心のセカイ
掲載日:2018/01/03
そこは見渡す限り一面の草原だった。
そこにぽつんと佇む腰ほどの高さの丸みを帯びた石に
背を預ける様に僕は腰を下ろしていた。
緩やかな風が吹く。
草原が静かに靡いた。
僕は天を見上げた。
雲一つない空である。えも言えぬ青であった。
ふぅーっと空に向かって細い息をゆっくりと吐き出し、
視線を草原に戻す。
先程よりも少し強い風が僕の頬を撫で、
草の間をするりするりと駆け抜けていった。
これは波だ。
僕はそう思った。
風は弱く吹く。かと思えば急に強く吹いたりもする。
草原も風の吹くままに揺れ靡く。
決められた形の無い、自然が刻むリズム。
その波を僕は感じた。
あぁ、そうだったのか。否、そうだったのだ。
僕はこの波を知っている。
この風が何処から来て何処に向かうのかを、
僕は知っていたのだ。
僕のことを何も知らない僕は、確かに知っていたのだ。
僕は静かに目を閉じた。
僕はゆっくりゆっくりと目を開いた。
風の波はもう消え去っていた。
草原の揺らめきも消え去っていた。
僕は石から背を離し立ち上がった。
なんだか眩しいような、ポカポカする様な感じがした。
僕は歩み始めた。
確かなその一歩を。




