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下ネタ、BL的な表現を含みます。(BLではありませんが……)苦手な方はご注意願います。

 

プルトーとマキュリーの大喧嘩で、竜宮邸は半壊した。


 正気に戻ったプルトーは、大急ぎで着替えを済ませると、父の書斎を訪ね、項垂れる父の前で平伏叩頭して平謝りした。父はプルトーを叱責しないが、赦しを与えることもなかった。ただ一言


「それでもお前は、その鬱陶しい髪を切るつもりはないのだな」


 と言って、ため息をついた。プルトーの胸は罪の意識に塞がる。父の顔を真正面から見返す勇気は出せなかった。


 たちまちのうちに「龍の宴の惨劇」の顛末は月雲ノ上のすべての魔人が知るところとなった。プルトーは蟄居することで謹慎の意を表することにした。それなのに、使用人の制止も聞かず、ずかずかとプルトーの私室に上がり込んだ大男が、堂々と居座っている。


「驚いたな。驚いた、驚いた。これぞまさに驚天動地の大事件だ。まさか、あのマキュリー・プライドの愛しの君がプルプルだとは、世間の皆は夢にも思わなかったに違いない。まさかのまさか、そのまさかだよ。筋金入りの禁欲主義者が、いつの間に、どんな魔法を使って、月雲ノ上一番の高嶺の花をオトしたのか? 皆、知りたがってるだろうねぇ」


 プルトーはダンベルスクワットを行いながら、長椅子に腰かけてふんぞり返る大男を流し見る。彼が幼馴染みのジューゾー君と昵懇の仲で無ければ……月雲ノ上魔法大学校の先輩でなければ……さっくりと殺してやりたいところだ。

否、この男が同性愛者でなければ殺していた。色慾を司る蠍人であるこの男がマキュリーの名前を口にするだけで、マキュリーを穢されるような気がする。


「おッ! いいね、いいね! なやましい目付き! きめ細やかなお肌に浮かぶ汗の香りと煌めき、なやましいねぇ! プルプルが筋トレにせいをだしても、ほんと無意味だと思うけど、メチャクチャセクシーだからボクとしては大歓迎!」


 いやらしい目付きで視姦してくる、筋骨隆々の逞しい大男を妄想のなかで氷漬けにして、その後にかき氷にしてやりながら、プルトーは屹然とため息をついた。


 何が悲しくて、このような、品性下劣な性欲の権化と懇意にしなければならないのか。殺すのは我慢するとしても、せめて、死の息吹で氷漬けにして黙らせてしまいたい。プルトーの筋トレを無意味と断言する、この無礼千万なドチクショウを。


 今この瞬間、先輩の命があるのは、プルトーとジューゾー君の友情の賜物である。先輩には跪いて感謝してほしい。先輩は助平なだけの阿呆なので、言うだけ無駄だろうけれど。


 ラースの家訓には「下々のムシケラと机を並べることになろうと、幼き頃より世間を渡り、知見を得るべし」というものがある。


 七司族の首長候補にその名を連ねる選良であれば、幼稚舎から無試験で上級学校に進学する、由緒正しい名門校に通うものだ。プライドに至っては、学校には通わず、家庭教師を雇うことが多い。集団行動のイロハを知らずに大魔人になるから、プライドの魔人は協調性の欠片も無い、世間知らずの社会府適合者ばかりなのだ。マキュリーに限って言えば、それは最良の選択だと思うけれど。


 マキュリーはおバカだから、プライドを象徴する豊かなに波打つ金髪を誇らかに靡かせ、ラース特有の白い肌を惜し気もなく露出して、華やかな美貌と蠱惑敵な姿態を無防備に見せびらかして闊歩するに決まっている。その姿を目にすれば、男なら誰しも、鼻の下を伸ばすに決まっている。


 そうなったら、プルトーはマキュリーの同窓生を片っ端から殺して回らなければ気がすまない。龍の宴の惨劇のさなか、招待客が速やかに退場しなければ、うっかりしたと見せかけて抹殺しようと、頭に血を上らせたプルトーは密かにたくらんでいた。


 マキュリーが美しく成長することはわかりきっていたことだ。幼い頃のマキュリーは、とても可愛らしい女の子だったから。しかし、あんなに色っぽい妖女になるとは思わなかった。ああなるとわかっていたら、会いに来いなんて言わなかった。会いに行くから、鷲獅子宮殿にひきこもって待っていろと言っただろう。あんなあられもない姿を、他の男の目に晒すなんてこと、絶対に許さなかったのに。


 豊満な乳房、すらりと長い足、むちむちした太股。白く眩いそれらを思い出すと、プルトーはかっと熱くなる。


「おっ、おっ、プルプル、欲情しちゃってる!? 淫気、すごいよ、淫気! 大丈夫? 苦しいでしょ? 発散しちゃう? やっちゃう? ボクのお世話になっちゃう?」


 先輩の妄言は黙殺する。先輩のお世話になるくらいなら、寝台の下に隠してあるセクシーな写真集の、金髪碧眼のグラマラスなお姉さんたちのお世話になる。いや、この程度ならば、筋肉の鍛練が鎮めてくれるだろう。


ダンベルスクワットのペースをあげながら、プルトーは特に用もないのに、帰る気はさらさらなさそうな先輩を睨み付ける。先輩は怯まず、悦んだから忌ま忌ましい。


 先輩とは、幼馴染みのジューゾーくんの紹介で知り合った。


 プルトーは「若い頃の苦労は買ってでもすべし」がモットーの父に従い、小中高と、学区によって、下級・中級・上級問わず共に学ぶ公立校に通った️。必然的に、プルトーは学校では完全に浮いていた。公立校に通学する上級魔人なんて滅多にいない。周りは下級魔族ばかり。最弱のやわらかスライムのジューゾー君もそのひとりだった。


 ジューゾー君とは、小学校から高校まで、ずっと同じクラスで、おまけに席が隣同士だった。


 ジューゾー君は、とにかく面倒見の良い奴だ。プルトーが苛立ちのあまり筆箱を粉砕してしまったら鉛筆を貸してくれた。教科書を八つ裂きにしてしまったら教科書を見せてくれた。怒りに我を忘れて、授業中に本性を露にして暴れまわったときは、一緒に先生に謝ってくれたし、後でノートを見せてくれた。もののはずみで、うっかりクラスメイトを殺しそうになったときは、身を呈して止めてくれた。


 ジューゾー君は下等なスライムなので、言葉を発することは出来ないのだけれど、プルトーが失態を犯して落ち込んでいると、ズルズルと這い寄って来る。大きな手に変形して、サムズアップして見せて、励ましてくれる。下級魔族は子沢山な家庭が多く、ジューゾー君の家も例に漏れない。ジューゾー君は長男で、三十八匹の弟たちと、四十五匹の妹たちがいるそうだ。ジューゾー君の面倒見の良さは、お兄ちゃん気質によるものなのかもしれない。


 プルトーが物凄く落ち込んでいるとジューゾー君は手紙を書いてくれた。手紙には


「あしたはあしたのかぜがふくぜ。ドンマイだぜ! 」

「きにしない。きにしないったら、きにしないぜ。ドンマイだぜ!」

「なるようになるぜ。さきのことなどわからないぜ。ドンマイだぜ!」


等々、短いメッセージがしたためられていた。


 ジューゾー君は下等なスライムだから、これを書くだけで丸一日を費やすことになる。彼の努力を思えば、捨てるのはしのびなくて、ジューゾーに貰った手紙は全部、大切にとっておいてある。全部で六百六十六通もある。メッセージは全て記憶しているが、たまに読み返している。


 不本意ながら、プルトーの青春は、いつもうねうねぐねぐねするやわらかスライムのジューゾーくんと共にあった。


 プルトーが最難関の月雲ノ上大学に合格したとき、ジューゾー君は自分のことのように喜んでくれた。喜びのあまり体の半分が弾け飛んでしまい、ジューゾー君は生死の境をさまよったが、プルトーが必死になってこねくりまわすと、なんとかこの世に踏み留まってくれた。


 高校卒業後、ジューゾー君は家業を継ぐ為に、生まれ故郷である辺境の地上へ帰ると決めていた。ジューゾー君は人間にさえワンパンで倒される、最弱のやわらかスライム一族をなんとかするために、一族の期待を一身に背負って学校に通っていた。奨学人魂を貰いながら、涙ぐましい努力を重ね、なんとか高校を卒業したが、流石に大学進学は難しかった。ジューゾー君とは、そこでお別れだった。


 憤怒の龍を継承すれば、地上に降りる機会はあるものの、人里離れた辺境の沼地に用はない。もう会うことは無いだろう。


 高校の卒業式の後、そう告げると、ジューゾー君は触手を伸ばしてプルトーの頭をなでなでしてきた。

『めそめそするな、おとこだろう』とジェスチャーで伝えてきた。


 意味がわからない。プルトーはめそめそ泣いてなんかいない。大学受験に向けて猛勉強をしたので、ドライアイのような、それっぽかったような、それだけである。生理的な涙を流すことを、泣いているとはいわない。この低能はそんなことも知らないのか。


 別れ際、ジューゾー君は『いつでもいいから、あそびにこい』と書いた手紙を手渡してきた。どうやら、ジューゾー君はプルトーと離れ離れになることが寂しくて堪らないようだ。

 プルトーは友人の為を思って言ってやった。


『高貴で気高いこのプルトー・ラースが、薄汚いスライムの群生地に足を運ぶなんて考えられない。考えられないが、ジューゾー君がそこまで言うなら、考えてやらんでもない。キミのような雑魚スライムでも一応は、水属性の魔族。つまり我が眷族が末輩。水属性の魔族の頂点に君臨する龍人として、眷族の暮らしを知ることも、知見を得ることになるだろうからね』


 プルトーが寛大な心を示してやると、ジューゾー君は何故か、やれやれと肩を竦めるように蠢いた。生意気な下等スライムである。でも、約束を交わしたからには、そのうち、実家に帰った彼を訪ねてやらねばなるまい。


 ジューゾー君とはしばしの別れ。その後、プルトーは大学に進学した。


 先輩は、プルトーの同期として大学に在籍しているが、プルトーより五十年も先に入学している。入学直後から五十年もの間、休学していたのだ。


 休学中、先輩は人間に召喚されて大地に降りて、そのまま遊興していたという。それもその間、一度も契約者を変えなかったそうだ。契約者である人間の寿命が尽きるまで、付き合っていたらしい。


 どうしてそうなった、と訊いてみたいけれど、詮索するなんて下品な真似はしたくない。しかし、気になる。だって、たかが契約者一人の為に、五十年間も大地に降りたまま、帰ってこないなんて、普通ではない。五十年の歳月を費やしたぶん、たんまりと魂を回収したのかと思いきや、肝心の契約者の魂を回収しなかったと言うのだから、謎は深まるばかりである。


 ジューゾー君ならそこのところの事情を知っているかもしれないが、ジューゾー君は義理堅い奴なので、他魔人の過去を面白おかしく話の種にしたりしないだろう。……そうでなければ、非常に困ったことになる。


 プルトーはジューゾー君に秘密を握られている。父と母のこと、さらには、プルトーとマキュリーとのことをジューゾー君に打ち明けてしまったのだ。酒のせいである。ジューゾー君に誘われて、生まれてはじめて酒を嗜んだときのことだ。


 成魔人の試練を乗り越えて、晴れて一人前と認められたプルトーが、浮かない顔をしているのはどうしてだ? と、ジューゾー君に心配をかけた。


 僕は憤怒の龍に、君は傲慢の鷲獅子に、絶対になるんだぞ! と、自分から言い出したのに、マキュリーに先を越されてしまって、情けなくて、不貞腐れている。と本音を吐露する訳にはいかなかった。だけど、ジューゾー君には嘘をつきたくなくて、プルトーは黙秘した。


 すると、ジューゾー君は持ち前の老婆心を発揮して、うるさく詮索するかわりに、プルトーを寄宿舎の自室に呼出し……プルトーは羽車で登下校する通学生だったが、ジューゾー君は寮生だった……なけなしの人魂をはたいて購入した安酒を振る舞った。


 本当は口をつけたくなかった。貧乏魔人が浴びるようにして飲む安酒である。どのように仕込んだのかわかったものではないし、もしかしたら、酒瓶を使い回しているかもしれない。不潔である。


 しかし、そんな安物でも、素寒貧のジューゾー君にとっては高価な買い物だ。月雲から飛び降りる覚悟で購入したに違いない。誘いを断ってはジューゾー君の厚意を無下にすることになる。酒代を立て替えると申し出ても彼は承知しないだろう。ジューゾー君は最弱のやわらかスライムの癖に、それでいて頑固なところがあるから。


 だから断腸の思いで、プルトーは酒杯を煽った。それがまずかった。


 結論から言えば、プルトーはべろんべろんに酔っぱらってしまった。プルトーは下戸だったのだ。理性は弾けとんだ。プルトーはジューゾー君を抱えて笑い、ジューゾー君を踏み潰して怒り、ジューゾー君にすがりついて泣いた。


 幸か不幸か、プルトーは自身の犯した失態を一から十まで完全に記憶していた。翌朝、部屋の隅で膝を抱え、二日酔いと後悔に苛まれるプルトーに、ジューゾー君は「おまえのこいを、おうえんするぜ!」と力強くでかでかと書かれた手紙を渡して、追い討ちをかけてきた。


 そんなことがあったのだけれど、今のところ、ジューゾー君はプルトーの秘密を守ってくれている。


 ジューゾー君は他魔人の秘密をみだりに吹聴するような薄情ものではないし、そもそも、下等なスライムであるジューゾー君は話せない。筆談は辛うじて可能だけれど、絶望的に効率が悪い。一言のメッセージを綴ることに一日を費やすのだから。それほどの労力を割き、惨殺される覚悟を決めて、プルトーの秘密を暴露するのなら、その根性は称賛に値する。


 さて、先輩との出会いだが、新入生は強制参加の新歓コンパで先輩から声をかけてきたのだ。プルトーをラースの家督と知って、興味本位で群がってくる有象無象をあしらうことにうんざりしていた。部屋の隅っこで時計を睨み付け、秒針の鈍間にイライラしているとき、先輩が近寄ってきた。


「君がプルトーくん? わーお、バツグンの美人さんじゃないの! こんなかわいこちゃんのお世話なら、オニイサン、手取り足取り腰取りがんばっちゃうぞ! うーん、役得役得!」


 気安く話しかけてくるだけでは飽きたらず、許しを得ずに隣に腰を下ろし、あまつさえ、やにさがりながら肩を抱こうとしてきた。もともと不機嫌だったプルトーの堪忍袋の緒はあっさりと切れて、ぶちギレたプルトーは、ついつい先輩を殺しそうになった。命を惜しんだ先輩は


「待って待って、早まらないで! ボクはまだナニもしてないよ! これからたっぷりするつもりだけど! 君の親友に頼まれたんだ、君とよろしくヤッてくれってね!」


 と命乞いをしがら一枚の紙切れをプルトーに突き付けた。そこには


「おれのしんゆう、プルトーをよろしくおねがいします、だぜ」


 としたためられていた。その見苦しさは間違いなく、ジューゾー君の筆跡だった。


 ジューゾー君は気の良い奴だが、下等なスライムなので頭の出来はあまりよろしくない。よりによって色情狂の魔蠍人にプルトーのことをよろしく頼むとは。これだから、低能は信用ならないのだ。


 プルトーはやれやれと肩をすくめた。殺されかけた先輩がけろりとして


「おっ! どうした、どうした? ニコニコしちゃってどうしたの? なんか良いことあった? ニコニコ笑顔も可愛いね! ちょっと、その可愛いお顔にネバネバしたの、ぶっかけても良いかな? あっ、なんならお口に出してもイイよ!」


 などとほざきながら股間をゴソゴソやりだしたので、顎を殴って昏倒させた。こんな変態に大切な親友をよろしく頼むなんて、ジューゾー君は本当に愚かだ。下等なスライムの分際で、憤怒の龍の家督であるプルトーの心配をするなんて。プルトーの唯一無二の親友は、幼い頃からまるで変わらない。身の程知らずでお節介焼きで、友達思いのバカ野郎である。


 先輩によると、四十五年前、人間に浚われたジューゾー君の家族を先輩が助けたことをきっかけに、二人の交友が始まったそうだ。


 破廉恥な人間どもが、猥褻な行為に利用するために、先輩のような毒をもたない下等スライムを乱獲することは、そう珍しいことではないという。そう言えば、中等部第三学年生の夏休み、ジューゾー君は珍しく、実家に帰省していたことを思い出す。恐らくは、家族が人間に浚われたと聞いて、慌てて帰ったのだろう。プルトーには何も相談してくれなかった。水臭いジューゾー君へと募る怒りは、先輩の間抜け面に叩き込んでおいた。


 今も、不躾な先輩に対する怒りを、先輩の阿呆面に叩き込んでやりたい。その衝動は、スクワットのペースをあげることで紛らす。そうしながら、聞き捨てならない一言にはきっちりと言及しておく。


「誰が禁欲主義者だ、誰が」


 さっき、先輩はプルトーを禁欲主義者といった。魔人に対する最悪の蔑称である。お前は弱いと罵倒しているのと同じことだ。

 

この、いつ何時も、頭の中が卑猥なことでいっぱいにしている先輩が、どういうつもりでこの憤怒の龍プルトー・ラースを禁欲主義者呼ばわりしたのか知らないが、腹が立つ。我が物顔で長椅子に寝そべる先輩の、憎々しくも見事なシックスパックに、ゴーレムの平均体重と同じ重量の鉄亜鈴を落としてやった。先輩が気持ち悪い悲鳴を上げる。


「アアンッ! そんな、いきなり……太くて硬いもので、ボクのお腹、ズンズンしちゃう!? びっくりしっちゃった! びっくりして気持ち良くなっちゃった! ほら、ボクを見てごらん、すごいでしょ? ほらほら、触ってごらん! ちょっと、ちょっとだけ! そんなものより、太くて硬くて、おまけに熱くてすごいだろ! あのね、ボクね、プルプルにズコパコされるより、プルプルをズコパコしたいんだ! ボクに任せて貰えたら、うんと気持ち良くしてあげる! いつもはツンとお澄まししてお高くとまってるプルプルの処女を、グチョグチョに濡らしてトロトロに蕩かして、熟れ熟れにしてあげる。万年発情アヘアヘド淫乱にしてあげるからね!」

「先輩は白痴の色情狂ですから、ご存じないかもしれませんが、これは鉄亜鈴という、筋肉を鍛錬する為に用いられる体操器具です。下劣な色魔には無用の長物でしょうね。そうだ、先輩。せっかくですから、今日はこの鉄亜鈴を、テメェの汚ぇ汚ぇケツ穴に突っ込んで、腹を突き破って差し上げましょうか?」


 腰をつきだした体勢で、陸に打ち上げられた魚人のように跳ね回る先輩を冷ややかに見下ろして、プルトーは千切って投げるように言った。気づきたく無かったが、気づかずにはいられない程に、先輩の股座がいきり立っている。パツパツの皮パンツを押し上げている。なんておぞましい。即刻、謎の突然死を迎えてくれないだろうか。そうすれば、ジューゾー君に後ろめたいことはなにもないのに。


先輩の話しはスラングや専門用語が多くてさっぱりわからない。会話で他魔人を煙に巻く癖があるのだ。拾い上げた鉄亜鈴と先輩を見比べる。


 こんなもの、尻の穴には入らない。先輩は男好きの色情狂だから、尻の穴がガバガバなのかもしれないけれど。良くわからないけれど、そう言うものらしいから。もし、入らなかったら入らなかったで、切り裂いてやれば良いだろう。


 プルトーが本気で実行しようと、思案している内容を知ってか知らずか、先輩は上体を起こすと、蒼褪めることも頬を赤らめることもなく、あっけらかんとして笑った。


「んもう、プルプルったら、そればっかり。SMはボクも大好きな遊びだけど、痛いばっかりじゃ飽きちゃうぞ。それに、ボクはタチよりのリバだから、どっちかと言うと、責めたい方なんだ」

「そうでしょうとも。プレイでも何でもない、純粋無雑の暴力ですからね」


 プルトーはイライラして頭をふる。タチだのリバだの、先輩の言うことはやっぱりよくわからない。


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