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チョコは値段やないで

「はいチョコ!」


ホタルはバラバラと、一個十何円の四角いチョコを(まなぶ)の膝の上に落とした。


「……なに?」


学は読んでいた漫画の開いたページにもチョコが落ちたので、不機嫌にホタルを見上げる。


「バレンタインや、バレンタイン!」


ホタルも明らかに怒っている時の目つきで、学を見下ろしていた。


「なんやねん!」


漫画を揺さぶって、ポロポロとチョコを落とし学はまたページに目線をおとす。


「あれ?あれあれ?ありがとうは?かわいい妻からバレンタインのチョコもろうて、ありがとうのあ、も言わんのかい!」


すかさずホタルが学にヘッドロックをかけた。


「やめろー!」


学が足をバタつかせ、ホタルの細く締め付ける腕を外そうともがく。


「昨日、私が作った弁当忘れて行きましたなぁ!せっかく四時起きで作った愛妻弁当や!」


ギリギリと、締め付けがきつくなる。


「あれは悪かった言うてるやろ!慌ててたんや!」


力では負けまいと、学が身体を跳ねさせホタルの力を分散し、その隙に抜け出した。


「あんたが作れ言うたんやで!自分で言うとって忘れたら世話ないわな!それに悪かったやないで、ごめんなさいやろ!」


すかさずホタルが学のみぞおちへ自分の頭を突っ込んだ。


「ぐはぁっ!」


学はたまらず床へうずくまる。


「もう一生弁当作ったらんからな!おぼえときや!」


乱れた髪を直しながら、唾でも吐き出さんばかりの勢いでホタルが学に言い捨てる。


「……ごめんて、ごめんなさい」


学が涙目でホタルを見上げて謝る。


「やっと言うたな」


ホタルのさっきまでの般若の顔が、まるで少女のような嬉しそうな笑顔に豹変する。


「……はい」


学はついドキッとしてしまい、観念してしまう。


ホタルは床に散らばったチョコをかき集め、一つ、包みを開けて自分の口にくわえた。


「ふぁい、ほぉーほ(はい、どーぞ)」


ホタルは目を閉じて、学に唇付きのチョコを差し出す。


「………」


学はよっぽどスルーしてやろうかと思ったが、さっきのホタルの笑顔がまた見られると思うと目を閉じてチョコを唇ごと食べるのだった。


チョコが溶けてなくなり唇を離すと、笑顔よりもおいしそうなうっとりとしたホタルの桃色の表情を学は見ることができて、もう一つチョコの包みを開けた。


「……学、ありがとうは?」


「……ありがとうございます」

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