第十八回 高順罵死王司空 解甲帰田享天倫
高順は、呉を平定した後、その軍勢を率いて北上を開始した。彼の軍は、穎川を通過し、かつての都、洛陽へと進軍した。洛陽は、曹丕の死後、魏の新たな政治の中心地となっていたが、高順はそこに立ち寄り、魏の動向を静かに観察した。
洛陽での滞在を終えた高順は、軍を西へと進め、函谷関を通過した。函谷関は、古来より東西を結ぶ重要な戦略拠点であり、そこを通過することは、魏に対する明確な敵意を示すものであった。
そして、高順は長安へと入城した。長安は、かつて漢の都であり、高順にとっては馴染み深い土地であった。彼は、この地を蜀漢の新たな拠点とすることを決意した。
「長安よ、再び私が戻ってきた。今度は、この地を蜀漢の都とする!」
高順は、長安城に入ると、高らかに宣言した。彼の行動は、公然と曹丕の死後の魏に対して宣戦布告するに等しいものであった。
高順の軍勢は、規律正しく、士気も高かった。彼らは、呉を平定したばかりであり、その勢いは頂点に達していた。一方、魏は、曹丕の死後、内部の混乱が続いており、高順の挑戦に十分に対応できる状況ではなかった。
高順は、長安に入ると、すぐに防衛体制を強化し、魏の攻撃に備えた。彼は、長安を拠点に、魏を攻め滅ぼし、天下を統一するという野望を抱いていた。
高順の行動は、魏の朝廷に大きな衝撃を与えた。
「高順が長安に…!?一体、何をするつもりだ…?」
魏の臣下たちは、高順の意図を測りかね、不安に駆られた。彼らは、高順の挑戦に対し、どのように対応するのか、激しい議論を交わした。
高順の行動は、単なる挑発行為ではなく、魏を滅ぼし、天下を統一するという強い意志の表れであった。彼の軍勢は、その意志を体現するかのように、静かに、しかし着実に、魏を包囲していった。
高順は、長安を拠点に、魏との全面対決に備えた。
魏の朝廷では、高順の長安入城に動揺が広がっていた。曹叡は、高順の真意を測りかね、臣下たちに意見を求めた。その時、王朗が進み出て、高順への説得を申し出た。
「陛下、高順はかつて丁原を主としておりましたが、それを失い、弘農王に忠誠を誓い董卓と戦ったがまたもその弘農王を失い、更にかつては諸侯の一人であるにもかかわらず劉備の下に甘んじ今のような苦労をしている愚行をしている。これらを根拠に高順は実に哀れな男です。このような男には、言葉による説得が最も効果的かと存じます。」
王朗は、高順の過去を振り返り、その主君を次々と失ってきた経歴を指摘した。
「高順は、主君を失い続ける哀れな男。彼には、忠誠を誓うべき真の主君が必要なのです。陛下こそ、高順が仕えるにふさわしいお方。私が説得すれば、高順は必ずや恭順し、司隸を返還するでしょう。」
王朗は、自信に満ちた表情で曹叡に語りかけた。
「高順は、かつて丁原、弘農王、そして劉備と、主君を次々と変えてきた男。彼には、真の忠誠心などない。彼は、ただ強い者に従うだけなのです。今、最も強いのは陛下。陛下に恭順することが、彼にとって最善の選択となるでしょう。」
王朗は、高順の行動を分析し、その心理を読み解こうとした。
「高順は、かつて諸侯の一人でありながら、劉備の下に甘んじていました。それは、彼が自らの力を過信し、愚かな選択をしたからです。しかし、今、彼はその過ちに気づいているはずです。陛下の下で、彼は再び輝きを取り戻すことができるでしょう。」
王朗は、高順の過去の選択を批判し、魏への恭順を促した。
「高順は、司隸の地を奪還しましたが、それは一時的なものです。彼には、その地を維持する力はない。いずれ、彼はその地を失い、再び放浪の身となるでしょう。しかし、陛下に恭順すれば、彼は安定した地位と領土を得ることができます。」
王朗は、高順の現状を分析し、魏への恭順が彼にとって最善の選択であることを強調した。
「陛下、どうか私に高順への説得をお任せください。必ずや、高順を恭順させ、司隸の地を返還させてみせます。」
王朗は、曹叡に強く訴えかけた。
曹叡は、王朗の言葉に心を動かされ、彼に高順への説得を任せることにした。
「王朗殿、そなたの言葉、しかと承知した。高順への説得、どうか成功させてくれ。」
曹叡は、王朗に期待を寄せた。
王朗は、曹叡の期待に応えるべく、高順への説得に向かうことを決意した。
王朗は、曹叡の命を受け、高順を説得するために函谷関へと向かった。老いた体を引きずりながら、彼は馬車に揺られ、関へと続く道をゆっくりと進んだ。
函谷関に近づくにつれ、王朗はかつての戦乱の記憶を思い出していた。この関は、数々の戦いの舞台となり、多くの兵士たちが血を流した場所である。しかし、今は静寂に包まれ、関の周りには蜀漢の兵士たちが整然と並んでいた。
王朗は、関の前に到着すると、馬車を止め、蜀漢の兵士たちに声をかけた。
「私は、魏の使者、王朗である。高順将軍に面会を求めたい。」
兵士たちは、王朗の身分を確認し、すぐに高順へと伝えた。しばらくすると、関の門が開き、高順が現れた。
高順は、王朗を迎え入れると、近くの陣幕へと案内した。陣幕の中には、簡単な机と椅子が用意されており、二人は向かい合って座った。
「王朗殿、遠路はるばるご苦労であった。どのようなご用向きで?」
高順は、落ち着いた口調で王朗に尋ねた。
王朗は、高順の言葉に軽く頷き、静かに語り始めた。
「高順将軍、私は、貴殿に魏への恭順を勧めるために参りました。」
王朗は、高順の目をじっと見つめながら、言葉を続けた。
「貴殿は、かつて丁原殿、弘農王殿、そして劉備殿と、主君を次々と変えてきました。それは、貴殿が真の忠誠心を抱いていない証拠です。今、最も強いのは我が魏。陛下に恭順することが、貴殿にとって最善の選択となるでしょう」
王朗は、高順の過去を指摘し、魏への恭順を促した。
「貴殿は、かつては天下の諸侯の一人でありながら、劉備殿の下に甘んじていました。それは、貴殿が自らの力を過信し、愚かな選択をしたからです。しかし、今、貴殿はその過ちに気づいているはずです。陛下の下で、貴殿は再び輝きを取り戻すことができるでしょう」
王朗は、高順の過去の選択を批判し、魏への恭順を促した。
「貴殿は、司隸の地を奪還しましたが、それは一時的なものです。貴殿には、その地を維持する力はない。いずれ、貴殿はその地を失い、再び放浪の身となるでしょう。しかし、陛下に恭順すれば、貴殿は安定した地位と領土を得ることができます」
王朗は、高順の現状を分析し、魏への恭順が彼にとって最善の選択であることを強調した。
「高順将軍、どうか私の言葉をお聞きください。陛下に恭順し、共に天下を治めましょう」
王朗は、高順に深く頭を下げた。
其れに対して黙って聞いていた高順は口を開き始めた。
高順は、王朗の言葉を静かに聞いていた。王朗が話し終えると、高順はゆっくりと口を開いた。
高順は、王朗の言葉を真っ向から否定した。
「王朗殿、そなたの言葉、しかと承知した。しかし、そなたの言うことは、全くの的外れである」
んなもん、前世で終わらせてきてるわ!(番外編の魏武鋭槍を参照)
高順は、丁原との別れを振り返り、自らの行動を弁護した。
「私が丁原殿を失ったのは、私の過ちではない。私は、軍人として軍務に就き、主君の傍にいることができなかった。それが、私の唯一の悔いである。」
お前は呂布相手に対マン張れるのか?
高順は、弘農王との別れを振り返り、戦況を分析した。
「弘農王殿を失ったのは、敵が元々精兵揃いな上に、私が敵の軍と正面から戦っていたからである。殿下自身が血気に逸ったことも、原因の一つであった」
当たり前じゃん、勝てないところを何とか五分に持ち込んでんだから
高順は、自身の行動を正当化した。
「主君を変えるのは、乱世の定めである。私は、人道や道義に反するようなことはしていない」
お前も孫策に負けて曹操に付いたよね?
高順は、魏の成立過程を批判した。
「そなたは、魏が強いと言うが、それは大きな間違いである。魏の成立は、曹丕が無駄な殺戮を行い、そなたらが曹丕を推戴した結果に過ぎない」
行き場を無くした可哀想な奴ってのはお前の事だよ
高順は、王朗の過去を指摘し、その偽善を暴いた。
「昔日の国賊董卓は、朝廷を壟断し、権力を欲しいままにした。しかし、帝位を僭称することには、些かの戸惑いすらあったという。そなたは、一代の人傑であり、学識と才能がずば抜けた評価があるにもかかわらず、君主の過ちを正さず、天子を弑逆する君主を諌めなかった。はたして、それを礼儀正しく慎ましいというのだろうか?」
殺ったヤツも当然悪いが、止めもしないお前は尚更悪い
高順は、王朗の誘いを拒絶し、自身の決意を示した。
「そなたは、私に魏への恭順を勧めるが、私はそなたのような偽善者とは違う。私は、自らの信じる道を貫き、天下を統一する。それが、私の使命である」
うんうん、今更乗り換えるのもおかしくねぇか?ブァアカ!
高順は、王朗を嘲笑し、その生き方を批判した。
「そなたは、私を哀れな男だと言うが、哀れなのはそなたの方だ。そなたは、権力に媚びへつらい、真実から目を背けている。私は、そなたのような生き方はしない」
俺のやりたいことをやりやがって!俺だってのんびり生活したいよ!
高順は、王朗にそう言い放ち、彼を陣幕から追い出した。
「王朗殿、そなたの言葉は、私には何の響きもしない。そなたは、そなたの道を、私は私の道を歩む。二度と私の前に姿を現すな」
最初から話ならないんだよ!
高順との会談を終えた王朗は、失意のうちに帰路についた。高順の反論は、王朗の誇りを深く傷つけ、彼の老いた心を打ち砕いた。王朗は、馬車に揺られながら、高順の言葉を反芻し、自らの人生を振り返った。
「私は、間違っていたのか…?私は、ただ、魏のために尽くそうとしただけなのに…」
王朗は、自問自答を繰り返しながら、深い後悔の念に苛まれた。
函谷関を後にした王朗は、そのまま一路上へと向かった。老いた体には、長旅の疲れが重くのしかかっていた。しかし、彼は、高順の言葉が頭から離れず、休息を取ることもできなかった。
「高順…、お前は、私に何を言いたかったのだ…?」
王朗は、高順の言葉の意味を理解しようと努めたが、答えは見つからなかった。
やがて、王朗は力尽き、馬車の中で息絶えた。彼の魂は、そのまま一路上へと運ばれ、誰にも看取られることなく、静かに息を引き取った。
王朗の死は、魏の朝廷に衝撃を与えた。曹叡は、王朗の死を悼み、彼に手厚い葬儀を執り行った。
曹叡は珍しく怒鳴った。
「では、我が司空は敵国の大将軍に殺されたとでも言うのか!?」
「「…」」
「司空…、そなたの言葉は、高順には届かなかったが、そなたの忠義は、決して忘れはしない」
曹叡は、王朗の墓前に立ち、彼の冥福を祈った。
王朗の死は、高順と魏の関係をさらに悪化させた。魏の臣下たちは、高順への復讐心を燃やし、高順との全面対決を主張した。
一方、高順は、王朗の死を知ると、静かに呟いた。
「王司空…、そなたは、そなたの信じる道を歩んだ。私も、私の信じる道を貫くのみだ」
高順は、王朗の死を悼むことなく、自身の目標に向かって進み続けた。彼の心には、天下統一という強い意志だけが宿っていた。
高順は、長安に凱旋し、皇帝に謁見した。長年の戦いを終え、ついに天下統一を成し遂げた高順は、その功績を皇帝に報告するために、堂々と長安城の宮殿へと足を踏み入れた。
「臣、順。陛下に拝謁致します!」
高順は、皇帝の前で跪き、深々と頭を下げた。
「卿、そう固くならずに楽にせよ」
皇帝は、高順の労をねぎらい、彼に顔を上げた。
「はっ!」
高順は、皇帝の言葉に従い、ゆっくりと顔を上げた。
「では報告を聞こうか」
皇帝は、高順にこれまでの戦いの報告を促した。
「はっ!大小九戦、五勝四敗…。揚州が降り、我らが取り戻せてないのは中原、河北、山東のみとなりました」
高順は、これまでの戦いの成果を報告し、残された課題を述べた。
「よくやった!」
皇帝は、高順の功績を称え、満足そうに頷いた。
「卿には大将軍の職を解き、弘農郡公に任じ、更に南郡も食邑として受け取るが良い」
皇帝は、高順の功績に報いるために、彼に爵位と領地を与えた。
「ははっ!」
高順は、皇帝の恩寵に感謝し、再び深々と頭を下げた。
高順は、大将軍の職を解かれた後、弘農郡公として、与えられた領地へと向かった。彼は、そこで家族と共に静かに暮らし、残りの人生を穏やかに過ごすことを望んだ。
高順は、長年の戦いを終え、ついに平和な日々を手に入れた。