第1章 秘密の住処 第8話 牢屋への道
「あのう、どこにいくんですか?」
ロバートと和哉は先程とはまったく違う道を歩いていた。まるで迷路のように道が何度も分かれ窓もない細く暗い道である。
「どこって? お前が腹を減ったから飯を食わせろだとか言ってきたから食堂に連れて行こうとしていたんだが」
ロバートは眠そうに欠伸を殺しながら答えた。
「......俺の妹はどうするつもりですか? 連れて行ってくれないんですか? 妹もほとんど飲まず食わずでいてあの寒く汚い牢の中で腹を空かしていると思うんですけど」
「あっ...」
ロバートは和哉の言葉を聞き、ハッとし小さな声が漏れた。
こいつ忘れてたな。
なんだよ、さっきは家族愛だか、なんだか言ってカッコいいことほざいていたくせに実際には夢のこと忘れてんじゃねえか。
和哉からすると自分が飲まず食わずでいることより夢が腹を空かしているこの状況では夢のほうが何倍も大事である。。そう思っている中、夢のことも知っているロバートが夢を忘れていたなんてロバートへの殺意を覚えそうになるほど心中穏やかでなかった。これぞ兄の愛である。
「忘れるわけないだろう。ハハハ」
ロバートの乾いた笑いが狭い道にこだまする。
「いいからついてこい。お前達の牢屋はこっちからでも行けるんだ」
ロバートはこの時入り組んだ迷路のような道に助けられていた。
この時、和哉はロバートと夢がいる牢屋に遠回りで向かいながら戻るときに状況を整理していた。
向こうは自分が敵ではないということは理解してくれたようではあったが和哉側からすると昨日あの獣から助けてもらったとしてもその後気絶させられ牢屋に囚われた。まだ信用ができない。いざ、夢と合流したら再び牢屋に入れられる可能性だってある。
整理していくうちに和哉が特に気味悪く覚えたのは急にこのロバートという男が日本語で話を始めたことだ。そのくせに日本という国については初めて聞いたぞという顔つきである。
明らかにおかしい。おかしすぎる。日本語は基本的に日本の国土がある地域でしか話されていない。確かに日本国外でも少ない人数であるが日本国を話せる人はいる。
しかしそれは日本で働いていたことがあったりアニメや漫画などのジャパニーズカルチャーにハマり日本語に興味が生まれ勉強し話せるようになったという場合が殆どである。言うならば日本という国を知らず日本語を話せるようになるわけがない。そうあり得ないのだ。
和哉は色々な案を推理してみた。色々と言っても時間は牢屋までの10分にも満たない時間であり頭の中に残るのはひとつだけだったが。
アルパ王国と言っていたこの国は既に滅んでいるとロバートは言っていた。当てつけかもしれないが一つだけ可能性があるとするならばソ連崩壊と同時に15カ国の国が独立したはずだ。こ時にロシア、ウクライナやアゼルバイジャンが産まれた。連邦というのは国が集まり集合体を築いているものである。その時に小国でソ連連邦の一部でありながらアルパ王国として過ごしていた中、ソ連崩壊と同時に完璧に主権を奪われロシアやウクライナに併合されたと考えるのはどうだろうか...
隠れながら自分達の国を取り戻すために技術力をあげ世界にも公表をしていない高度な技術をもち完璧な自動翻訳機を作り上げているとしたら。
...しかし考えながら和哉は自分の案がこじつけでしかないことはわかっている。廊下の光はロウソクであり、それだけなら、中世をイメージしてオシャレにしているんだ、と言われたら納得はできる。
しかし自分が目を覚ましてから一度も電化製品のようなものは目についていない。それに昨日、和哉達を救ってくれたのは弓矢であったことがどうしてもひっかかる。
今の時代、弓矢なんか使うことはあるのか?
特に民族的なものに詳しいわけではない和哉である。弓矢を使う種族が絶対にいない! とは言い切れるわけではない。しかし銃でさえ国によっては小学生でも持つ時代である。物によったら高価なものでもないはずである。
和哉は自分で考えた案を自分自信で否定してしまっていた。
「ここはどこなんだろうか」
そうこうと考えてるうちに和哉達は牢屋に戻ってきたようである。勿論、中には夢がいる。しかし夢は和哉が戻ってきたことに気づいてる様子はなく顔を下げ身体中の力が抜けていた。
「おい、ついたぞ」
ロバートの姿を見た先程の門番二人は直列不動で動かない。そのうち一人は、顔に傷があるロ殺気を放ちながら和哉に対して睨みを効かしてきたラリーである。
「おにいちゃん戻ってきた...良かった......」
ロバートの声に気づき顔を上げそう静かに呟いた。目には涙を浮かべ声は微かに震えていた。
高校二年生である。大人びたことは言うことはあっても決して大人ではない。まだ誰かが守ってやらないといけない歳である。
そんな歳である夢は牢屋で目を覚まし唯一の心の拠り所である兄はすぐに連れて行かれた。
何も食べていないことなどより誰もいない孤独の方が彼女の精神状態にはきつかっただろうり
「ロバートさん、開けてください」
「...おい、開けろこの扉」
「いいんですか?」
驚いた顔でラリーはロバートに聞き返した
「こいつらは闇族ではないことはわかった。
だから大丈夫だ」
「...わかりました......」
ラリーは納得はしていない雰囲気を出しながらもロバートの命令に従いポケットから寂れた古鍵を取り出すと牢屋の鍵口に入れると回した。
ガッシャン
牢屋が開くと同時に夢は飛び出してきて和哉の胸に飛び込んだ
「怖かった、グスッ、怖かったよ」
普段の和哉であれば夢に抱きつかれるなんて超一大イベントニヤニヤが止まらないだろう。
しかし今はそんなことよりも夢が如何に恐怖の中、牢屋で一人で待ち続けていたことがわかっていた。和哉は夢を抱きしめながら耳元で優しく声を掛けてあげていた。
「大丈夫だもう。お兄ちゃんがいるから。すぐに戻ってくるって言ったろう」
「うん。知ってる。でもすごい怖かったんだもん」
夢は涙を止め、和らいだ笑顔で和哉の胸の中に収まっていた。
ロバートはこの状況で
「やっぱり、家族っていいなあ」
としみじみ感じていた。さすが情に熱い漢だ。
少し遅くなりました!申し訳ありません。
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