お姫様
「…世界中の誰よりも君がすきなんだ!ああ、許されないことをしているというのはわかっている。…それでも!まだ…こんなに愛している。こんな僕を、君は、…。もう一度でいいから、ぼくの一生で最後のお願いを聞いてくれはしないだろうか…?」
隣国の王子、アズ王子。本名はアズマール・ベスタールト。
ブロンドの髪に、青の切れ長の瞳。優しげな表情が、まるで白馬の王子とでもいうのが正しいほど王子っぽい。
けっこう人気あるみたいで、世界中から求婚者が来てるらしい。
で、こいつはどんな女性にも振り向かないと有名。
わたしは、今口説かれてる最中。
口説くってか、告白されてフッたらもういちど告白されたみたいな感じ。
「…私、貴方の気持ちにこたえてあげられたらそれが一番だと思うのですけれど…まだ当分はそういうことはできそうにないですわ。だって…わたくし…」
だって…わたくし…、まだ6歳ですもの。
…そりゃね、6歳にしては体が成長しすぎてるけどさ。
19歳が6歳に告るとか、ちょっとやばくない?
えー…、ところで、わたしがどうして6歳という年齢でこんなにいろいろ終わっちゃってる感じの性格かというと…、。
はい、ありきたりの展開かもしれませんがわたし、転生したのです。
亜麻色の髪に、透き通るように白いしみ一つ無い無垢な肌。
海のような青に、どこまでも見通せるようなその瞳には吸い込まれそう。
紅くぷっくりとしたその唇は、まるで蜂蜜でも塗ったかのようにつやつやとしている。
そんな中で、ぴったりとはまるように中心にあるのは高すぎず低すぎずバランスのいい鼻。
柔らかな笑みをその顔に浮かべ、落ち着いた様子のまま冷たくどこかを見ている。
邪魔ではない程度に長いその睫毛は、閉じたときのその美しさの破壊力が半端な物ではない。
無口で無表情だが、池の小鳥や野兎にだけは微笑みかける。
それが、わたしのこの世界での噂だ。
いや、ね?生まれたときから記憶あったし、ご飯とか美味しいけど口に合わないし、ゲームとかできないしつまんないし、しかも何故かわたしこの国のお姫様だし、逃げ出すわけには行かないし…。
外の景色がモロファンタジーだし…見てて飽きないっていうか…自分専用の部屋と庭とかあったら…池とかあったら…見てるしかないよね?てか部屋の中にブランコとかあったらどうするよ。遊ぶしかないでしょ。
わたし…前世では地球の日本の東京のある場所でゲームばっかりやってたぐぅたら女だったから、ゲーム無かったらもう死ぬとか言ってたんだよね…。前世の私よ!ゲームなど無くてもやっていけるぞ!
で、一日中自分の部屋にこもりっきりで自分専用のノートに覚えてる全ての知識を書き残してみたり池をぼーーーっと眺めていたり、手作りの勉強ノートを作って勉強したり、…あ、そういえばこの世界って魔法があるんだよね。
そうそう、魔法をやってみたくて家庭教師を雇ったらそれが変装してたアズ王子だったんだよ。
一国の王子がそんなんでいいのかって思ったけど、その王子がマジで教えるのが上手くてさ。
褒めたら告られたんだ。ほんと、それでいいのか?
ちなみに、魔法は出来るようになったよ?
水の適性があったんだけど、水鉄砲の水を極限まで細く極限まで強くした攻撃魔法とか瞬間移動する魔法とか、…正直言ってどうやってるのかは自分でもよくわかってないのだけれどとりあえず魔法は楽しいわ。
本当は、治癒魔法とかしか覚えちゃいけないんだけどね。でもさ、覚えるっきゃないじゃん?楽しいんだもの。
でも…もう6歳だし…学校に行かなきゃいけないんだよね。
この国では、6歳までは家庭教師を雇わなくてもいいし勉強しなくてもいいし、まあ大抵の家は予習としてやらせてるけどとにかく何にもやらなくてもいいよって感じなの。
でも…でもでも…面倒なことに学校とやらに行かなきゃ行けないの。
まーそろそろ池眺めんのにも飽きてきた頃だけど…ってとこなのでちょうどいいかなーー。
脱力しながら全力で頑張ります。はい。
あー、そうそう、アズ王子は身長は196センチで(大体それくらいってだけ)、体重はごにょにょ。隠す意味無いけどね。
顔だけ見れば、超かっこいい。マジかっこいい。ヤバかつこいい。
でもね…性格がね…タイプじゃないのよ。
わたしのタイプは…頭が良くて、大人の余裕みたいなのがあって、隠れイケメン的なとにかく表に出ない人で、よさをわかってもらえないような人なのだ。
こんな、頭がいいけど性格残念な(そうでもないけど)なんかわからない余裕かましてる大人気スター的な男の人は駄目だね。
あれ、最後のところ意外はあってるジャン。おかしいな。
…まぁ…まだ6歳まで一週間あるし…とりあえず今日はもう寝よ。
「…っおっとっとと、…あぶねー、殺されるところだった」
ガシャン、とガラスを割り大きな音を立てて部屋に入ってきたのは少年で。
まだ、若く見えた。といっても、15歳くらいだ。
わたしは大きな音にびっくりしてそのばで硬直してた。
あれーー?わたし、学校に行くこと恐れてたけど、行けなくなる可能性が出てきたぞー。
「…ん?…お前…誰だ?」
あ、わたしに話しかけてんの?
「……………貴方は」
やっとの思いで口からでた言葉は、自分は名乗らないという選択肢だった。
「俺?……うーん、貴方を助け出しに来た騎士とでも言っておくかな。本当はロクス国の王子だけどさ」
「き、騎士!???」
気がつくとわたしは、氷柱を何本も何本も少年に投げていた。
小さい頃から、騎士は悪い人たちで世界を破滅に追いやっているのだと聞いていたし、有名な魔女に騎士の迎えがあり、騎士によって不幸が訪れるだろうとか言われてたから、体が無意識にやってしまったのだ。
「え、うわっ、えぇ!?」
わたしは魔力切れでそのまま意識を手放した。
騎士への恐怖と、体の疲労感は、わたしの視界を暗く染めていった。
ずっと心の中にあったのは、こんなんでいいのか各国の姫・王子…という気持ちだけだった。




