第1章 秘密の住処 第1話 謎の森
「ん......ここわ?」
どうなってるんだ? おかしい。思いだせ......そうだ。確かゆめとイタリアに向かう途中で飛行機のなかで寝たんだよな?
そうだ。じゃあ、なんで俺は今こんなジャングルみたいなところで寝てたんだ?
あ!ゆめは!ゆめはどこにいる?
「おい!ゆめ!!いるか!!いるなら返事しろ!!ゆめ!!!」
「ん...お、お兄ちゃん」
ゆめの声だ、どこだ?
あのデカイ木の裏か? 立ち上がるのも一苦労だ、身体が重い。とりあえずゆめのもとに行かなければ...
「ゆめ!! 大丈夫か!?」
「うん、なんとか...」
よかった。とりあえずゆめは無事か。--身体の怪我も無さそうだ。
それにしても妙だ。いや、妙とかそんなレベルじゃない。ここはどこなんだ? どこかのジャングルなのか? いや、ジャングルにしてはおかしい。ジャングルは熱帯地方、赤道近くだから暑いはずだ。じゃあ、森か。
「お兄ちゃん...ここはどこ?」
「わからない...どこかの森だと思う。ゆめ何か知らないか?俺は飛行機で寝た後、起きたらここにいたんだ」
「お兄ちゃんも? 私もあの後一人で暇で映画とか見てたけどつまらなくて寝ちゃった。そしたらここに...あ!! スマホは!?連絡とれるんじゃない!? --圏外だ...」
「ゆめ、今、何時の何日になってる?」
「えーと、ちょっと待ってね。いま、8月28日の昼の1時みたい」
俺らが飛行機に乗ったのが27日の昼過ぎだからちょうど1日経ってるのか...いつから俺たちがここにいるのかも原因もすべてわからない。
「お兄ちゃん、大丈夫かな...」
そうだ。とりあえずゆめがいるんだ。こいつを守らないと。
「大丈夫だ、お兄ちゃんがいるだろう」
「うん」
原因を考えても今はしょうがない。
とりあえず今俺たちが持っているものはなんだ?俺のポケットに入ってるのはスマホとライターとタバコぐらいか...あと財布とパスポート。この状況でライター持ってるのは本当に運が良かった。この禁煙ブームのなかで喫煙者になって本当に良かった。
「ゆめ、お前は何を持ってる?」
「私はパスポートとお金とスマホと飴ちゃん3つかな」
飴ちゃんって、変なとこおばちゃんくさいんだよなこいつ。でも食料、水ゼロのこの状況にしたら唯一命を繋げる食料だ。
「飴は大事にとっておくとしてとりあえずスマホは圏外みたいだからお互い電源を切ろう。どっかの街へ行けて電波が復活したとにに連絡をとれるように」
「わかった」
なんでこんなことになったのかは、今はわからない。飛行機が墜落したのか? ハイジャック犯が現れて拉致られたか?いやそしたら周りに飛行機の残骸が残っているはずだし拉致られたのだとしてもこんな縄もされず放置されるはずがない。
それにそもそもなぜ俺らだけなんだ?飛行機に乗っていた他の人たちはどうした?
「お兄ちゃん、どうすればいいの?」
そうだ今おれが原因とか考えてもしょうがないだろう。生きるために何をすればいいか考えないと。
「よし、とりあえず水を確保しよう。人間は食料がなくても数週間は大丈夫だが水がなければ3日ともたないって聞いたことがある! 今のところ、原因は全くわからないが黙っていてもしょうがない。少し待てば絶対救助にくる。それまで耐えよう」
「うん、わかった。でも水どこにあるかわかるの?」
「安心しろ! わからない!」
「...っ...」
やばいぞ、少しでも和ませようとしてみたが逆効果だ、ゆめが泣きそうじゃないか。
「安心しろ! 川が見つからなくても水の作り方はゲームでみたことがある。とりあえず今俺たちが居るところに目印をつけておこう。--この尖った石でゆめが倒れていた木に付けてと」
「なんで? 」
「これもゲームだが漫画で見たことがあるが俺らが遭難したところからあまり動かないほうがいいって見たことがある。そこを目指して救助隊が来たときに行き違いになったら困るだろう」
「確かに... お兄ちゃんの持ってる知識役に立つときあると思わなかった、私」
なんだこいつバカにしてるのか?まあ、可愛いから許そう。
「で、お兄ちゃん水の作り方ってどうやるの?」
ライターはポケットのなかにあったことだし一番手っ取り早いのは雪があればいいんだけど、雪はないしな。でも雪があるぐらい寒かったら凍死の危険があったから逆によかったか。気温は低いが凍死するような気温でもないし。
「よし。地面は乾いてはないしここは雨は降る地域だと思う。川を探しつつ、もし無くてもなんとかなるはずだ。本当はペットボトルがあればいいんだけどないなら、岩からポタポタと流れる水を探そう。それに紐を設置して、その紐の先から垂れた水を飲むといいはずだ。紐がある程度水をろ過してくれるからなんとかなるって聞いたことがある。紐はおれの服についてるからそれを使おう」
「へー! すごい!! 20へーあげる!!」
「どうも...」
...古すぎだろこいつ、おれらが小学生の時流行ったネタだぞ。まあ、ゆめに褒められるのは素直にうれしいけどな!
「とにかく絶対に逸れないように歩こう。この森の中じゃ逸れたら終わりだ」
「わかった!どっちに歩く?」
「なんか暖かそうだし南でいこう」
「くすっ」
「どうした?なんかあったか?」
「いや、南に行く理由が面白いなーって。でもどっちが南? あ! 太陽をつかうのか!今は昼の1時すぎだし」
「昔の人類、旧人間たちはそうしただろう。しかしおれたちは21世紀最大の発明スマホがある。これで方角がわかる。こうなったら真南に進んでやろう。いくぞー!!」
「おー!!」
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かれこれ五時間は歩いてる。太陽は沈みかけて赤く染まってきている。川がないどころか水が滴ってる岩一つない。いやこの間何一つ景色が変わらないのである。--それに人間が作ったゴミが捨てられていないってことはこの近くは人間がいないってことだろう。キツイな。
「お兄ちゃん...」
「どうした? 疲れたか? でも、もう少し頑張るしかないぞ。どっちにしても暗くなるまではがんば」
「ちがう、静かにして」
「あ、はい」
怒られた...お兄ちゃんショックだ...
--ん? なんの音だ? 水が流れる音? そうか!!
「川だ! どっちから聞こえる?」
「多分このまま南で大丈夫だと思う!」
「よしいくぞ!」
よかった、これで少しは命がつながる
「お兄ちゃん! あったよ! 川だ!!」
よし!! --いや、待て。
なんだ?あの動物は?
「止まれ、ゆめ」
「え? なんで? 早くいこうよ」
「あれ見てみろよ」
犬か? いや、小さすぎる。狼? 違う。似てるけど絶対違う。
あれだ! も◯のけ姫のヒロインが飼っていた狼だっけ? 結果狼になっちゃうか。まあ、それと似てる。真っ白だ。なんだあんな生物いるのか? 気候的にもロシアかここわ?
ロシアだったらあんなでかい国だしあんな生物いてもおかしくないか。この森といい気温が低いのもロシアな近い気がする。
「怖いよ、お兄ちゃん」
まあ、あの狼は川の反対側にいる。この川は流れも急だし襲ってくることはないだろう。
「多分大丈夫だろう。反対岸だし。それでも静かに水飲もう。あいつを刺激しないように。ゆめ先飲んでいいぞ。おれはあの狼見ておくから」
「うん、わかった」
あの狼はそれにしてもでかいな。熊ぐらいあるんじゃないか? よし、水を飲み終えたか。よし、頼むからこのまま引き下がって......何してんだあいつ? なんでこっち向かってきてんだよ。この急流だぞ!
「おい! ゆめ!! 顔上げろ!!」
「どうしたの!?
きゃー!!!なんでこっきてるの!?」
「知らねーよ! 走るぞ!!」
「走るってどっちに!?」
「森の中だ! 木が邪魔で向こうも全速力でこれないだろう! いまは川のおかげでゆっくり歩いてるうちに距離をあけて今のうちに逃げるぞ! 早く捕まれ、行くぞ!」
なんでこっちきてんだ? まあ、たぶん俺らをエサだと思ってるんだろうな。あ、野生動物見つけたときに走るのはだめなんだっけ? いや、あいつはいま川を渡ってる最中だ、このうちに引き離せば大丈夫だ。
「お兄ちゃん!!あの動物こっちきた!!
走り出したよ!!
--やばい、速い!!追いつかれる!!」
「いいから黙って走れ!!」
やばいな、あの狼早すぎる。森の木を簡単にかわしてやがる。やばいこのままだとゆめが食われる。--そうだ! 動物は火を恐れるはずだ。
「ゆめ! おれの背中に隠れろ!!」
「え!?うん!!」
ライターぐらいの火じゃ、足りないかもしれないけどやるしかない。やらなきゃ食われて終わる。
ーシュパッー
どうだこれで......
ーグォグォグォー
威嚇はすごいが止まった。止まりつづけてくれ。そして引き返せ。頼む
ーグォーーーンー
だめだ、来た、食われる......
--俺が食われればゆめだけでも逃げれるか。突進するか...
「ゆめ逃げろ!」
「え?」
「こいよ!!俺を食えー!!!」
「待って!お兄ちゃん!」
--風?
ープスー
弓??弓だ、あの風はじゃあ弓が通り過ぎた風?
--狼が驚いてる。それに急いで引き返した
--なにが起こったんだ?