プロローグ
ハルトール王国、そこには一つの伝承があった。
『古き城に住まうは、不死の女王。
数多の財宝と供に、不帰の客を迎えん。
訪問者は須くかの輩となりて、帰ることあたわず。
命惜しくば、かの城には近寄るべからず。』
何処とも知れぬ城に纏わる伝承
幾多の冒険者が挑み、そしてその幾何かは帰らず。
未だその総てを得た者もいない。
「これを見ろよ!」
年若き冒険者の声が響く、ここは王都の冒険者ギルド『闇のねぐら』の一角である。
パーティーのリーダーであるアグラが自慢げに取り出したのは一枚の地図であった。
「また、騙されて!全然懲りて無いじゃない」
不満を漏らすのは、魔術師のエール、このパーティーの頭脳担当である。
「この間の依頼だって、只の遺跡探索っていって、渡された地図もいい加減で大変な目にあったんだから」
「そうだよな~、ガラクはそのせいで引退したし」
相槌を打つのはモンクのラハァスである。
「大体、スカウトも居ないのにどうやって探索するのよ」
呆れて、いるのは赤き司祭のレティーリア
アグラのパーティーは先の遺跡探索でスカウトのガラクが大怪我を負って引退。探索の主だったスカウトを欠いていたのだった。
「そんなもん、誰か探せば何とかなる。其れより此は間違いなく例の地図なんだって!」
アグラが握り締める地図を一瞥したエールはため息を付いた。
「あのね、数百年前の地図がそんなに新しい訳無いじゃない
大体写しだったら、既に散蒔かれた後でしょう」
「これは、そんなもんじゃない!エールの師匠から内々に依頼されたものだ‼
とある伝手から手に入れたものらしい。ガラクが抜けて困ってると言ったら、自分はもう探索に出れる年じゃないからと譲ってくれたんだ」
「それを先に言いなさいよ!あの師匠のことだから、どこで見つけてきたのかわからないけど本物っぽいじゃない」
「見てくれよ、だけどこれだけだと、よくわからないんだ。」
アグラが広げた地図にはどこかの国の形と城を示す印しか入っていなかった。
「ルファさんの話だとこの間の遺跡のどこかにこれの片割れがあるそうなんだ。
だけどあの遺跡隅々まで調べたけどそんなもんは無かったし。
すでに探索しつくされていてめぼしいものもなかったよな」
「そうね。隠し部屋を見つけて入ったまでは良かったけどそこでスケルトンに襲われるは、見つけた宝箱の罠でガラクは毒を受けるはで、大変だったし。」
そう言って、エールはコトリと小箱を置いた。色々な装飾を施されているがさして価値もなさそうな小箱である。
「なによそれ持ってきていたの?」
「だって、気になるじゃない。うちのガラクが開けられなかった箱よ」
ガラクはギルド内では5本の腕に入るほどの腕利きだった、そこいらへんの罠がよけられないような腕ではないのだ。
古株のスカウトだった彼は、アグラたちに冒険の仕方を指導していた立場にあった。
初期のパーティーにはよくあることだし、しばらく一緒に活動して気が合えばそのままパーティーを組むことも不思議ではなかった。
そのガラクが抜けた穴は非常に大きい、すぐに代わりが見つかるようなものでもない。
パーティーを組んで三年。アグラ達も一門の冒険者に育ってはいるが、なかなか難しいのであった。
カラン
『闇のねぐら』の扉を開けて一人の青年が入ってくる。物珍しそうに辺りを見回したあと、カウンターに向かってゆっくりと歩いて行った。
「すみません、ここで冒険者の斡旋をしていると聞いたのですが」
「坊主、依頼かい?」
奥に声をかけると、野太い声で返事があった。
「いえ、ギルドからの紹介でここでパーティーのメンバーを紹介してもらえると・・・。」
「なんだい、冒険者志望かい、クラスは?」
似合わないエプロンで手をふきながら奥か店の主クラウスは出てきた。
「えっと、スカウトです。公認レベルは3です。」
「中級者か、とてもそうには見えんが」
ギルドカードを示しながらそういう若者を値踏みしながら、クラウスは奥の騒がしいパーティーを見やる。




