始めた。彼は、董卓の側近たちを買収し、内部からの暗殺を企てた。
「董卓様は、もはや正気を失っておられる。このままでは、我々は皆、破滅するだろう」
高順は、側近たちに語りかけた。
「しかし、董卓様を討つなど…」
側近たちは、恐れおののいた。
「恐れることはない。私が、必ず成功させる。我々は、この乱世を終わらせるのだ」
高順は、強い決意を込めて言った。
董卓が董旻らを中心とした討伐軍を編成し、主要な将兵を全て送り出した結果、長安の守りは手薄となり、董卓の配下には李粛のみが残された。高順は、この状況を董卓を討つ絶好の機会と捉えた。
高順は、董卓の配下で唯一残された李粛を懐柔し、味方につけることを試みた。李粛は、董卓の側近であり、長安の内部事情に詳しい人物である。彼を味方につけることで、高順は董卓暗殺の計画を有利に進めることができると考えた。
董卓が討伐軍を率いて不在の間、高順は長安の守りを固め、内部からの反乱を防ぐことに注力した。彼は、長安の兵士たちを買収し、彼らを味方につけることで、長安の掌握を図った。
高順は、董旻率いる討伐軍の動向を監視し、彼らが長安に戻る前に董卓を討つ機会をうかがった。彼は、討伐軍の動きを把握することで、董卓暗殺後の混乱を最小限に抑えようとした。
そして、高順は密かに司徒王允と手を結んだ。王允は、董卓の暴政を憎んでおり、高順の董卓暗殺計画に協力することを約束した。
高順は、王允からの支援を受け、着々と暗殺計画を進めていた。彼は、馬騰討伐の軍を率いて、董卓のいる長安へと戻った。
そして、ついに、その時が来た。
高順は、董卓の側近たちと連携し、董卓を暗殺するための罠を仕掛けた。
「董卓様、馬騰討伐の報告がございます。」
高順は、董卓に近づき、報告を始めた。その背後には、暗殺者たちが潜んでいた。
「ほう、馬騰討伐が成功したのか?」
董卓が、高順に近づいたその瞬間、暗殺者たちが一斉に襲いかかった。
「逆賊、死ねぇ…!」
高順は、董卓に剣を突き刺した。
董卓は、驚愕の表情を浮かべ、その場に崩れ落ちた。
「高順…貴様…!」
董卓は、そう言い残し、息絶えた。
高順は、董卓の首を掲げ、兵士たちに告げた。
「董卓は、もはやいない!我々は、新たな時代を築くのだ!」
高順の言葉に、兵士たちは歓声を上げた。
こうして、高順の謀略は成功し、董卓は討たれた。しかし、それは、新たな戦いの始まりでもあった。