煙草
煙草の煙が目に染みる
子供の頃から嗅いでいたその匂いは
とても懐かしく体を包み込む
適当に夢を掲げ
好きでもない女を抱き
思ってもいない言葉を垂れ流し
飽きたら別れ
感傷に浸る
フリをする
救いのない毎日から逃げ
恐怖し悔しがる
フリをする
散らかった部屋を眺め
夜通し仲の良いヒトタチと
酒を飲み騒ぎ
酔っ払って
今日は楽しかったと言う
フリをし続ける
常に自分とは無関係であると
わりきっている
フリをしている自分を見ている
フリをしている
変化のない今も
変えられない過去も未来も
全て背負わなければならないのに
逃げて逃げて逃げて逃げて
また朝を迎える
酷く卑屈で愚かしい自分は
空っぽで
何も無くて
それでいて
ヒトの形だけを遺している
懐かしさの感じる
あの嫌いだった匂いだけが
純粋だったあの頃と繋げてくれている
気がする
前に進もうとして
足がもつれて倒れ
何かをつかもうとして
伸ばす手は切られ
考えることをやめた
美しさってなんだ
人間らしさってなんだ
なんでも出来たあの頃の自分はいない
それでも何か。
自分であるための何かは
残っているはずなんだ。
探せ。
迷え。
苦しめ。
もがけ。
足掻け。
倒せ。
自分が自分自身を肯定するために。
二度と忘れないために。
変えられなかったものを変えるために。
弱さを許せる強さも。
見つけられない何かを見つける強さも。
今の自分を構成する
何かに包まれた不確定な弱さの根源も。
潰せる。
壊せる。
殺せる。
遥か凌駕できる強さは
すぐそこにある