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門限

久し振りの更新です

麻黄荘は学生もいる下宿ですから、門限も一応存在しています。その日中です。

まあでも、社会人が大半を占めており、学生といってもバイトで生計を立てている子も多くいるので帰りが遅くなります。

平和な日本と違って数々の修羅場をくぐって来ていますので、そうそう危険はありません。

そんな事情を知ってか知らずか、その日の夕方六時までに「遅くなります」の一言だけでも連絡があれば、門限を破っても何の問題もありません。


case1

   PM23:58

吸血姫「やばいやばいやばいやばい、今日シフト入ってるって連絡するの忘れてたわ。急がなきゃ急がなきゃ急がなきゃ、時間がない。あーもう安請け合いなんてするんじゃなかったわ」

   PM23:59

吸血姫「無理だ……いいえ、だめよ。諦めなきゃ可能性は残ってるはず。例えどんなに低い確率でも、ベストを尽くしなさいっておじいさんとおばあさんが言ってたわ」

   AM0:05

管婆「……それで、他に言うことは?」

吸血姫「……門限やぶってすいませんでした」

管婆「まったく。吸血姫さんにしては珍しいミスでしたし、どうにか間に合わせようと努力していたみたいですし――」

吸血姫「……う、うぅ」

管婆「もう、そんな泣きそうな顔をしないの。折角の美人が台無しよ。ほら、笑って笑って」

吸血姫「は、はい」

管婆「よしよし。でも、何のお咎めなしっていうのもダメよね」

吸血姫「……」

管婆「今回は特別に反省分だけにしてあげます」

吸血姫「え、あ、ありがとうございます」

管婆「感謝してるなら、次からは、遅くなってもいいからちゃんと連絡頂戴ね。心配したんだから」

吸血姫「はい、分かりました」

管婆「明日は、ゆっくりみたいだから、ちゃんと休みなさいよ」

吸血姫「おやすみなさい、おばあさん」

管婆「はい、おやすみなさい」

  「吸血姫さんが無事に帰って来てくれて本当によかったわ」

  (だって、この家にいる人は私と爺さんの孫も同然ですものね)

厳しくも優しい母親みたいなおばあさんの愛情は、しっかりと伝わっているようです。


case2

   AM0:35

管爺「して、吸血鬼さん。言い訳の一つでも用意はしてるんだろうな」

吸血鬼「いや、ねー、ブチョーがーきゅーに飲み行くぞって誘ってきたんですよ」

管爺「そうか」

吸血鬼「そうなんですよ。いやねー、ぼくも言いましたよ。門限があるって。連絡もしてないってちゃーんと言いました。そしたらブチョーなんて言ったと思いますか?」

管爺「なんて言ったんじゃ」

吸血鬼「プププ、『ルールなんてもんは破るためにあるんだ』ですよいやー、良い言葉ですよね」

管爺「ほほー。それはそれは」

吸血鬼「それじゃ、そーいうことで」

管爺「――――罰則は以上でいいかいな」

吸血鬼「あいさー。朝また話を聞きに伺いますであります」

   翌朝 AM4:30 吸血鬼の部屋

――ドゴン

管爺「起きんかバカたれ」

吸血鬼「え、なになに。何ですかおじいさん」

管爺「門限破りの罰則じゃ」

吸血鬼「え、え、え?」

管爺「朝聞きに来ると言っておったのになかなか来ぬからのー。追加じゃ」

吸血鬼「え、え、え!!」

管爺「反省文じゃろ、朝の共同便所の掃除一ヶ月じゃろ、休日の大浴場の掃除三ヶ月じゃろ、明日から晩飯一品抜き半年じゃな」

吸血鬼「そ、そんなぁ。せめて一品抜きは勘弁してくださいよ」

管爺「己の行いを悔やむのじゃな」

その朝、掲示板におじいさんが告げたことが書いてある紙が貼られていました。

そこにある一品抜きの文言を見た住人達は、吸血鬼さんがどんなことをしたのか非常に気になりました。

一品抜きとはそれほどまでに重い罰のようです。


case3

   PM23:45

退魔士「行ってきます」

管爺「気を付けての」

管婆「帰りはいつも位ですか」

退魔士「はい、そうです。いつも遅くまですいません」

管爺「若いもんがいらん気を使うな」

管婆「そうよ。それにまだ帰って来ていない子たちもいるみたいですし」

退魔士「は、ははは。それじゃおやすみなさい」

管爺「うむ……みな本当に足が速いな」

管婆「そうですね。でも、最近の若い子たちはきっとそうなんでしょう」

管爺「そうかそうか。ワシらの孫もきっと速いんじゃろうな」

管婆「ええ、そうでしょう。さて、あと二人ですね」

管爺「そうか。それじゃ、部屋に行って待ちますか」

   AM5:25

退魔士(今週も何事もなくてよかった)

管婆「おや、今日は少し早く終わったみたいね」

退魔士「!? おばあさん。わざわざ出迎えなんてしなくていいって言ってるのに」

管婆「そういうつもりはないのよ。ただ、早く目が覚めちゃうの」

退魔士「ほら、戻って寝ててください」

管婆「そんなこと言っても、これから朝ごはんの準備があるのよね」

退魔士「私も手伝いますから、とりあえず三十分くらい寝てきてください」

   退魔士⊃⊃管婆

管婆「あらあら」

管爺「おや、退魔士さんお帰り」

退魔士「お、おじいさん。なんで起きてるんですか!?」

管爺「ちと、野暮用での」

退魔士「おじいさんも寝ててください」

管爺「な、なんじゃ。どうしたんじゃ」

おじいさんとおばあさんを有無を言わさず布団に入れると、退魔士さんは自分でできるだけの準備を始めました。

準備中の退魔士さん喜色満面でした。


after

吸血鬼「あ、ああ。今日は唐揚げを抜かれた」

吸血姫・退魔士『自業自得です』

吸血鬼「だ、だが、あれは止むにやまれぬ事情が」

――カチッ

『プププ、『ルールなんてもんは破るためにあるんだ』ですよいやー、良い言葉ですよね』

吸血鬼「な、吸血姫、お前それをどこで」

吸血姫「止むにやまれぬ事情があったにせよ、これは当然の報いよねー」

退魔士「ねー」

吸血鬼「く、くそー」

退魔士「吸血姫さんも気を付けてね」

吸血姫「うう、はい。分かってます」

吸血鬼「ほ、ほら、お前だって人のこと言えないだろ」

吸血姫「な、なんですって」

この後、顔に大きな痣を作り頭には無数のたんこぶを作った吸血鬼さんが大浴場を掃除していました。




管婆「今日もみんなちゃんと帰って来てくれて良かったわ」

管爺「ホントじゃよ」

管婆「そういえばお爺さん、吸血鬼さんがあの時言っていた言葉がなぜか出回っているみたいですよ」

管爺「それは……不思議なこともあるもんじゃ」

管婆「そうですね、不思議ですね。あら、茶柱が」

管爺「お、今日は婆さんに良いことがあるかもしれんな」

その日の夕飯には平日にも関わらず住人が全員集まっていました。

おばあさんはとても喜んでいました。

だ、誰かお題をください

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