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心のセカイ

作者: 夕霧

 

そこは見渡す限り一面の草原だった。

そこにぽつんと佇む腰ほどの高さの丸みを帯びた石に

背を預ける様に僕は腰を下ろしていた。


緩やかな風が吹く。


草原が静かに靡いた。

僕は天を見上げた。

雲一つない空である。えも言えぬ青であった。


ふぅーっと空に向かって細い息をゆっくりと吐き出し、

視線を草原に戻す。

先程よりも少し強い風が僕の頬を撫で、

草の間をするりするりと駆け抜けていった。


これは波だ。

僕はそう思った。


風は弱く吹く。かと思えば急に強く吹いたりもする。

草原も風の吹くままに揺れ靡く。


決められた形の無い、自然が刻むリズム。

その波を僕は感じた。


あぁ、そうだったのか。否、そうだったのだ。


僕はこの波を知っている。

この風が何処から来て何処に向かうのかを、

僕は知っていたのだ。


僕のことを何も知らない僕は、確かに知っていたのだ。


僕は静かに目を閉じた。

僕はゆっくりゆっくりと目を開いた。


風の波はもう消え去っていた。

草原の揺らめきも消え去っていた。


僕は石から背を離し立ち上がった。

なんだか眩しいような、ポカポカする様な感じがした。


僕は歩み始めた。

確かなその一歩を。
















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