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二つの恐怖。

あれからも逃げ続けた。

それでも追ってくる。

ふらっといなくなってもまた現れる。

両手、両足の爪は獣並に鋭く破壊力も抜群のようだった。


とにかく怖かった。

恐怖感でパニック状態になりながらも逃げることだけを考え続けた。

離れたい。恐い。死んでしまう。

命の危機を感じていた。

容赦のない攻撃と、時折見せる自分だけを狙っているわけでもなさそうな行動。

更に「楽しそうだ」と言ったあとの攻撃スピードの上がり方。

そして、自分が少し反撃して傷を負わせた時の異常なまでの興奮のし方。

攻撃を受けたというのに怒りを爆発させたようには見えず、むしろ声を上げて笑いだし、今度は攻撃のスピードではなく威力が上がったようだった。

攻撃が自分に当たらず、岩や木、地面に当たっても、さっきまでそれほど破壊されることもなかったが、木が倒れたり軽い地割れが当たった場所にできたりと威力が上がったことがわかる。


戦闘には慣れていたし、人間よりも体力等の基礎的なものは高い。

それでも腕や足を変形させて木や岩等をむしりとったものを盾にして攻撃を防いだり、跳躍とステップの切り替え、相手の死角を探すなどして攻撃を必死に回避していた。

こちらが攻撃する暇はほぼない。

あるとすれば、相手がこちらに完全に向かって来ている時だけかもしれない。

相手の死角をとって攻撃しようとしてもすぐに気づかれて、相手がまた攻撃してくる。

首の両側面と左頬の目はちゃんと機能しているようなのだ。

死角のために場所が悪い所にいると今度は自分が危なくなる。


反撃した時は攻撃が回避できそうになく、あの破壊力では受け止めて防いでも結構なダメージになるだろうと思った。

だから咄嗟に自分の体を貫こうと伸ばしてきた不気味な人外の長い右腕を、ハサミのような鋭利な形に変形させた自分の右腕で切り落とそうとしたのだ。

鱗に弾かれているのか、腕を切り落とすことはできなかったが、傷をつけることができたようだった。

ガリガリガリッと音がして相手の動きがいきなり止まった。

見ると黒い鱗が少し削れているように見えた。

相手も鋏まれた自分の右腕を見て、口元を歪ませた。


「アッハハハははハはッ!」


そして笑いだした。


相手の攻撃パターンは主に両手の爪と口の牙、トゲのついている長い尻尾を使う、足で蹴りあげようとしたり、上から潰そうとしたりと結構原始的な攻撃が多く、得物や魔法系をまったく使わない。

相手はこちらの攻撃を回避しようとも防ごうとも思っていないようでただひたすらに攻撃だけをし続けてくる。

距離を置いてこちらの動きを観察してくることもなければ自分が遠くにいても近くにいても関係なく突進してくるか跳躍して上から攻めてくる。

たまに意味なく跳躍しても距離を置くためではなく、こっちが逃げるから追いかけるために使っているか、狙う対象が別の物に逸れてそっちを追いかけているだけのようだった。

止むことのない攻撃に、もう受け止めて防ぐことも不可能なまでに上がった破壊力。

魔法より武器より、単純な攻撃スピードと威力の強さが怖かった。

そして何も恐れぬその行動と、本当に楽しそうに攻撃してくる様は、物理的な怖さではなく精神的な怖さとして感じていた。


どうしたらいいかわからなくなった。

どうして自分はこんな目にあっているのだろうか。

もう疲れた。疲れた。疲れた。

黒く染まっている両腕と両足が霧散し始めて

意識も遠のき始めた。

うっすら見える視界には、左腕から無数の黒い腕が伸び、不気味な人外を拘束していて右腕の方からは無数の黒い針が伸び、拘束していた人外の体のあらゆるところを貫いていた。


「くッはは!ハハハハは!ハはハはハは!あーっハハハはは

ハ!!」


人外の叫ぶような笑い声を最後に、ここで自分の意識は一旦途切れてしまったのだった。

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