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第三回 草原決戦有陰謀 公孫瓚侵攻并州

幽州の内乱は、劉虞と公孫瓚の激しい対立によって引き起こされた。公孫瓚は、その武勇と勢力を背景に、幽州の大部分を掌握し、劉虞を追い詰めていた。


劉虞は、公孫瓚の度重なる暴走に業を煮やし、討伐を決意する。しかし、公孫瓚は民衆を盾にして城に立て籠り、劉虞軍の攻撃を防ぎ止めた。戦況は膠着状態に陥り、劉虞軍は徐々に疲弊していく。


その頃、并州にいた丁原は、幽州の混乱を憂慮していた。劉虞は、後漢王朝の重鎮であり、その人望は厚かった。丁原は、劉虞を見捨てるわけにはいかないと考え、援軍を派遣することを決意する。


丁原は、精鋭部隊を率いて幽州へと進軍した。彼の軍勢は、公孫瓚軍を圧倒し、劉虞を救出することに成功した。


「劉虞殿、ご無事で何よりです。丁原、参上いたしました」


丁原は、劉虞に敬意を表し、労いの言葉をかけた。


「丁原殿、感謝いたします。貴殿の援軍がなければ、私はどうなっていたことか…」


劉虞は、丁原の救援に深く感謝した。


丁原は、公孫瓚との戦いを早期に終結させるため、劉虞と共に交渉の場を設けた。


「公孫瓚殿、もはや無益な争いはやめましょう。ここは、幽州を二分し、互いに領地を分かち合うのが最善の策かと…?」


丁原は、公孫瓚に冷静に語りかけた。


公孫瓚は、丁原軍の圧倒的な力と、劉虞の威厳に押され、交渉に応じることを決意した。


こうして、幽州は代郡を除く大部分が公孫瓚の領地となり、劉虞は代郡を確保することとなった。


丁原は、両者の間に平和的な解決をもたらし、幽州の安定に貢献した。劉虞は、丁原に深く感謝し、両者の絆はより強固なものとなった。


その後、丁原は幽州の復興に尽力し、民衆の信頼を回復させた。そして、幽州は再び安定を取り戻し、後漢王朝の重要な拠点としての役割を果たすこととなる。


董卓が相国となり、朝廷で権勢を極めるにつれ、その支配は徐々に歪みを見せ始めた。各地からの租税は滞り、中央政府の財政は逼迫の一途を辿った。


「李儒、このままでは朝廷の運営もままならぬ。何か対策はないのか?」


董卓は、側近の李儒に問いかけた。李儒は、しばし思案した後、答えた。


「相国、ここは司隷にて五銖銭を鋳造し、不足分を補うのがよろしいかと」


董卓は、李儒の提案を受け入れ、粗悪な五銖銭の鋳造を始めた。しかし、この策は、かえって経済的混乱を招いた。


粗悪な銭貨は、市場での信用を失い、物価は高騰した。民衆は、日々の生活に困窮し、不満を募らせた。


「董卓様のせいで、我らの生活は苦しくなるばかりだ。一体、いつまでこの苦しみが続くのか…」


民衆の嘆きは、洛陽の街に重く響き渡った。


一方、朝廷内でも、董卓の横暴に対する不満が高まっていた。


「董卓め、我らを愚弄するのも大概にしろ!このような粗悪な銭貨、一体誰が使うというのだ!」


朝廷の重鎮たちは、董卓の政策を非難し、その専横を嘆いた。しかし、董卓は、彼らの言葉に耳を貸さなかった。


「フフフ、愚か者どもめ。この董卓の力の前には、貴様らの不満など、取るに足らぬ」

董卓は、その傲慢な態度を崩さず、自身の権力を誇示した。


こうして、董卓の支配は、経済的混乱と民衆の不満という、二つの大きな問題を抱えながら、その終焉へと向かっていく。


劉備は、敵軍に敗れ、失意のうちに昔なじみの中郎将公孫瓚のもとへと身を寄せた。公孫瓚は、劉備の才能を惜しみ、彼を別部司馬に任じた。


「おぅ、昔の交だ!其れにお前なら」


公孫瓚の言葉に、劉備は深く感謝し、その期待に応えるべく、青州刺史の田楷を助け、袁紹軍と戦った。劉備は、その戦場で数々の戦功を立て、公孫瓚の推薦により、平原県の仮の令という地位を得た。


「玄徳、よくやってるようだな!平原を任せるぞ」


公孫瓚の言葉に、劉備は平原県の令として、その才能を遺憾なく発揮した。彼は、賊の侵入を防ぎ、民に経済的な恩恵を与え、身分の低い士人を差別しなかった。その結果、多くの人々が劉備に心を寄せ、彼を慕った。


「劉県令、あなたは我らの希望です。どうか、我らを見捨てないでください」


民の信頼を得た劉備は、やがて平原国の相となった。その頃、公孫瓚は袁術と手を結び、袁紹と対立していた。袁術の要請で、劉備は高唐に、単経は平原に、徐州牧の陶謙は発干に駐屯し、袁紹を圧迫した。


「玄徳、袁紹を討ち、漢室を再興する。それが、我らの使命であろう?」


公孫瓚の言葉に、劉備は静かに頷いた。彼の心には、董卓討伐、そして漢室再興の炎が、再び燃え上がっていた。


高順は、堂々とした態度で洛陽の街を闊歩し、大学者である蔡邕の邸宅へと向かった。その足取りは、まるで自らの領地を歩いているかのように、堂々としていた。


蔡邕の邸宅に到着した高順は、門番に名乗りを上げ、蔡邕との面会を求めた。門番は、高順の堂々とした態度に圧倒され、慌てて蔡邕に面会を伝えた。


やがて、蔡邕が姿を現した。高順は、蔡邕に向かって深々と頭を下げ、静かに語り始めた。


「蔡邕先生、高順と申します。突然の訪問、お許しください」


蔡邕は、高順の堂々とした態度と、その落ち着いた物腰に、只者ではないと感じた。


「高順殿、何の用向きでしょうか?」


高順は、まっすぐに蔡邕の目を見つめ、単刀直入に用件を伝えた。


「先生の娘、蔡琰殿を、私の妻として迎えたい」


高順の言葉に、蔡邕は驚きを隠せなかった。蔡琰は、才色兼備の誉れ高い娘であり、多くの名士が求婚していた。しかし、蔡邕は、娘の幸せを第一に考え、相手を慎重に選んでいた。


「高将軍、それは…」


蔡邕は、言葉を濁しながら、高順の真意を探ろうとした。


高順は、蔡邕の戸惑いを察し、静かに語り始めた。


「先生、私は、蔡琰殿の美貌と才能に、深く心を惹かれました。そして、彼女を妻として迎え、共に人生を歩みたいと、心から願っております」


高順の真摯な言葉に、蔡邕は心を動かされた。彼は、高順の堂々とした態度と、その誠実な人柄に、娘の未来を託すことができると感じた。


「高順殿、あなたの誠意、しかと受け止めました。娘の気持ちも確認させてください」


蔡邕は、高順にそう告げ、娘の蔡琰を呼んだ。


蔡琰は、高順の堂々とした態度と、その誠実な言葉に、心を惹かれていた。そして、父の蔡邕に、高順との結婚を承諾する旨を伝えた。


こうして、高順は大学者蔡邕の娘、蔡琰を妻として迎えることとなった。


高順は、匈奴と鮮卑との戦いで壊滅的な被害を受けた丁原を救うため、妻の蔡琰と義父の蔡邕を伴い、急ぎ河内へと戻った。しかし、河内の城門をくぐった途端、予期せぬ事態が彼を待ち受けていた。


「太守!城内にて郝萌が叛乱を起こしました!」


兵士の報告に、高順は愕然とした。郝萌は、彼が河内を離れている間に、城の守りを任されていた将であった。


「何だと…!郝萌が叛乱を…!一体、何があったのだ!」


高順は、兵士に詳しく事情を尋ねた。郝萌は、丁原軍の敗戦と高順の不在に乗じ、城の乗っ取りを企てたのだという。


「くそっ、この期に及んで…!」


高順は、怒りを抑え、冷静に状況を分析した。丁原の救援に向かうべきか、それとも河内の叛乱を鎮圧すべきか。彼は、苦渋の決断を迫られた。


「妻と義父上を安全な場所へ避難させよ。そして、全軍を指揮し、郝萌の叛乱を鎮圧する!」


高順は、妻と義父の安全を確保し、自らは兵を率いて叛乱鎮圧へと向かった。しかし、河内の叛乱鎮圧に手間取っている間に、丁原は更なる窮地に追い込まれていた。


高順が丁原の救援に駆けつけた時には、既に手遅れだった。丁原軍は、異民族の猛攻に耐えきれず、壊滅的な被害を受け、丁原自身もまた、命を落としていた。


「刺史…!」


高順は、丁原の死に深く悲しんだ。彼は、丁原の仇を討つことを誓い、郝萌の叛乱鎮圧に全力を尽くした。

河内の叛乱は、高順の活躍により鎮圧された。しかし、丁原の死は、高順にとって大きな痛手となった。彼は、失意の中、今後の身の振り方を模索することになる。


丁原の訃報は、高順の心に深い絶望と怒りを刻み込んだ。草原での深手が原因だという。救援に駆けつけた時には、既に遅かった。高順は、己の無力さを呪い、天を仰いだ。


「刺史…!なぜ、こんなことに…!私が、もっと早く駆けつけていれば…!」


高順は、悔恨の念に苛まれ、拳を固く握りしめた。その時、彼の脳裏に、郝萌の裏切りが蘇った。


「郝萌…!貴様さえいなければ…!丁原様は、まだ生きていたはずだ…!」


高順の怒りは、頂点に達した。彼は、自らの計画が全て崩壊したことを悟り、絶望の淵に立たされた。完全にヤケクソである。


「もう、何もかもどうでもいい…!」


高順は、自暴自棄になり、全ての束縛から解放された獣のように、復讐の炎を燃え上がらせた。


「黒山賊、白波賊…!貴様ら、丁原様の仇だ!皆殺しにしてくれる!」


高順は、手勢を率いて、黒山賊と白波賊の討伐に向かった。彼の目は、復讐の炎で赤く染まり、その表情は、鬼神のようだった。


七星君はこれを見て逆に賊軍達に同情を寄せたと言う。


高順軍は、狂乱した獣のように、黒山賊と白波賊を追い詰めた。彼の圧倒的な武勇と、復讐に燃える兵士たちの猛攻の前に、賊たちは次々と倒れていった。


「高順様…!どうかお許しを…!」


賊たちは、命乞いをしたが、高順の耳には届かなかった。彼は、容赦なく賊たちを斬り捨て、その血で剣を濡らした。


高順は、黒山賊と白波賊を散々に討ち果たした。彼の復讐は、凄惨な殺戮となり、戦場は血の海と化した。

高順は、復讐を遂げた後も、その狂気を鎮めることができなかった。彼の心は、丁原の死と裏切りによって、深く傷ついていた。


諸将は、高順の狂気に満ちた戦いぶりを止めようとしたが、高順は聞く耳を持たなかった。


「邪魔をするな!貴様らも、丁原様を裏切ったも同然だ!」


高順は、諸将の制止を振り切り、自らの精鋭部隊『陥陣営』を率いて、百万の賊軍へと突撃を繰り返した。彼の目は、復讐の炎で赤く染まり、その表情は、鬼神のようだった。


『陥陣営』は、高順の指揮の下、圧倒的な武勇を発揮し、賊軍を次々と斬り倒していった。しかし、百万という圧倒的な数に、高順軍も徐々に疲弊していった。


「高順様…!もはや、これまでです!退却を…!」


部下たちは、高順に退却を進言したが、彼は聞く耳を持たなかった。


「まだだ…!まだ、丁原様の仇を討ち果たしていない…!」


高順は、狂乱した獣のように、敵陣へと突撃を繰り返した。その結果、一万まで増えた『陥陣営』の兵士は、三千にまで討ち減らされた。


しかし、高順の狂気の前に、百万の賊軍もついに恐れをなし、降伏を決意した。


「高順様…!どうか、我らの命だけは…!」


賊たちは、高順に命乞いをし、降伏を申し出た。高順は、賊たちの降伏を受け入れたが、その目は、冷たく、憎しみに満ちていた。


高順は、百万の賊軍を降伏させたことで、その名を轟かせた。しかし、彼の心は、復讐の炎によって焼き尽くされ、深い絶望に覆われていた。


「刺史…仇は討ちました。しかし、あなたのいないこの世界で、俺はどうすれば…」


高順は、虚ろな目で、天を見上げた。彼の心には、深い喪失感と孤独感が広がっていた。


「丁原が死んだだと?フハハハハ!天が我に味方したか!」


公孫瓚は、伝令から丁原の訃報を聞き、高笑いを上げた。長年の宿敵の死は、彼の野心を再び燃え上がらせた。


「者ども!長年の恨みを晴らす時が来た!并州へ進軍するぞ!」


公孫瓚は、兵を鼓舞し、并州へと進軍を開始した。彼の軍勢は、長年の戦いで鍛え上げられ、精強を誇っていた。


一方、并州では、丁原の死によって動揺が広がっていた。しかし、張楊は冷静に状況を分析し、将兵たちを鼓舞した。


「皆、丁原様は亡くなられた。しかし、我々はここで立ち止まるわけにはいかない!公孫瓚の侵攻を食い止め、并州を守り抜くのだ!」


張楊の言葉に、将兵たちは奮起し、公孫瓚軍を迎え撃つ準備を始めた。張遼もまた、先陣を切って出陣の準備を進めていた。


「公孫瓚め、丁原様を侮辱するとは許さん!并州を我が物になどさせぬ!」


張遼は、愛馬に跨り、鋭い眼光で敵軍を睨みつけた。彼の武勇は、味方を鼓舞し、敵を恐れさせた。


劉虞もまた、公孫瓚の侵攻を警戒し、張楊たちに援軍を送ることを決めた。


「公孫瓚の侵攻は、并州だけでなく、幽州にも脅威となる。ここは、張楊殿たちと協力し、奴を打ち破るしかない。」


劉虞は、援軍を率いて并州へと向かった。


やがて、両軍は并州の地で激突した。張遼は、先陣を切って公孫瓚軍に突撃し、その勢いを削ぎ落とした。


「公孫瓚!貴様の相手は、この張遼だ!并州から今すぐ立ち去れ!」


張遼の猛攻に、公孫瓚軍は混乱し、徐々に後退を始めた。張楊もまた、劉虞軍と共に、公孫瓚軍の背後を突き、挟撃の形を作り出した。


「くそっ、まさかここまで抵抗されるとは…!だが、まだ終わらんぞ!」


公孫瓚は、予想外の抵抗に焦りを感じ始めた。彼の軍勢は、徐々に消耗し、戦況は不利になっていった。


「退却だ!全軍、撤退せよ!」


公孫瓚は、撤退を決意し、兵を引いた。并州の将兵たちは、勝利の雄叫びを上げ、公孫瓚軍を追い払った。


「刺史、仇は討ちました!どうか安らかにお眠りください!」


張遼は、天に向かって叫び、丁原の冥福を祈った。


こうして、公孫瓚の并州侵攻は失敗に終わった。并州の将兵たちは、丁原の仇を討ち、その遺志を継ぐことを誓い、結束を固めた。




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