表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

友チョコ

「友チョコ友チョコ」


卓球部の先輩である彼は、いつもの明るく軽いノリで昼休みの人気のない屋上前の踊場で、チョコレートを渡してきた。


透明な袋に入った友チョコなるものは、明らかに手作りっぽい。


いびつな丸いチョコレートの団子。

トリュフだっけか?


「ちょっとちょっとー、そんな顔しないで、友チョコだっつってんでしょ!」


「……はぁ……」


今日は男の人からチョコレートをもらう日だったかな?と私はふと、疑問に思う。


「ねえ、よかったら今、食べてみてよ」


「今、ですか?」


「うん。あ!無理にとは言わないけど」


そう言いながらも、先輩の目は期待に輝いている。

断ることは私のメンタルではできない。


「分かりました……」


「え!ほんとに?」


「はい」


私は階段に腰掛けて、包みを慎重に開ける。

先輩も私の隣に座って、その様子を固唾を飲んで見ていた。

先輩の心臓の音が聞こえるような緊張が私にも伝染する。


一つ、指でつまみ口の中へ入れた。

男の人の手作りした物を生まれて初めて食べた。


先輩の作ったチョコは甘さがベタベタとまとわりつき、溶けた後もしつこく舌や喉にへばりついている。


「どう?」


先輩がはち切れそうな期待を、穢れなきまなこに宿していた。


「お、おいしいです」


「ほんとー!マジで?」


「はい、こんなの初めてです」


「……よかったー!よかったー!」


先輩がどさくさに紛れて、私の肩に頭を預けてきた。


「よかったー…….」


えぐえぐと嗚咽を漏らして先輩が肩を揺らす。


泣いておる……いつも笑顔の先輩が泣いておるぞ。


「泣かないでください」


制服が汚れます、とは言わない。


「うえーん!」


先輩は私の言葉をどうやら誤解して受け取ったらしく、さらに泣き出し、私を抱きしめた。


「先輩、先輩……」


がっちりホールドされた私は抜け出すことを諦めて、先輩の後頭部をポンポンとしてあげる。


先輩を突き飛ばすことは、私のメンタルでは……できない。


先輩、友チョコって泣くほど重いものだったんですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ