いじわる
「う゛〜ん。助けてー頭痛いよー!!ちぃなぁー」
「知らないよ!そもそも、真冬に床でねる日向が悪い!!」
「ちなぁ酷いじゃんかぁ」
「...」
「千那」
そういい、日向は千那に凍てつくような視線を浴びせる。
それに怖じ気つきながらも声を吐き出す。
「25のおっさんが甘えないの」
「ひっど!まだオレ、おっさんじゃないよ!」
「私にとっちゃおっさん!」
「たったの5歳差で?」
「ソファにいないで早く、ベッド行きなさい!」
「運んでって〜♪」
「殴るよ?」
「はーあ。千那のいけずー」
「看病してやんないよ?」
「はーい」
日向がベッドルームへとぼとぼ歩いて行く。その裏で、日向の悪口を心の中で叫ぶ千那。
(このダメ男!)
こんな事になったのも、日向が昨日、テレビ見ながら寝こけたせいだ!
明日は日曜日だったから
って理由で朝っぱらからお酒飲んでばっかで、家に持って帰ってきた事務仕事を私に全部やらせて!
いつもの事とはいえ、流石にムカつく!
あのキラキラとした美顔に思いっきりパンチ食らわしてやりたいわ!
「ちぃなぁ」
腑抜けな声が千那を呼ぶ。千那は、イライラしながら、日向の所へ向かう。
「何?」
「温度計取って?」
真横の棚にある温度計を取ってと言い出す。それを聞いた千那は呆れた様子で答える。
「真横にあるじゃん」
「脇開くと寒いもん」
「はぁ?」
「甘えちゃダメなのー?」
「仕事やってくれてないからね」
にこやかに返す。すると日向はう゛っ。とうめきながらおずおず温度計を取る。
「計り終えたら言ってね!熱はあまり高くないと思うけど。」
「はーい」
カタンと扉を閉めた途端、千那は、崩れ落ちる。
「なんで日向の顔を見ると殴れないんだぁぁぁ」
悔しくて、床をドン
ドンと叩く。
なんだろう?
やっぱり好きだからかな?
あの顔はないよ!!
いつもはへらへら笑ってるのによりによって風邪引くし!
いつも以上に黒髪が似合って見えるし!
ちょっと汗で湿ってる首筋とかマジでヤバい!
あと、ちょっと風邪で赤らんでる顔とかマジどポイントでやらる!
やばっ!妄想半端ない!!私ヤバすぎ!
いやいや。私全然ヤバくないし!
ただ日向が乙ゲーで出てきそうな顔してるから悪いんだよ!
そう!そうなんだよ!私はヤバくないし!!!
そんな事を考えていたら、日向に呼ばれる。
「ちなぁちなぁちなぁ」
「はいっ!」
ビックリして、凛とした声が出る。
「ちなぁ。38℃もあるー」
「嘘!日向大丈夫?辛くない?」
「千那。イキナリ優しくなったね☆」
「////ばかっ!演技だ!!え!ん!ぎ!」
「顔赤いよー?」
日向は
、によによしながら、千那の顔を覗く。
「///それは置いといて!お粥いる?作るけど?」
「お願いします☆」
「じゃあ、ちょっと待っててね?すぐ作るから」
「すぐじゃなくてもいいよ〜♪」
「そぅ?」
「その代わり、作る姿見てていいー?」
「熱上がるよ?」
「拒絶しないんだー」
「だって病人だし」
「じゃあもっと甘えていいー?」
「下がって、仕事してくれたらね」
にこやかに返す(2回目)。
「見るだけは?ダメ?」
「すぐ寝てくれるならいいけど?」
「ホント?」
日向は目を輝かせて言う。
「ホントホント。ちゃんと座っててよ?」
「はーい☆」
(普通の人なら、キモっ!ってなって終わるけど、日向、事務兼モデルだから、カッコ良すぎて断れないー!!)
お粥を作っている間は、日向はしっかり、言うことを聞いて黙って座っていた。
お粥を食べてる最中は、流石オレの彼女〜♪とか言ってたくさん食べてたし、その後もすぐ寝てくれた。
あとは日向が寝ている間に日向が溜めた事務仕事を終わらせるだけ!
(今ネットが使える世の中なのになんで、私の会社は紙なのよ...)
***************
仕事が終わっても、まだ寝ている日向の様子を見に行く千那。
「ひなたぁ?」
まだ寝息をたて、寝ている様子の日向。
「まだ寝てるのかぁ...」
こうして改めて見てみるとやっぱりイケメン。
どうやったら日向みたいな子が生まれるのやら...
熱下がってきてるのかなぁ?
明日、仕事なんだけど...
千那は、日向の黒髪を撫でながらポツリと言う。
「...好きだよ。」
きゃーーーーーーーーーーーーっ!
言っちゃったーーーーーーーーっ/////
日向が起きてたら言え
ない事言っちゃった////
てか、私。日向が寝てると色々イケないネジが外れていくんだなぁ―…。
凄い恥ずかしいんですけど!
まぁ寝てるからいいんだけどさ!
あー。カッコいい。
ホントにカッコいい。
「そういえば、最近キスしてないなぁ。」
寝てるし、いいかな?
起きないし、いいよね?
たとえ起きても、カッコ良過ぎるから悪いんだよ!って言えばいいし
えーーーーーい!やっちゃえ!
ちゅ
...。
やっちゃった。
べ、べ、べ、べ、べ、別に日向寝てるし!
「ご馳走さま☆」
「ひっ日向!!?」
「肉食系だね☆いつもやってくれないのにー」
千那は、ふるふると震えながら赤面する。
「ビックリしたなー☆ねぇねぇ!もっとしてよー」
日向はノンキに喋り続ける。
「い...いつから?」
「えー?何??」
「いつから起きてたの?」
「入ってきた時から☆」
日向は満面の笑みで答える。
それに対して千那は、ペタンと床に崩れ、床を叩く。
「千那?」
「もぅ....。死んだ方が良いんじゃない?」
満面の笑みで(どす黒い空気を醸し出しながら)答える。
「えっ!ひどっ」
「熱は?下がったの?」
「多分ね?もう辛くないしー」
ちょいビビりながら答える日向。
「そっか!じゃあちょっとリビング来て?」
日向の顔が急に明るくなる。
「えっ?なになにー??」
千那はリビングにあるテーブルに今までやってこなかった事務仕事の紙の(弱1M超え)山をテーブルいっぱいに置き、にこやかに。にこやかに。日向へ言う。
「元気になったからこれを今日の夕方までに終わらして出してね?」
「千那ちゃん?嘘だよね?」
「嘘っていうのが嘘だ
よね?」
「いや、だって、事務もう終わったって今まで...」
「私一人で終わるやつがあるわけないじゃないですか」
(イキナリ敬語!!?)
「あー。まぁー。そうですねー。」
「3、2、1。はいっ!始めっ!」
「えっ!ちょっ!ちなっ!えぇー??」
「は!や!く!」
「頑張ったらなんかしてくれるんだったら、やるよー!」
日向は開き直り、威張って言う。
「見返りは、さっきのキスね♪見返りを先にしてあげたんですから、早く終らして下さいね」
「いじわるー(>_