第七話「愛、それとも??」
「ど、どうしたの高見沢君!? どっか痛いの!?」
「うう〜……!!」
ふ、不覚だったっ! 心は清廉なるロイヤルガードを自負するこの俺も、体は所詮ただの日本高校生男子(童貞)に過ぎなかったということかっ! 天草さんのアイドル級フェロモンに勝手に体が反応しているっ!
「遠慮しないで私に掴まっていいんだよ! そうだ、肩貸してあげるね!」
天草さんは俺の腕を取り自分の肩にかける。
道着越しに、ぴったり密着した天草さんの感触が伝わってくる。肩幅も狭く、抱きしめれば片腕で簡単に胸に収めてしまえそうだ。
「あ、いや、天草さんそんな……はぅあっ!」
俺はその時、大変なものを見てしまった。
俺よりも背の低い天草さんをすぐ隣から見下ろすと、ワンピースの襟元から視界に入ったのだ。
あ、青ブラジャー……。
「うわぁああああーーー!!!」
「高見沢君っ!?」
「お、俺もうとれっ、トレーニングにいくからっ!! ごめん、じゃあまたっ!!」
「た、高見沢くーん!!」
俺は後も見ずに駆け出した。己の信念を守るために。
俺は人知れず泣いた。己の愛に詫びるために。
俺はロイヤルガードとして、まだまだ未熟なり!!!
次の日の朝、俺は登校すると直ぐに机に突っ伏した。
「うう〜ん」
「どうした高見沢、ずいぶんダルそうにしてるじゃねーか」
「うむ、昨日は二十キロのロードワークに筋トレもいつもの二倍やったのでな、ちょっと疲れているのだ」
「ほーう、急にどうした。なんかあったか?」
「……じ、実はな」
俺は昨夜あった事の一部始終を話した。
猫橋は驚いた様に少し目を見開いた後、軽く腕を組んで頷いた。
「うーん……恋、か」
「何でそうなるんじゃーっ!!!」
俺は怒りの咆哮を上げる。
「うぉっと! いや、その話聞いたらそう思うだろが!」
「俺には既に心を捧げた相手がいるのだぞ(ギャルゲーの女の子達)!!! 貴様、この俺を尻軽野郎呼ばわりするつもりか!!!」
「いやいや、そうじゃねーけどよ。考えてもみろ、お前の想っているコには実際に手を触れられない、髪の匂いも嗅げない。それに比べて、恵ちゃんは実際に目の前にいる同級生の女子だ。気持ちがそっちに向いたとしても、それはごく自然な事じゃねーのか」
猫橋は諭すように語りかける。
「……猫橋」
「うん?」
「貴様、この俺に肉欲の奴隷に堕ちろと言うのか!!!」
「なーんでそうなるんだよっ!」
「馬鹿にするな! 未来のロイヤルガードを自負する俺の愛、忠誠は、下劣な情欲などに負けはせん! 負けはせんぞーっ!!!」
俺は教室の外へと走り去った。
「ったく、難儀なヤツだぜ」
猫橋は溜息をつきながらも微笑ましげに笑った。
「しかしあいつ、HR始まるのにどこ行ってんだよ……」
この後、始業のチャイムで我に返った俺はギリギリでHRに間に合ったのだった。
そして放課後、事件が起きた。
帰り支度をしている途中、天草さんが俺の所へ来て言ったのだ。
「高見沢君、一緒に帰ろうよ!」
それを聞いた周囲のクラスメイト達は奇跡とも呼べるシンクロ率で口を揃えた。
『な、なんだってーー!!??」
第八話へ続く