アンブレラ
Ⅰ.二人のアンブレラ
連れ添う二人の
アンブレラを
不意に風がぽうんと飛ばしました
濡れるしかないんだね
そうね 私たち
若いころのモノクロームの写真に
から笑いされたから
君は鏡の前で口紅を
とっかえひっかえ塗りたくるの
僕ときたら
ヌイグルミに針を刺す
ぐらいの残酷さで
そんな君をただ見ています
裂けた下着から
現実という明日が見える
連れ添う二人の
吐息は白くて
今朝もどこかに眠る
赤いばらを
探すしかないんだね
そうね 私たち
Ⅱ.秋のアンブレラ
秋の野草が咲いたら
ワンダーフォーゲルが飛び立つ
手を振って
想い出に手を振って
おしゃべりな花たちはいつも
いつか果物になる日の話題で
語り合って気取って話し合って
不思議の森を歩くと
湖の魚が泡をつぶやく
火山が燃え、夢のようにたぎり
サンドウィッチをお弁当にもって
不思議の森を歩くと
ワンダーフォーゲルが飛び立つ
アンブレラが吹き飛ぶ
最後まで目を通してくださってありがとうございます。今後の創作活動の励みとなりますので、評価などよろしくお願いいたします。