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ちょっと遅くないか

 その後木村との話し合いで明日の朝、石原美香が通う女子高の星空学園へ行くことにした。


 話によると石原美香は吹奏楽部に所属しており夏休み中も朝、練習があるらしい。


それなら家が隣なんだから時間帯を見計らって家の前で待ち伏せすればいいと言ったのだが不思議なことにそれでも合うことが無いらしい。一度試したのか。まあよく言えば頑張り屋だ。


とりあえず明日の朝、星空学園に現地集合することと集合時間を決めてその日は木村と別れた。


 俺たちも一通り歌い時間が来たのでカラオケボックスを後にした。


 「ありがとうございました」という従業員の声を背に受けカラオケボックスの自動ドアを通り抜ける。


今まで涼しい場所にいたので外の気温が余計に暑く感じられる。時刻は何だかんだで夕方の4時になっていた。


七夕市の中心地に来ているだけあって周囲はまだ人通りが多い。車の通りが多い道路の歩道を歩きながら俺は清一とさっきの出来事について話した。


「なあ、どうして木村を助けようと思ったんだ?そりゃあ気持ちはわからなくはないが」


 清一は少し考えるそぶりをした後、前を向いたまま神妙な面持ちで答えた。


「どうも妙な感じがしたんだ。正信は感じなかったかい?」


 俺は手を顎に当てる。


「確かに言われてみれば感じたな。特に父親がバットを持って木村を追いかけた話のところなんか。普通父親が飛び出してきて追いかけるなんてこと無いだろ。」


 清一がうなずく。


「僕もそこが引っかかったんだ。よっぽどの事だよ父上がバットを持ってくるなんて。」


「まさか木村が本当は何かやったんじゃないか?」


「それも少し考えたんだけど、それだとそもそもこの話を木村氏が僕たちにするメリットがない。もちろんもっと深い意味が隠されてるというのであれば可能性はゼロではない。でも今日の態度を見る限りそれも無そうだけどね。」


 その通りだ。木村の今日の態度を見る限りただの素直になれない純情ボーイにしか見えなかった。


 俺はさらに考えたがすぐに行き詰った。


「まあ、今の情報だけだとまだすんなりゴールとは行きそうにないな。」


 清一がうなずく。


「何にせよ明日の朝調べてみないことには先に進めそうにないね。」


「そうだな。それよりその衣装手に持って帰るのか?」


 清一は幸子衣装を手一杯にのせて歩いている。清一の家まではまだかなりある。


「それもそうだね。仕方ないあまり迷惑を掛けたくは無いのだけど原田さんに迎えに来てもらうよ。」


 そういうと清一はスマホを取り出すため幸子衣装を俺に持つよう頼んだ。幸子衣装はキラキラと光っているので太陽からの照り返しがすさまじい。


夕方とはいえ夏のこの時間帯はまだ日差しが強い。この猛暑の中こんなものを持たされてそれだけで汗が噴き出てくる。清一がスマホを片手に話し始めた。


「あ、原田さん悪いんだけど迎えに来てはくれないだろうか?うん、うん、あ、それだときっと助かると思うよ。ありがとう。よろしくお願いします。」


 話し終わった清一が笑顔でこっちを向く。


「原田さんが清一も一緒に送って行ってくれるんだって。」


 それは本当に助かる。だが…。


「もう俺の家は目の前にあるんだが。」


 何だかんだと話していたのでいつの間にか俺たちは俺の家の前まで来ていた。


 清一は「てへ」とでも言わんばかりに舌を出して頭を掻いた。


 顔がいいからそのポーズは許されるんだぞ。


 俺は今日何回目だかわからないため息をついた。


 

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