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第13話「狐娘と怪鳥」 上

 日が高く昇っている中、街道を歩く3人。


 怪鳥によるリタの誘拐騒動から一夜が明け、3人は宿を出て別の街へと向かっていた。


「ヴァムーレン? 何処にありますの、その街は」

「ここから少し離れた南にある大きな街だ。このまま歩いていけば夕刻前には着くだろう」

「目的は?」

「昨日の怪鳥を探す。ヤツの逃げた方向がドンピシャだからな」

「あんなデカブツが街中に隠れているなんて……信じられませんわね」

「街中じゃなくても、その近辺にいる可能性は高いはずだ」

「……?」


 冴月にはまだ理由が飲み込めていなかった。

 

 

 【名無しの姫】の説明はこうだ。

 

・リタを友達と言っていた事から、あの怪鳥も偽装種族(マガイモノ)の可能性が高い。

・あの容姿は愛玩系とは言えず、かといって戦闘力も低いため異端教徒が商品として作った可能性は低い。どちらかといえば素人の突貫工事。

・あんなのが人目につけば下手すりゃ討伐隊が動く。作ったヤツが匿って育てている可能性が高い。


「で、そいつのアジトに行きゃ、何かしらの情報が得られるかもしれないって事だ」 

「雑な理屈ですが、そう言われるとそんな気もしますわね……」

「だろ」


 リタは2人のそば近くで必死に恐怖を押し殺し、その会話を複雑な表情で聞いていた。




 * * *




 ――――『ヴァムーレン』の街。

 

 人、人、人――今までの町や村とは違い商店には人が溢れ、道行く人々にも活気がある。

 

 そんな街の様子を見た冴月が【名無しの姫】に尋ねる。


「で、この雑多の中からどうやって探すんですの?」

「どうもこうも足で探すしかないだろ」

「はぁっ、あなた何も策を持っていないのですか!?」

「そんなものあるワケ無いだろ! 何だよ偉そうに」

「『偉そう』ではなく『偉い』んですの。あなた、もう一度すり潰されたいようですわね」

「ほう……テメェこそ、もういっぺん痛い目に遭いたいようだな」


 いきなり街中で睨み合う【名無しの姫】と冴月。若い女のケンカということもあって気付けば多くの野次馬が出来ている。賭けを始める者まで現れ、ちょっとした見世物状態だ。


 そんな盛り上がった雰囲気をリタの叫び声が一蹴した。


「2人ともやめて下さー――――――――――――いっ!!」


 周りを見渡し、我に返る2人。


「……しょうがないなぁ」 

「――……そ、そうですわね」


 あっさりと引き上げる2人に野次馬からは不満の声があがる。


「なんだよー、つまらねぇなぁ!」 

「早く続きをやれよ姉ちゃん達!」


 冴月はその声の方を向くと足元に転がっていた少し大きめの石を拾い上げ、そしてその石を粉々に握り潰す。


「もっと……続けます?」

「い、いえ……」


 その光景を見た野次馬は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「フン、情けないですわね」

「とにかく、分かれて探そう。リタは危ないから冴月と一緒に動け」

「ハイ」


 そうして3人は二手に分かれて街中に消えていった。




 * * *




 高台にある古びた洋館――。


 リタの叫び声はいくら街中とはいえ人間には聞き取れる距離ではなかった。

 

 だが、同じ偽装種族(マガイモノ)だからだろうか、彼女の耳にははっきりと聞き取れた。

 薄暗い大広間の中で白く輝く――眼。




 * * *




 怪鳥の住処になりそうな建物を探していく【名無しの姫】。

 冴月とリタはしらみつぶしに街の人に話を聞いて歩く。


 ――――徐々に日が傾いてきていた。


 だが、いつまで経っても怪鳥につながる有力な情報は見つからない。


「あのボロ姫の考えに乗ったのが間違いでしたわ……」

「あ!」 

「どうしたんですのリタ」

「今、風に乗って怪鳥の匂いが……」

「分かるんですの?」

「へへっ、狐と混ざっちゃったせいかスゴく鼻が利くんですよ。あ、あと目と耳だって……」


 笑いながら話すリタだが、その表情は寂しげに見えた。

 そんなリタの頭を冴月が軽く撫でる。


「……リタはリタで、頑張ってきたのですね」


 自分を気遣うような冴月に少し驚きつつ、リタは小さく微笑むんだ。

 

 そして匂いをたどって風上へと向かうと、やがて高台が見えてきた。

 

「徐々に匂いが強くなってきています」

「とりあえず、あの高台に行ってみましょうか」


 高台を登っていく2人。


「さ、冴月さんっ! あそこの奥に!」

「お屋敷のようですわね。でも、こんなところにあるなんて……」

「でも、匂いは強くなってきています」

「入るしかなさそうですわね」


 2人の目の前に見えてきた古びた洋館。

 荒れ放題の庭の草木が建物を覆っているため高台に登らなくては存在すら分かりにくくなっている。荒れた庭を分け入り入口の扉へと向かう冴月とリタ。扉を叩くものの反応は無い。


「どうしましょう……」

「どきなさい、リタ」


 ゆっくりと扉に対峙した冴月が軽く手を添え『気』を放つ。

 すると扉は思いっきり奥へと吹っ飛んだ。


「いきますわよ」  

「……は、ハイ……」


 洋館の中へ入って行く冴月。

 その後ろを恐る恐る付いていくリタ。




 ――――その時、大広間の方から嬉しげな声が聞こえた。


「……トもdaチ……きteくレタ」

予定より遅くなってすいません。

で、遅くなったわりにあまり話が進んでいません。

重ねてすいません。

 

次回はバトルに突入します。

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