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異世界に妹と行ったらなぜかレジスタンスの一員に  作者: 佐々木ミナミ
秘密の住処
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第1章 秘密の住処 第5話 リアル

 会議室の中は静寂に包まれていた。和哉はさっきまでの涼しい顔つきとは取って代わり額に大粒な汗をかいていた。


 さっきまで会話ができなかった人間がいきなり自分の母国語で話しかけてきたんだ。誰だって戸惑うであろう。

 それに加え、お前は何者だ? 人族? 闇族?

 意味がわからない。

 そんな質問に頭の中は混乱し和哉は相手の質問の意味が理解できなかったため答えることができない。代わりに自分の疑問を目の前の男に尋ねてみた。


「--日本語話せたんですか...?」

「黙れ。質問に答えろ。お前は人族か? 闇族か?」


 和哉が尋ねた質問にロバートは顔つきを変えずに無表情で無視をした。そして再度自分の質問を答えるように命令した。


 この親父が何を言いたいのか、質問の内容、なんで日本語を話せるのか、和哉は何一つ理解が追いついていない。しかし確信していることが一つだけあった。それは質問の答えを間違えるとこの男は自分の事を殺す気でもいると言う事だ。ロバートの殺気付いた目からそれだけの覚悟が覗かれた。


 --そうか? 質問に答えろか。全く何を言いたいのかはわからない。でも人族か、闇族かどっちかで答えればいいのだろう? なら俺は人族だ。まず闇族ってなんだよ? 聞いた事ねーよ。あれか? 性格悪いやつのことか? んー、そんな簡単なわけがないな。やばい宗教団体のことでも言うのか?

 それともこの男は西洋人だからキリスト教で仏教とか信仰している人のことを闇族とでも言うのか? いやなんか違うな...

 とりあえず俺は無宗教だ。クリスマスもやるし初詣でだって行く。結婚式は教会派だと思ってるし死んだら寺におそらく入るだろう。

 よし、いいや人族と答えよう。


 頭の回転は早い方であると自負している和哉であるが全く答えはでない。しかしとりあえず自分が闇族でないことだけは確信しているため机に腰掛け無表情で自分の事を見下ろすこの男に答えを述べた。


「人族です」

「証拠は?」


 即答である。


 証拠ときたか、あるわけないだろう。第一に俺は人間の男だ、イタリア人の祖父をもち日本で産まれ日本で健やかに育った健全な人間だ。それが証拠だ? こいつは何をいってやがる。


 さっきから上から見下ろしながら偉そうに意味のわからない質問をしてくるこの男にだんだんと腹の底から苛立ちが募ってきた和哉は半分キレた状態で相手の質問を無視した。


「質問の意味がわかりません。俺は人間です。まず闇族とは何か説明してください」


 このとき和哉はさっきまで無表情であった目の前の男が一瞬、表情を強張られた変化を見逃さなかった。ここはチャンスだと感じた和哉は畳みかねるように会話を続けた。


「いきなり日本語で話しかけてきたこと、何故に僕ら兄妹が牢にいれられているのか、さっき食べさせられた物は何か?質問したいことは山ほどこちらにはあります。まず一つ。答えていただきたい。闇族とはなんですか?」


 恐怖など既になくあったのは苛立ちのみだったため言いたい事を言え晴れやかな顔に変わっていた。ロバートは無表情から変わり驚きが隠せない表情になっていた。それはいきなり捕虜として捕まえた男が偉そうに半ギレで質問を寄越してきた事にじゃない。原因は違うところにあった。


「お前...闇族をしらないのか?」

「だから知らないから教えてくれって言ってんでしょう、バカなんですか」


 まさか、ロバートはアホヅラの捕虜にバカ呼ばわりされるとは思っていなかっただろう。しかしそんなことは闇族を知らないと言っているこの男にはさほど重要で無いようである。二人の立場が変わり今度はロバートが額に汗を書いていた。


「あの、闇族だぞ? --お前、出身は?」

「ほんとにしつこいな。初耳です。何度聞いてるんですか? 出身は東京ですけど」

「東京? 聞いたことがない。 その東京はどこにある?」

「日本の首都ですよ! 首都! 日本の東側にありますね!まず、結構有名ですよ!ローマとかニューヨークと同じくらい!! 」


「お前はさっきから何いっている? ローマ?ニューヨーク? とりあえずお前の国は日本というのか? その日本という国の東京という街の出身なんだな?」


和哉の顔が青ざめていく

こいつは何をいってやがる。ローマもニューヨークも東京も知らず、日本も知らないだと? じゃあ、なんで日本語話してやがる。おかしすぎる。いや、おかしいのは今だけじゃないか... 飛行機に乗っていたのに俺と夢だけ放り出されていたこと。あの狼みたいな動物。助けてくれたはずのあのお姉さんが急に敵を見る目で俺たちを見て殴って気を失わせたこと。言葉が通じず急に話し始めたくせに日本を知らないこの男。闇族。日本も中国も知らないこの男...


「じゃあ、ここはなんていう国なんですか?」

 和哉の声は恐怖で震えていた。しかしロバートからの返事は和哉が想像していた現実より何倍も辛辣なものだった。


「......アルパ王国だ。......いや既に国など無いに等しいか」


「...え?」


「我らアルパ王国は闇族に亡ぼされている」


 ロバートは静かに悲しそうに呟いた、

読んでいただきありがとうございます! 第6話は明日の昼予定してます。 感想、アドバイス等お待ちしております。

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