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冷たい風に 

冷たい青 

真黒な瞳に

映る私は 

どんな風に見えていますか? 

 

暗めな青のロングコートに 

グレーのマフラー 

あなたによく似合っていたよ 

 

あなたとまだ会えた最後の日 

 

寒かったね 

あの日は 

 

高校三年の冬 

 

「ひろー、久しぶりじゃん!!今、一人???」 

 

女の子二人が 

あなたに声をかける 

 

「一人じゃないよ、ふたりだよ」 

 

女の子二人は目を丸くしていた 

 

「ひろ、彼女できたんだ」 

 

彼は何も言わなかった 

 

私の冷たい手を優しく握る 

 

女の子の方向を一切見ずに 

あなたは歩きだした 

 

「ばいばい」 

握った手とは逆の手で 

手を振った 

 

「ごめん」  

彼はあれから私を一度も見ない 

 

「ううん」 

私は少し下を見た 

 

彼は急に止まって 

私を見つめる 

 

「寒いから中に入ろっか」 

 

「うん」 

 

私たちは  

ひろの家に入った 

 

「コーヒーがいい?それとも紅茶?ミルクティー好きだったよね」 

 

「ねぇ。ひろ」 

 

「あーわかった!ココアの気分だった?」 

 

「ひろ!」 

 

「そんな怒んないでよ、まだ怒ってる?」 

 

「違うの」 

 

「うん、そっか」 

 

私はずっとあなたに言えないことがあった 

今日はあなたとばいばいする日 

 

ひろもわかっている 

きっとね 

 

「ひろ、わたしね」 

 

「ねーココア入れたよ、寒かったでしょ?はやく飲んで」 

 

「聞いてよ、ひろ」 

 

「俺は別れないよ、絶対別れない」 

 

「でも、わたし、もう、ひろのこと」 

 

「好きじゃなくたっていい、傷ついたっていい、俺のことなんかどうだっていい」 

 

「それじゃひろが」 

 

「好きだよ、まり」 

 

「このままじゃだめだよ」 

 

「俺がいいって言ってんだ、いいんだよ」 

 

「よくないよ!」

 

「まり、疲れたよね。一緒に寝よ」 

  

 

ひろと出会う日 

 

私はずっと見つめていることしかできなかった 

先輩に勇気を出して告白した 

でも、うまくいかなくて 

 

その日はずっと泣いてた 

 

「大丈夫?」 

 

ひろは泣き崩れている私の視線に合わせて 

しゃがんだ 

わたしの髪をなでるように   

優しく触れた 

 

私もひろも何も言わず 

ただ、一緒にいた 

 

「これ、飲む?」 

彼は出したのはぬるくなったミルクティーだった 

 

「ありがと」 

 

「どういたしまして」 

そういって彼は私の隣に座った 

 

「どうして?」 

 

「ん?あーなんかね、うーん、ほっとけなかったんだよね」 

ひろはそう言って無邪気な笑顔を見せた 

 

意地っ張りで 

強がりで 

素直になれなくて 

 

そんなんだから 

友達すらもいなくて 

 

そんな話もひろには 

何にも気にせず 

話してた 

 

ひろといる私は 

素直になれた  

 

「じゃあ、まりの一番最初の友達は俺な!」 

 

彼はよく笑う人だった  

 

 

隣で眠るあなたを見つめて 

体を起こした 

 

「まり、いかないで」 

 

起こしたかと思ったら 

彼はまた眠りついていた 

   

「寝言か」 


どうしたらいいのかな 

ねえ、ひろ 

 

 

最近、ひろ 

疲れてんのかな 

すぐ寝ちゃうね 

 

ごめんね 

 

あのころみたいに 

ひろを笑わせてあげれない 

そうさせてるのも私だね 

 

ごめんね、ひろ 

 

また 

 

わたしも眠りについた 

 

 

彼は私と違って 

 

人に囲まれてるような人だった 

誰にでも優しかった 

うん、ただ優しいだけ 

 

そんな風に思うしかなかった 

 

でも、その思考も限界がきて 

嫉妬や束縛という汚い感情に変わっていった 

 

どうして私以外にも優しくするの 

 

なんて日常茶飯事だった 

 

「ひろー今日の髪型どうー??」 

 

「かわいいじゃん」

 

その言葉 

ひろは何にも考えずに 

言ってるのかな 

 

あのころ 

ひろの周りにいる女の子は嫌いだったな 

 

「ひろ」 

 

「ん?」 

 

「かえ」 

 

「ひろー一緒に帰ろーぜ!!」 

 

「おう!」 

 

ひろの友達の声にかき消されて 

私の言葉はひろに届かなかった 

 

「まり、さっきなんか言いかけてなかった?ごめんね、どうしたの?」 

 

「ううん、何でもないよ。じゃあね」 

 

「そっか。じゃあ明日ね」 

  

「うん」 

 

 

我慢なんて 

もうさんざんしたのに 

いつしか 

ひろにも素直になれなくて

言いたいことも言えなくて 

のどの奥で言葉が詰まる 

 

 

「まーりー」 

 

「どうしたの?友達と帰るんじゃなかったの?」 

 

ほんとは少しうれしかったんだ

息を切らして 

ここにいる君が 

私だけを見てる君が 

 

独り占めできてるみたいで 

 

うれしかったんだ 

 

「んーさっき、言いかけてたこと気になって、様子もなんかおかしかったし」 

 

「約束したんだし、戻ったら」 

意地っ張りな私はそんなかわいげのない言葉しか言えない 

 

「うん、でもね。俺がまりと帰りたいんだ。俺と帰りたくないかな」 

 

なんでだろ

あの時の私は言葉が出てこなかったんだ 

嬉しさと寂しさと不安と 

いろんな感情が混ざって 

出てくる言葉が見つからなかったんだ 

 

「そんなに俺と帰りたくなかったかな」 

 

こみあげてくるのは 

涙で 

感情が追いつかなくて  

 

そうじゃないの 

 

そうじゃないんだよ 

 

きっと言いたいことはいっぱいあるのに 

それに似合う言葉が見つからなくて 

どうしていいかずっと 

わかんなかった 

 

「ひろ」 

 

「ん?なに」 

 

「かえり..たいよ」 

 

ひろは私の手をいつものように 

優しく触れた 

 

「冷たいね」 

そう言ってにこっと笑った 

 

「ねーまり、前にさ。俺の初恋の話したの覚えてる?」 

 

「うん」 

 

「あの時の俺はさ、ほんと子供だったんだ。自分のことばっかで何にもしてやれなかった」 

 

「うん」 

 

「だから、俺から離れていった」 

 

「うん」 

 

「言いたいこと言って、いきたいとこ行って、手つなぎたいときにつないで、大好きな人に好きって言いたい」 

 

「うん」 

 

「まりには素直でいたいんだ、わがままでごめんね?」 


いつだって 

ひろは優しかった 

ずっと優しかった 

でも、今はその優しさが一番つらいんだ 

 

高校三年生になった私たちは 

初めて出会ったときよりも 

大人になっていた 

 

付き合ってるのに 

付き合ってないみたいな 

 

きっかけは私の言葉 

 

「他の子と一緒に扱わないで。そんなんで優しくされても全然うれしくないから」 

 

彼は誰にでも優しい 

その優しさはきっと 

私だけものではない 

 




 


  

 

 


 




 


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