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王妃に転生した昭和を生き抜いた女の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/10/10

「王妃殿下が目覚めました!」

「おお、妃よ!」

「「「お母様!」」」



 目が覚めたら知らない天井だわ。

 何かお姫様が寝るような天蓋のついているベッドの上で寝ている。



「あら、ここはどこかしら?」


「「「「!!!!」」」

「おお・・・妃よ・・・ショックで記憶を喪失したか・・・」



 何かイケオジの旦那と、金髪の女の子達がいた。

 外国人だわ。


「あら、私も上品そうなマダムじゃない?」


 鏡を見て絶句した。

 オホホホホと笑いそうなマダムだ。



 ヒソヒソ~


 噂話が聞こえて来た。


「シワまで美しいとうたわれた王妃殿下・・・」

「それが・・・王太子殿下が勝手に婚約破棄をして・・・」

「娘のように可愛がっていた公爵令嬢クラウディア様が退けられて・・・」

「妹のザスキア様が代わって、また一から王太子教育し直すなんて、お可哀想だわ」



 それで寝込んで熱病が発症したらしい。これはあれか?なろう系か?

 息子がなろう系アニメを見ていたから少しは知っているわ。

 題名が長くてけしからん。見るからに教育に悪そうだわ。



 こういった場合、チートを見せるのね。



「これ、仕立て屋を呼びなさい」

「はい、王妃殿下」


 ジャージを作らせた。

 こっちの方が楽だわ。



「・・・・妃よ」

「あら、旦那、少しお休み頂けるのでしょう?こんなネグリジェじゃ肩が凝るわ」



 ジャージで寝っ転がって、テレビ・・はないから女官に何か朗読させた。



「・・・・そこでサムが叫びました。まるで王様の床屋ではないか?・・・と」

「で、オチは?」

「ここが肝でございます・・・」


 市井の小説を読ませたが面白さが分からない。

 これでドッカンドッカンと笑うらしい。



 つまらぬ。

 ジャージで王宮内を歩き回った。


「ちょっと、そこの床を磨いている女中さん。感心だね。名は?」

「ヒィ、王妃殿下!ベッキーでございます」

「ご褒美にアメちゃんをあげよう」

「あ、ありがたき幸せでございます」



 アメちゃん。保険のおばちゃんが配っていた。何で?と思ったが・・・


『あ、アメのおばちゃん?』

『はーい、アメのおばちゃんですよ。何か御用がありますか?』

『実は保険の見直しをした方が良いかな・・・』


 感心したよ。アメで顔を覚えてもらえるなんて安いものだ。

 そんなことをしていたら旦那が心配しそうな顔で見つめていた。


「妃よ・・・」

「なんだい?今夜お務めするかい?」

「妃よ!」


 なんだい。『妻からのお誘いに驚く初心旦那』かい?

 毒蛇さんの川柳面白かったわね。


「いいからザスキアを教育するわ。寄越しなさい」

「うむ・・・」


 熱病発症までは嫌っていたらしい。

 どんな娘かしら。

 ジャージの姿で教育をした。



「王妃殿下、あたしお義姉様の代わりに頑張ります」

「頑張りなよ。で、課題はどうだった?」


 これは記憶にあった。どうやら前世を思い出した状態らしい。


「はい、国を富ます政策ですね!人口が増えれば良いのですわ。平民女に子供5人以上産ませる法律を作ります・・・ギャアア!何をなさるのですか?」


 出産は難事業だわ。

 これは強制することではないわ。


 ヘッドロックをかましたわ。


「小娘が何ほざいているんだい!」

「いたい・・・」


 このザスキアという娘、とんでもない女だった。

 馬鹿だ。

 公爵家お抱えの賢者に高等数学の本を書かせてザスキアの名義で出版している。


 やだね。女の浅はかさがにじみ出ているね。


 チャウシェスクの妻、エレナかい?

 あたしゃ、あの革命時代に女子高生だったよ。リアルタイムで見たわ。テレビだけどね。



「まるでダメね!厨房に来なさい!」

「ヒィ」


 ヘッドロックをかましたまま厨房に行った。


「ヒィ、王妃殿下!ご挨拶申し上げます」

「うむ。よろしい。料理長、この女にジャガイモの皮むきさせてあげなさい」

「え・・・はい」

「あたしもやるわ。出来ないことをやれって言う女ではないわ!」



 ジャガイモの皮むきをさせた。


「王妃殿下・・・お上手ですね。どこで覚えられたのですか?」

「皆の苦労を知るために隠れてやったのさ」

「王妃殿下・・・」

 何か感動された。


 ザスキアは泣きながらジャガイモの皮を剥いている。


「グスン、グスン・・・」

「泣くんじゃないよ。それじゃ、まるで王様の床屋だよ」


「「「ギャハハハハハハハ!」」」

「王妃殿下・・・お人が悪い」


 何かこれが笑いのツボらしい。


 後で聞いた話だと。

 何でも民話で・・・・王様がウトウト寝ている時に床屋が髪を切っていたら。王様が動いて髪を変な風に切ったらしい。

 ごまかそうとして髪を切り続けたら、最終的にハゲになったと?


 そして、床屋のハンスは・・・


『陛下、輝いております!』


 と誤魔化したらしい。意図せずに輝いてしまったことを揶揄している笑い話だわ。

 この場合、ザスキアは輝いている・・・と?侮蔑も籠もった褒め言葉らしい。

 やっちまったかしら?



 それからザスキアに厨房の帳簿をつけさせた。


「主婦の経済学を身につけなさい。無敵よ」

「グスン・・・・」



 床を磨かせた。


「ベッキー、一緒にやるわ」

「ヒィ、王妃殿下!」

「もう、嫌だわ・・・」

「ザスキア、嫌とは何よ。性根を鍛えるわ!」


 グスン、グスンと泣いている。拭く力がないわね。



「いいかい?息を吐きながら丸く円を描くように拭く!」

「グスン・・・グスン」


 兵舎のペンキも塗らせた。


「いいかい?息を吐きながら上下にこうやって、コテを動かす」

「グスン、グスン、もう嫌ですわ!王妃なんてなりたくありません」


「ちょいと待ちな。これは・・・あ、逃げたわ」


 某空手映画のように教育しようとしたけども、逃げだしたわね。



 これには公爵と息子が抗議に来たわ。



「母上!ザスキアも公爵家の血を引いておるのですよ」

「王妃殿下・・・変わられましたな・・お疲れのようです。離宮でお過ごしされた方がよろしいのではないですか?」


「・・・うむ。それは出来ない。優秀な妃なのだ」


 旦那は庇ってくれている。

 息子と公爵が強気なのは理由がある。

 男子が1人しかいないのだ。




「なんだい。あんた達が勝手に婚約者を変えたから疲れちまったのさ。

 後1年待ちな。こちらには考えがあるよ!」


「王妃殿下・・・」

「母上、1年待てば良いのですね」

「ああ、そうさ。上手くいったらダビンと公爵!私の教育を受けてもらうよ」



 婚約破棄をした後ろめたさもあるのだろう。

 1年の猶予をもらった。


 早速・・・


「皆、マムシを探しておくれ」

「「「はい、王妃殿下」」」


「捕まえました」

「よろしい。料理長、ワインにつけておくれ」

「了解です!」



 それを旦那に飲ませて。


「妃よ・・・」

「分かっているって、ベッキー、ベッドを整えておくれ」

「は、はい」


 ギシギシアンアンして・・・・



 丁度一年後に男の子を出産した。

 16人子を産んだマリア・テレジアか?あたしは多産の家系なので王妃に選ばれたのだ。

 6人の姉がいる坊やが誕生したわ。


「「「可愛いですわ」」」

「良いお姉ちゃんになるんだよ」

「「「はい!」」」


「妃よ。でかしたぞ!」


 そして、坊やの兄は・・・


「王太子を降りな。約束だよ」

「ヒィ、母上、私は・・・」


「教育しなおすよ。これを着て床を磨き。ペンキを塗りなさい!」



「そ、そんな・・・これを着ろと・・」


 ジャージを着せた。

 ボロボロになったら息子のジャージを着ても良いわね。


「息を吐ながら円を描くように床を磨く!」

「王子なのに・・・グスン」

「何故、ワシも・・・」


 公爵も教育し直す。長兄はまともだから旦那に言って公爵家を継がせたわ。

 長兄からクラウディアは学園の同級生と婚約をしたと聞いたわ。

 老貴族に婿入りに行くのを阻止できたわね。



「皆、輝いているよ!王様の床屋だけに!」


「「そんな」」


「アハハハハハハ!グヘへへへ!しっかり磨きな!」


 これが大円満かしら?とりあえず幸せだわ。


最後までお読み頂き有難うございました。

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