仮説
「厄日ね…。」
杏子がミ○キーの被り物を外しシートにぐったりして言う。
「ま、まあその状態でも子供達の夢を壊さないよう努力したのは正直見直したぜ」
杏子の服は子供達に引っ張られてシワだらけになっている。
「何に対するフォローよ」
杏子が疲れた目で俺を見る。
「確かに」
俺は苦笑いするしかなかった。
しばらく車を走らせていると原田さんが何やら話し始めた。
「はい。はい。わかりましたそこへ向かいます」
どうやら耳につけている無線機のようなもので会話しているのだろう。
「坊ちゃんが古村さんに話を聞きたいらしいので近くのファミリーレストランに寄るよう指示を受けたのですがよろしいですか?」
「俺は構いません、杏子はどうする?」
俺は杏子を見た。
「ここまでやったんだからあの後何があったか聞かないと今夜は寝れないわよ」
「じゃあ決まりだな」
俺たちは近くのファミリーレストランに行く事になった。
しかし…。俺は後ろをちらっと見る。
ミ○ーの被り物を被った清一が見事に馬を乗りこなし後ろをついてきている。
また被り物に細工をしてたのか。
馬に乗りながら原田さんと喋っていたという事はミ○ーの被り物に細工をしているとみて間違い無いだろう。
一体何のためにそんな機能を付けたんだ?
俺は永遠に答えが出ない事を悟り考えるのをやめた。
なんだかんだで時刻は午後2時。昼食をとっていなかった俺たち4人はファミレスに到着するなり遅めの昼食をとる事にした。お腹が減っていたのか食事中はほとんど喋ることもなくそれぞれ食べる事に集中した。
全員の食事が終わり落ち着いた所で清一と杏子が立ち去った後の出来事を話した。
「なるほどね。それで正信と木村君が一緒にいなかったわけだ。」
一通り話を聞き終えた後杏子が言った。
「でも余計にわけがわからなくなってきたわ。どうして美香はそんなに木村君を避けるのかしら?」
「そこなんだよなぁ」
俺は首をかしげるしかなかった。
「どうしました坊ちゃん?」
どう見てもヤクザのような顔をした原田さんは白のタンクトップにジーパン、腰には『家倉八百屋』のエプロンを巻いたいつもの姿に着替え直している。
原田さんが清一の顔を心配そうに見つめた。
清一は顎に手を当てたまま凍ったように硬直している。清一は顎から手を離し口を開いた。
「うん。まだ確証は無いんだけど一つ突拍子も無い仮説が出来上がったんだ。」
「なんだ?その突拍子も無い仮説ってのは?」
俺の頭では次の手が浮かばない。どんな事だろうと今は聞いておきたい気分だった。
清一以外の3人は清一の言葉を待っている。
清一は話し出した。
「その仮説っていうのはね…。」