表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/29

一番聞きたくない言葉

「この話に細かく肉付けしていこう。」


 俺はこくりと頷く。


「雑誌に写真が掲載された石原氏はストーカーの被害に会うようになった。そして脅迫されたんだろう。木村真司に会うなと。他の人にこのことは話すなと。君や正信の出会った葵先輩という人の会話から察するに、もし君に会ったり警察に言ったりしたら君に危害を加えるとでも言われたんだと思う。」


 目に見えぬ犯人に対する怒りがふつふつとこみ上げてくる。


「だがさすがに一人で抱え込めなかった石原氏はご両親には相談した。結果しばらく違う場所から学校へと通うようにした。」


 それで会うことが無くなったんだな。


「鳴海氏に聞いたんだけど石原氏の父上は視力があまり良くないみたいだね。」


「ああ、メガネをかけないとほとんどよく見えないって言ってたな………あ!」


 家倉はニヤッと笑う。


「そうか!俺がバットを持って追いかけられたのは良く見えてないあいつの父さんからストーカーがやってきたと思われたからか!」


「ご明察。」


 なんだか一つ肩の荷が下りた気がした。


 しかしストーカーに思われたのはあまり気持ちよくないな。


 謎は解けたがなんとももやっとしてしまう。


「だけどまだ仮説の域を出なかった。だから物的証拠が欲しかった。」


「それで古村達に見つけてもらったんだな。電柱に設置された監視カメラを。」


「今はハイテクな時代だからね。君と石原氏が接触したかどうか後ろを尾行しながら確認するのは大変だ。それでどこかにカメラでもって思ったんだがまさか当たるとはね。」


 俺は家倉の推理に感服するしかなかった。


 まさか俺が二か月経過しても答えを出せなかった問題にこんなに早く答えを出すなんて。


「ん?ということはこのメモは…。」


 俺は今だに着たままの白いスーツの胸ポケットに隠されていた葵先輩からのメモを改めて読み返した。


『木村君ごめんね。私も本当はこんな事したくないんだけど、でもあなたは非常に危険な状況にあるの。目が覚めたときすごく恥ずかしい状態になってると思うけどいつかわかってもらえる。       葵』


 最初読んだとき全く理解が出来なかったのだが今ならなんとなくわかる。


「つまり葵先輩は石原氏に接触してしまった君を守るためわざと注目を浴びるような状態で放置した。人だかりが出来れば少なくともストーカーは君に危害を加えることが出来ない。」


 それでカー〇ルサ〇ダースの格好をさせられたのか。


 気持ちはわかったがこれまた複雑な思いにならざるを得ない。カー〇ルショックは俺の中で意外と大きかった。


「だけど美香のやつ俺にメールや電話で教えてくれればいいものを。」


 教えてくれたら…。


「教えたら君はどうしてた?」


「そりゃストーカーを捕まえてやるさ。」


 俺は断固とした思いで即答した。


「それを心配したんだよきっと。教えれば君がどうにかしようと動くのはわかってる。でも実際に相手は何をするかわからない、下手をすれば君の命を危険にさらすかもしれない。だから君には言わなかったんだ。」


『なんで、こんな時に言うかな…。』


 最後に聞いた美香の言葉が思い起こされる。


 あいつはどんな気持ちであの言葉を言ったんだろうか。


 突然家倉のスマホの着信音が鳴る。


 液晶画面には「鳴海杏子」の文字が映し出されている。家倉が電話に出る。


「はい、もしもし。うん、うん、やっぱりそうだったんだね。うん、うん、わかったよ。」


「どうやら石原氏の両親がストーカーの被害にあっていることを認めたらしい。」


 スマホの通話を切りながら言った。


「どうやら新聞の切り抜きのようなもので脅迫めいた文章が送られてきていたみたいだ。『木村真司に会ったら奴を殺す』だったり『警察に言ったら周りの人を殺す』といった過激な内容から、どんな時でも監視を続けてるっていう内容の物もあったみたいだ。」


 俺は怒りで我を忘れそうだった。だが冷静にならないとだめだ。感情的になったら相手の思うつぼだ。


 こぶしを握り締め必死に怒りの感情を抑えた。


「家倉、どうしたらいい?あいつを助けるには。」


 助けたい。あいつのもとに駆け付けたい。だがどうすればいい?警察に連絡するか?だが危害が加わるのが俺だけならいい。もし葵先輩やあいつの両親、学校の友人なんかに危害を加えられそうになったら止めるすべがない。


 自問自答を繰り返し、いい手立てが見つからない。家倉も眉間にしわを寄せ手を顎の所へ持っていき次の手立てを考えている様子だ。


 沈黙の中しばらくいるとまた家倉のスマホが鳴り始めた。


 液晶画面を見るとまた鳴海のようだ。家倉がスマホを耳に当てる。


「はいもしもし。………。石原氏がまだ家に帰ってきてない⁉」


 それは今一番聞きたくない知らせだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ