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第十五回 熊虎之将震東呉 高孝父待謀蓄発

夷陵の戦いにおいて、呉軍は韓当、周泰、潘璋、孫皎、甘寧、凌統といった多くの将を失った。これらの将は、孫権にとって長年の忠臣であり、呉の武力を支える重要な存在であった。


特に甘寧と凌統は、その武勇と忠義で知られ、呉軍の士気を高める象徴的な存在であった。彼らの死は、呉軍にとって計り知れない痛手であり、孫権は深い悲しみと怒りを覚えた。


「甘寧…、凌統…、貴様らを失った悲しみ、決して忘れぬ…!」


孫権は、亡き将たちの名を呼び、復讐を誓った。

呉軍にとって、高順は夷陵の戦いでこれらの将を討ち取った仇敵であった。高順は、その卓越した武勇と戦略で呉軍を苦しめ、多くの将を討ち取った。


呉軍の兵士たちは、高順を憎み、復讐の機会を窺っていた。彼らは、高順を「呉の仇敵」と呼び、その名を口にするだけでも激しい怒りを覚えた。


「高順…、必ずや、貴様の首を討ち取り、亡き将たちの仇を討ってくれる!」


呉軍の兵士たちは、高順への復讐を誓い、日々の訓練に励んだ。


高順は、呉軍にとって、かつての黄祖よりもはるかに恨みの深い仇敵となった。黄祖は、孫権の父・孫堅を討ち取った仇敵であったが、高順はそれ以上の恨みを呉軍にもたらした。


呉軍は、高順を討ち取るために、あらゆる手段を講じることを決意した。彼らは、高順を陥れるために、蜀漢内部で讒言を流し、高順を孤立させようとした。


「高順を討ち取るためには、手段を選んでいる場合ではない。あらゆる手を尽くし、必ずや高順を討ち取るのだ!」


呉軍は、高順への復讐を誓い、その執念を燃やし続けた。


高順は、諸葛亮が自身を陥れようとしていることを事前に察知していた。彼は、劉禅に上奏し、諸葛亮の企みを報告していた。


「陛下、諸葛亮は私を排除し、自らの権力を確立しようと画策しております。どうか、ご注意ください」


劉禅は、高順の報告を受け、諸葛亮の行動を警戒するようになった。彼は、関羽、張飛、趙雲らと連携を取り、高順を守るための準備を進めた。


「高叔は、蜀漢にとってなくてはならない存在だ。我々は、高叔を守り抜く!二伯、三叔、趙叔…」


「おゥ!任せな!」


「陛下の仰せのままに…」


「畏まりました」


劉禅は、そう宣言し、諸葛亮の計画を阻止することを決意した。


諸葛亮が呉との同盟を提案した際、劉禅は冷静にその意図を見抜いた。


「丞相、呉との同盟は、本当に蜀漢のためになるのでしょうか?それとも、私利私欲のためでしょうか?」

劉禅の言葉に、諸葛亮は言葉を詰まらせた。


「陛下、私は…、蜀漢の未来のために…」


「もうよい、丞相。貴殿の企みは、全て見えている。」


劉禅は、諸葛亮の言葉を遮り、冷たく言い放った。

さらに、益州の臣下たちも高順を擁護した。彼らは、高順が益州の発展に大きく貢献していることを評価し、彼を失うことは蜀漢にとって大きな損失であると主張した。


「高順殿は、益州の民にとって恩人です。彼を失うことは、我々にとって大きな損失です。」


益州の臣下たちの強い支持もあり、諸葛亮の計画は完全に潰えた。


「まさか…、ここまで…」


諸葛亮は、自身の計画が失敗に終わったことを悟り、失意のどん底に突き落とされた。


劉禅は、諸葛亮に厳しく言い渡した。


「丞相、貴殿の行動は、蜀漢の安定を乱すものであった。今後は、自らを省み、二度とこのようなことがないように。」


諸葛亮は、劉禅の言葉に深く頭を下げ、自身の過ちを悔いた。


高順は、劉禅や益州の臣下たちの支持を受け、益州牧としての地位を確固たるものとした。彼は、今後も蜀漢の発展のために尽力することを誓った。


劉備の死後、蜀漢の南中では各地で反乱が相次いでいた。その中でも最大規模の反乱を起こしたのは、南中の王である孟獲であった。


「我ら南蛮の民は、蜀漢の支配を認めぬ!自由を勝ち取るために戦うのだ!」


孟獲は、南中の民衆を扇動し、反乱軍を組織した。その規模は、瞬く間に十万の大軍へと膨れ上がった。


孟獲は、越嶲郡の高定、建寧郡の雍闓、牂牁郡の朱褒らと連携し、蜀漢への侵攻を開始した。


「蜀漢の兵など恐るるに足らず!我らの力で、南中を解放するのだ!」


孟獲軍は、各地で蜀漢軍を打ち破り、その勢いを増していった。


南中の反乱は、蜀漢にとって大きな脅威となった。蜀漢の国力は、夷陵の戦いで大きく低下しており、南中の反乱に対処するだけの余力がなかった。


「このままでは、南中全土が反乱軍の手に落ちてしまう…!」


蜀漢の朝廷では、南中の反乱を鎮圧するために、どのような対策を講じるべきか、議論が重ねられた。


諸葛亮は、南中の反乱を鎮圧するために、自ら南征することを決意した。


「私が南征し、南中の反乱を鎮圧する。そのためには、南中の民心を掌握することが重要だ。」


諸葛亮は、南中の民衆を懐柔し、反乱軍を孤立させるための策を練った。


一方、高順は、南中の反乱を鎮圧するために、武力による鎮圧を主張した。


「反乱軍は、武力で鎮圧するしかない。南中の民は、力こそが正義だと考えている。徹底的に叩き潰すのだ」


高順は、精鋭部隊を率いて南征することを申し出た。

劉禅は、諸葛亮と高順の意見を聞き、どちらの策を採用するか悩んだ。


「どちらの策も、南中の反乱を鎮圧するためには有効だろう。しかし、どちらか一方を選ぶことはできない」


劉禅は、諸葛亮と高順に、それぞれの策を連携させ、南中の反乱を鎮圧するように命じた。


「諸葛亮は、南中の民心を掌握し、高順は、反乱軍を武力で鎮圧する。二人が協力すれば、必ずや南中の反乱を鎮圧できるだろう」


劉禅の命令を受け、諸葛亮と高順は、それぞれの策を実行に移した。


諸葛亮は、高順が益州牧として絶大な権力を握り、蜀漢の国力を回復させていく様子を、内心穏やかではなかった。彼は、高順が自身の地位を脅かす存在であると考え、排除することを画策していた。


「高順め…、このままでは、私の権力は失われてしまう。何としても、彼を排除しなければ…」


諸葛亮は、高順を陥れるための策略を練り始めた。しかし、高順は民衆からの信頼も厚く、容易に失脚させることは難しい。


そこで、諸葛亮は南中の反乱を自身が鎮圧することで、劉禅からの信頼を回復し、再び権力を握ることを考えた。彼は、南征を自身の権力回復の最後の機会と捉え、入念な準備を始めた。


「南中の反乱を鎮圧し、再び陛下からの信頼を得る。そのためには…」


諸葛亮は、南征の正当性を主張し、自身の忠誠を表明する為に、後世に伝わる有名な【出師表】を書き上げた。


臣亮言 先帝創業未半 而中道崩殂


今天下三分 益州疲弊


此誠危急存亡之秋也


然侍衛之臣 不懈於內 忠志之士 忘身於外者


蓋追先帝之殊遇 欲報之於陛下也


誠宜開張聖聽 以光先帝遺徳 恢弘志士之気


不宜妄自菲薄 引喩失義 以塞忠諫之路也


宮中府中俱爲一體 陟罰臧否 不宜異同


若有作姦犯科 及為忠善者


宜付有司 論其刑賞


以昭陛下平明之治 不宜偏私 使內外異法也


侍中侍郞郭攸之費禕董允等 此皆良実 志慮忠純


是以先帝簡拔以遺陛下


愚以為宮中之事 事無大小 悉以咨之 然後施行


必能裨補闕漏 有所広益


将軍向寵 性行淑均 曉暢軍事


試用之於昔日 先帝弥之曰


能是以衆議挙寵為督


愚以為営中之事 事無大小 悉以咨之


必能使行陣和睦 優劣得所也


親賢臣 遠小人 此先漢所以興隆也


親小人 遠賢臣 此後漢所以傾頽也


先帝在時 毎与臣論此事


未嘗不歎息痛恨於桓霊也


侍中尚書長史參軍 此悉貞亮死節之臣也


願陛下親之信之


則漢室之隆 可計日而待也


臣本布衣 躬耕南陽


苟全性命於乱世 不求聞達於諸侯


先帝不以臣卑鄙 猥自枉屈


三顧臣於草廬之中 諮臣以当世之事


由是感激 遂許先帝以駆馳


後値傾覆 受任於敗軍之際 奉命於危難之間


爾來二十有一年矣


先帝知臣謹愼


故臨崩寄臣以大事也


受命以來 夙夜憂歎


恐付託不効 以傷先帝之明


故五月渡瀘 深入不毛 今南方已定 甲兵已足


当奨率三軍 北定中原 庶竭駑鈍 攘除姦凶 興復漢室 還於旧都


此臣所以報先帝 而忠陛下之職分也


至於斟酌損益 進盡忠言 則攸之禕允之任也


願陛下託臣以討賊興復之効


不効則治臣之罪 以告先帝之霊


若無興復之言


則責攸之禕允等之咎 以彰其咎


陛下亦宜自謀 以諮諏善道


察納雅言 深追先帝遺詔


臣不勝受恩感激


今当遠離 臨表涕零 不知所云


諸葛亮は、劉備の遺志を継ぎ、蜀漢の復興のために全力を尽くすことを誓った。


諸葛亮は、劉禅に忠臣たちを重用するように勧め、自身の不在中も蜀漢の政治が滞りなく行われるように配慮した。


諸葛亮は、自身の決意を表明し、劉禅に南征への協力を求めた。

「出師表」は、劉禅の心を動かし、諸葛亮に南征の許可を与えた。

「丞相、そなたの忠義、朕はしかと承知した。南征、くれぐれも油断せずにな。」

劉禅は、諸葛亮の熱意に打たれ、彼に全権を委ねることを決めた。

諸葛亮は、「出師表」を武器に、再び権力を握るための第一歩を踏み出した。


高順は張飛、関羽を襄陽に送り、趙雲を公安に配置して守勢に回った。


自身は呉資、曹性、張燕、張五を引き連れて三万の兵で救援に向かった。


蜀漢の南部、通称『南中』は、多種多様な少数民族が暮らす地であった。彼らは『西南夷』と総称され、その社会構造は奴隷制、封建制、そして原始的な部族社会と様々であった。諸葛亮は、北伐を成功させるためには、後方の安定が不可欠と考え、南征を強く望んだ。

「南中を平定し、後顧の憂いを絶たねば、北伐は成功せぬ。これは、隆中対においても示した『南撫夷越』の策である」


劉備は、蜀漢を平定した後、南中を治めるために庲降都督を設置し、現地の豪族を地方官に任命した。しかし、夷陵の戦いで大敗を喫し、白帝城で病没。その直後、益州の豪族である雍闓は孟獲と共に反乱を起こした。


「劉備が死んだ今、蜀漢に遠慮する必要はない!我らこそが南中の主だ!」


雍闓は、建寧太守の正昂を殺害し、張裔を捕らえて呉へと送り、蜀漢と決別した。越巂郡の酋長である高定も雍闓に呼応し、太守の焦璜を殺害して王を名乗り、新道県を攻撃した。しかし、李厳率いる救援隊に敗れ、南へと敗走した。


呉は、蜀漢との関係が悪化していることを利用し、雍闓を永昌太守に任命。劉闡を交州の州境へ派遣し、益州郡を奪おうとした。雍闓は軍を率いて永昌城へと進軍したが、永昌郡功曹の呂凱と府丞の王伉は城を死守し、雍闓の侵入を防いだ。


「我らは蜀漢の民!反乱軍に屈するわけにはいかない!」


「城を死守し、蜀漢の援軍を待つぞ!」


「陛下、南中平定は急務にございます。臣、諸葛亮、この機に南征し、反乱を鎮圧したく存じます。」


「南中を平定し、後顧の憂いを絶たねば、北伐は成功しません。どうか、臣にお任せください。」


出陣の前夜、馬謖は孔明に訴えた。


「丞相!此処はどうか!私もお連れください!」


「幼常、未だその時では無い…諦めよ」


「わかりました。では、丞相どうかお聞きください」




「全軍、出陣!南中の反乱を鎮圧し、蜀漢の威光を示すのだ!」


諸葛亮は、精鋭部隊を率いて成都を出発した。彼の軍勢は、南中の各地で反乱軍を打ち破り、着実に進軍していった。


「敵は、地の利を生かした遊撃戦術を得意とする。慎重に進軍し、敵の罠に警戒せよ」


諸葛亮は、兵士たちにそう指示し、慎重に軍を進めた。


「諸葛亮め、よくもここまで…!しかし、我が南蛮の地で、そう簡単に勝たせはせぬぞ!」


南中の王である孟獲は、諸葛亮軍を迎え撃つために、各地の反乱軍を糾合し、抵抗を試みた。


「我が南蛮の兵は、勇敢で屈強だ!必ずや、蜀漢軍を打ち破ってくれる!」


孟獲は、兵士たちを鼓舞し、徹底抗戦の構えを見せた。


「孟獲を捕らえよ!しかし、決して傷つけるな!」


諸葛亮は、孟獲を捕らえては釈放するという作戦を繰り返した。これは、孟獲に蜀漢軍の強さを思い知らせ、彼を降伏させるための策であった。


「なぜ、わしを殺さないのだ…?」


孟獲は、諸葛亮の意図を理解できずにいた。


「そなたに、我が軍の強さを思い知らせるためだ。そして、そなたの心を掴み、真の服従を得るためだ。」


諸葛亮は、孟獲にそう答え、彼の心を揺さぶった。


「もはや、わしは降伏する。そなたの器量に、わしは心服した」


七度目の捕縛後、孟獲はついに降伏を申し出た。彼は、諸葛亮の度量と戦略に感服し、二度と反乱を起こさないことを誓った。


「そなたの降伏を歓迎する。共に南中を治め、民を安んじよう」


諸葛亮は、孟獲を温かく迎え入れ、南中の統治に協力することを約束した。


「南中の民よ、これからは安心して暮らすが良い。蜀漢は、そなたたちを温かく迎え入れる」


諸葛亮は、南中の民衆にそう呼びかけ、彼らの心を掴んだ。


「南中の反乱は、完全に鎮圧された。これにて、後顧の憂いなく、北伐に専念できる。」


諸葛亮は、南中を平定し、成都へと帰還した。彼の南征は、蜀漢の南方の安定をもたらし、その後の北伐を支える大きな基盤となった。


「陛下、南中を平定し、帰還いたしました。これからは、北伐に全力を尽くします」


諸葛亮は、劉禅にそう報告し、北伐への決意を新たにした。


高順は三万で諸葛亮を助けて南中まで送りその足で交州に向かった。


高順はひたすら兵を鍛えた。蜀漢は国民百万に対して軍が三割を占めた。


更に高順の元から持っていた二十万の精鋭も数はへれども十数万は維持できているため全体で四十万の兵を所有し、十五万を高順が率いていた。


残りの十二万を集めて交州に向かい、呉を攻める事にしている。


諸葛亮の南征が成功裏に終わると、高順は次なる一手として、交州の蒼梧へと軍を進めた。南中の平定によって得た兵力と物資を背景に、高順軍は快進撃を続け、各地で抵抗勢力を打ち破っていった。


「蒼梧の地は、我が蜀漢の南方の要衝である。必ずや、この地を制圧し、南方の安定を確固たるものとする!」


高順は、兵士たちを鼓舞し、進軍を加速させた。


「敵は、地の利を生かしたゲリラ戦術を得意とする。警戒を怠らず、慎重に進軍せよ!」


高順は、兵士たちにそう指示し、敵の罠に警戒しながら軍を進めた。


一方、関羽と張飛もまた、高順の進軍に呼応し、零陵、武陵、桂陽の奪還作戦を開始した。


「関羽兄貴、ここは俺たち兄弟の出番だ!必ずや、失われた領土を取り戻し、大漢の威光を示すぞ!」


張飛は、意気揚々と叫び、先陣を切って突撃した。


「張飛、油断するな。敵は、地の利を生かした戦術を得意とする。慎重に進軍せよ」


関羽は、張飛を諌めながらも、その勇猛果敢な突撃を援護した。


「零陵、武陵、桂陽は、かつて我らが守り抜いた地だ。必ずや、奪還し、民を安んじる!」


関羽は、そう誓い、その長髯を風になびかせながら、敵陣へと突進した。


関羽と張飛の活躍により、零陵、武陵、桂陽は次々と蜀漢の手に戻り、南方の民衆は歓喜の声に沸いた。


「関将軍、張将軍、ありがとうございます!我々は、あなた方のような英雄を待っていました!」


民衆は、関羽と張飛を英雄として称え、彼らに感謝の言葉を贈った。


高順軍と関羽、張飛軍の活躍により、蜀漢は南方の領土を拡大し、その国力をさらに高めていった。


「これで、南方は安定した。あとは、北伐に全力を尽くすのみだ!」


高順は、そう呟き、北方の魏を見据えた。蜀漢の勢いは、再び勢いを増し、天下統一への道を突き進んでいくかに見えた。


孫権は荊州の版図を江夏、長沙の二郡を残すのみとなった。

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