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第十三話「立ち話」

「……高見沢君、最近は忙しいの?」

「え!?」

 何を話すか言葉を見つけられないでいる俺の様子を見て、天草さんが先に口を開いた。

「いや、別に……。何でそう思うのだ?」

「だって最近、高見沢君、先に帰っちゃうし、浅岡君も高見沢君は忙しいみたいだって言ってたから……」

「そ、そうか……」

 あまり嘘をつきたくもないが、正直に天草さんを避けています、とも言えない。

 何を話そう?

「ところで〜、最近浅岡とはどうなのだ? 仲良くなった?」

「へ? う、うん。浅岡君けっこうUFOのことよく知ってて話が合うんだよ。昨日の帰り道で、一八〇〇年頃に日本で目撃された『虚舟(うつろぶね)』っていうUFOらしい物の話が出てる書物の事とかを、浅岡君が教えてくれたの! そんな話が出来たの初めてで楽しかった!」

「そ、それは良かったなー!」

 それは実の所、俺が調べて浅岡に教えていたんだが。

「うん。それに明日の夜は森王(しんのう)自然公園で星を見ながらUFO探しだからね! 今からワクワクしてるの!」

「そうか、見つかるといいな!」

「うん!」

 天草さんは首を大きく縦に振って、大輪の花の様な満面の笑みを見せた。

 本当にUFOや宇宙人が好きなのだろう、天草さんはその話をする時に、まるで子供の様に素直な笑みを見せる。

 何となく俺はその明るい笑顔が、マリルちゃんのそれと被って見えた気がした。

 な、何を考えてるんだか俺の馬鹿! 天草さんには悪いが、二次元の存在であるマリルちゃんの方がよっぽど可愛くて魅力的だ!

 俺は即座に己の間違いを訂正した。

「それにしても、高見沢君も来れれば良かったのにね」

「え?」

「浅岡君から聞いたよ、明日は来られないんでしょ?」

 どういう事だろう。明日、森王自然公園に行く話はこれが初耳だぞ。

「……それは浅岡が言っていたのか? もしかして、明日の計画って浅岡が??」

「そうだけど……高見沢君、聞いてなかった?」

「い、いや! 聞いていた! 聞いていたんだが、うっかり予定を入れてしまってなー! 本当にザンネンだー!」

 事情を察した俺はとっさに誤魔化した。

 危ない所だった。もう少しで浅岡の努力を無駄にしてしまう所だった。せっかく奴が嘘をついてまで作った二人きりのチャンスだというのにっ!

 ……嘘をついてまで。

 そうだ、浅岡は嘘をついて天草さんを誘ったのだ。本当の愛があるなら嘘などつくのか!? いや、相手を想うが余りに嘘はついてしまうものなのか!? くっ、俺には分からん!!

「……あのね高見沢君、私ね、けっこう秘密主義なの」

「ん!?」

 急に何を言っているのだ天草さんは?

「私、子供の頃に凄い体験をしたの。本当に凄い、夢みたいな体験よ。もしかしたら夢かもしれないんだけど、私は信じてるの、それが本当だって」

「あ、ああ……」

 俺は何の事か分からないままに相づちをうった。

「でもね、周りの人は誰も信じてくれなかったの。両親も友達も、口では信じてるって言ってくれたけど、本当はそんな事ない。私を気遣ってくれただけ。それが凄く辛かったの。その時から、友達が出来てもなんとなく距離を取っちゃうんだ。最初から、他人に近づける距離の限界を考えて、じゃあいいや、みたいな……」

 天草さんは常に明るい微笑みを浮かべている人だ。今も明るくあっけらかんとした口調で話している。しかしその明るさの奥に、確かな悲しみが見えた気がした。

「でも、高見沢君は凄いよね」

「え?」

「高見沢君は他人から否定されても、自分が信じてるものが揺るがない。自分が信じたいものを信じ続けられる強さがある。羨ましいな」

「そ、そうかな!?」

 こんな事は初めて言われた。俺がモニター内の二次元美少女に話しかけてる所を見ても褒めてくれるかは疑問だが、相変わらず嘘っぽさの無い天草さんの言葉は俺の心を暖かくしてくれた。

 その時、俺の頭に猫橋が言っていた事が浮かんだ。

 お、俺は、浅岡には気をつけた方がいいかもしれないって、天草さんに伝えるべきなのだろうか!?


第十四話へ続く

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