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# -10

「舐めるなよ……このクソガキがぁ!!」


 男は整わない息を吐きながら怒鳴る。男の健全な左腕にはどこから取り出したのか、見慣れた拳銃、ベネットMC34が握られていた。

 あのモデルは装填できる弾は小さく、殺傷能力はそこまで高くないが、複数弾倉を持ち無改造のモデルでも十五発まで弾を仕込むことが出来る、携帯性にも優れたモデルだ。故に値段はそれなりだが、それ相応に普及しているモノであり、アラドスティアのメンバーがラースペントの者から強奪する代表的な代物だ。

 わざと逸らしたのか、利き腕じゃないから反動が大きくあまり上手く撃てなかったのか、それとも震える体でうまく標準を定められなかったのか。理由はどうあれただ狙いは全く定まっていなかったのは明確だ。


「そっか、お前は死にたいんだ」


 ボクは頬の傷口を拳で拭いながら男に一歩一歩近づいて行く。頬の傷からはまた血がにじみ、溢れ出す。


「来るなぁぁ!!」


 男ががむしゃらに発砲する。今度は真っ直ぐと一直線に。


 生憎、ボクはこんなナイフで発砲された弾丸を切るという芸当は出来ない。真正面まで来ている弾をいまさら避けるなどということも残念ながら難しい。この窮地を回避するにはどうすればいいか。そんな出切った答えを求め、目を閉じ改めて考える。

 しっかし、さっきも力を使ってしまったし、正直こんな雑兵に何度も見せる力ではないんだけどな~。強力な力を振りかざすほどボクは傲慢ではないのだが……。

 そうボヤキながらもボクは足元の影を力強く踏む。


「なにっ!?」


 ガシャン――と鏡を割るような音が辺りに響く。ボクの目の前には黒い壁のようなモノが足元から飛び出しており、弾丸はその壁に突き刺さっている。無論、ボクは無傷だ。



「ここがビル群の影になっててよかった……」


 白々しくボクは男に言う。影の盾はまた鏡の様に砕け散り、受け止めた弾丸を地に落とし何事もなかったかのように影に溶け消える。ボクはナイフを振るい、ナイフに付着した血を振り払いながら男に近づく。



 ボクはいつからか影を操る力を手に入れていた。

 それは悲しみから来たものなのか。それはわからない。でも力が操れるようになったのは兄がいなくなってからだ。

 操れる影は自分の触れた影のみだ。だが何かに伝って触れれば、それに力を送ることはできる。


 ナイフの影を薄い刃に変え、それを目標に投げ飛ばす。それがこの能力の主な使い方だ。他にもさっきデブをやったように、傷口から全身に影の棘を打ち込んだりも出来る。

 ただしこの力は体力と連携しているらしく、使いすぎると激しく疲れる。なのであまり大っぴらに使いたくないのだ。



「なんだよ、それ……まるで俺たちがここで襲って来ることを予見していたかのように……!!」


 ……なにいってんだ、コイツ。

 このプリオールでの日常は常に死と隣り合わせだ。いついかなるときも気を抜いてはいけない。まさかこいつ、アラドスティアに加入したから安全だとでも思っていたのか?

 思わず呆れ、ため息が漏れる。


「じゃあもういいよね、ボク帰ってシャワー浴びたいし」


 ボクは指を鳴らすと男の構えていた銃の銃頭に詰まった影を膨張させて炸裂、爆発させる。これで完全にこいつはボクを倒す術は無くなった。銃の突然の爆発に男は驚き、短く悲鳴を上げ後方に飛ぶ。見てて飽きない男だ。芸人になればよかったのに。ボクは数歩歩き、ナイフの先を震える男の鼻先に突きつける。


「何か言い残すことある?ミストに会ったら伝えといてやるよ」


 せめてもの慈悲だ。

 もっともボクはミストの顔を覚えてないし、そもそも会いたいと思わないから遺言が伝わることは定かではないが。

 男は身震いし、口も震わすだけで何も語らない。このまま立ち呆けてるのも時間の無駄だ。あと十秒数えるうちに何も言わなかったら片付けてしまおう。

 ――――そう思ったときだった。


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