恐怖の痛み。
もうどうでもいい。
どうでもいいじゃないか。
生きてても結局こうなる。何故自分がこんな目に?
理不尽な世の中だ。
痛い。辛い。苦しい。そんな思いはもうしたくない。
闇を半分住まわせたことで得たこの力があればオレは何でもできるんだ。
もう嫌な思いも、痛い思いも、辛い思いも、苦しい思いも、何もないんだ。
周りから逸脱することで得たこの体は、最高なんだ。
「おもシロくなイナ」
「っ…!っぅあ」
ズキン!
鋭い痛みに思考の渦から意識が戻ってきたようだった。
目前の視界にはあの不気味な人外の顔があった。
無表情だけど何かに冷めたような飽きたような目で自分を見下ろしていた。
自分はいつの間にか地面に寝ていて、あの人外の片足が腹の上に乗っていた。
獣のような鋭い爪が全て腹に突き刺さっていた。
大量の血が腹から流れている。
「ぐ…!ッ!?」
「……?」
いつものように腕を何かの武器に変形させようとして右腕を見た瞬間、声も出ないほどに驚いた。
自分の右腕がなくなっていた。
「嘘…だ、ろ…?ッ!嫌だ!嘘!嘘だ!」
「!それダ。そレがいい」
「うわあああああああ!!!」
喉が張り裂けそうなほどの泣き声を上げてただ目の前で楽しそうに笑う不気味な者に怯えた。
頭の中はもう恐怖と救いを求めることだけしか残っていなかった。
「助けて!助けて!!ごめんなさい!助けて!」
「タノシいナ」
「!!うわあああ!!ッぐああ!」
バキバキバキッと肋骨付近の骨が折れるような何とも言えない音がした。
痛みよりも息ができないことにまた混乱し、全てにおいて自分の感覚と思考は追いついていなかった。
そして視界が暗くなり始めてだんだん見えなくなっていく時、あの冷めた目がまた一瞬見えた。
「おもシロくなイナ」
「……ぐ、ぁ…」
「やめろ!!」
次に自分が見た光景は、ボロボロで傷だらけの堕天使、アルトの諦めることなく戦っている姿だった。