風紀委員相談科だよ?
一通り話し終えた木村はソファに深く腰掛けた。
父親に追いかけられたことはあまり思い出したくない出来事だったのか「はぁ」とため息をつき俯いている。
この上追い討ちをかけるのは良くないと思ったが本人も薄々感づいていると思ったので俺は思った事を言う事にした。
「なあ。お前も何となく思ってる事だと思うんだがお前の幼馴染はその…。彼氏が出来たんじゃないか?」
失恋ソングを熱唱していたぐらいだ木村もなんとなく思っていたのだろう。
木村が底なし沼に沈むようにソファに沈み始めた。だが沼から助けたのは意外にも清一だった。
「いや、その可能性は薄いかもしれないね。」
木村は顔を上げ海を割ったモーゼを見るような目で清一を見た。
俺は清一の脇腹を小突き小声で言った。
「おい。あんまり適当な事は言うなよ。」
「大丈夫だよ。」
清一は俺にウインクした後木村に向き直る。
「仮に美香氏に彼氏が出来たとしたら母親にしばらくは会いたくない何て言付けせずに、もう会わないと言うはずだろう?」
言われてみればその通りだ。
誰しも彼氏彼女と別れる前提で付き合う人なんかいないはず。
「しばらく」という事は「しばらく」経過すれば会えるという事なんじゃないか?
木村もその言葉に希望を見出したようで日焼けしているにも関わらず屍のように白かった顔に生気が戻ってきた。
自分では否定しているが完全に美香って子の事が好きなんだな。
もはや隠しきれてもいないので苦笑するしか無かった。
冷静に頭が働いてきたのか木村は考えを口にした。
「だけどそうなると余計に美香の現状がわからないな。一体どういう状況にあるんだあいつは?」
父親がバットを持って飛び出してくるのだ。普通の状況では無さそうではあるが。
流石にそこまではわからないのか清一も首を振るしか無かった。
「わかったありがとう。後は自分で何とかしてみる。今日はその…。みっともない所を見せちまったけど2人に会えて良かった。」
そう爽やかな笑顔で言うと木村はソファから立ち上がった。
だが、帰ろうとする木村の腕をドアに近かった清一が掴んだ。
木村は何事かと清一を振り返った。
「木村氏、ちなみにこれからどうするつもりなんだい?」
「どうするって言ったってまだ何にも考えてないんだが」
「じゃあ僕から助言をすると、美香氏の友人に美香氏の状況を聞くのはどうだろうか?」
木村は少し考えた後そうだな。と清一に言った。
「何なら僕たちも手を貸すけど。」
俺は思わず清一を見た。
だがその横顔がやけに真剣だったので口をつぐんだ。
恐らく何か考えがあるんだろう。
「だけど悪いだろ。こんな個人的なことにまで巻き込んで」
木村が俺と清一を困ったように眉を寄せて言う。
こうなったらしょうがねえ乗りかかった船だ完全にその船に乗ってやる!
俺たちはニヤッと笑う。
「僕たちは風紀委員相談科だよ。」