第2話 確認事項
朝の連絡事項は、簡潔だった。
変更点は一つだけで、影響範囲も限定的だった。
掲示板の前に人が集まっていたが、混乱はない。誰かが読み上げ、周囲がそれを確認する。理解が揃ったところで、自然に解散した。
自分も内容を確認した。問題はない。
教室に入ると、いつもと同じ配置だった。席の位置も、机の並びも変わっていない。環境が維持されていることは、判断を早くする。
始業前、担任が教室を見回す。
視線が一瞬こちらで止まったが、すぐに逸れた。
それで十分だ。
授業が始まる。
進行は予定より少し早い。質問が出なかったためだ。教師は間を取ろうとしたが、特に補足する内容も見当たらなかったらしい。そのまま次に進んだ。
途中で配布物が配られる。
内容は既知だった。形式も以前と同じだ。記入欄を確認し、必要な項目だけを埋める。余白は残す。すべてを書く必要はない。
隣の席の生徒が、小声で確認してくる。
「これ、ここまででいい?」
「大丈夫」
それで会話は終わった。
休み時間、数人が集まって話している。
内容は行事の準備についてだった。進捗が遅れているらしい。
意見を求められたので、現状を整理する。
遅れの原因は、役割の重複だった。誰かの負担が増えているわけではない。ただ、整理されていないだけだ。
「ここを分けた方がいい」
そう伝えると、全員が納得した。反論は出ない。
「じゃあ、それで」
決定は早かった。
その場の空気が落ち着く。誰かが冗談を言い、笑いが起きる。自分は聞いているだけでよかった。反応は求められていない。
次の授業に移る。
教師が少し疲れているように見えたが、進行に支障はなかった。板書の速度が一定で、理解しやすい。
指名されることはなかった。
それでいい。
昼休み、委員会の連絡が入る。
午後の作業について、確認事項があるという。内容は共有済みだったが、念のため再確認する。齟齬はない。
「助かる」
そう言われたので、「問題ない」と返した。
午後、短いミーティングがあった。
進行役が少し言葉に詰まる。資料が多く、説明が追いついていない。
代わりに要点を整理して伝える。
必要な部分だけを抜き出す。余計な解釈は加えない。
場が整う。
進行役は安心した様子で、次に進んだ。
「いると助かるよね」
誰かがそう言った。
否定も肯定もしなかった。
事実として、作業は進んでいる。
放課後、職員室に呼ばれる。
先日の提出物について確認があった。形式上の問題はないが、一点だけ修正案が出された。
内容を聞き、即座に判断する。
修正は可能だった。手間も大きくない。
「それでお願いします」
そう伝えると、教師は安心したように頷いた。
「君に任せておけば大丈夫だから」
その言葉に、特別な返答はしなかった。
帰り道、同じ方向の生徒と並ぶ。
天気の話を少しする。明日は雨らしい。傘が必要だという話で終わる。
それ以上、話題は広がらなかった。
家に着き、いつも通り準備を進める。
修正が必要な書類に目を通す。指摘された点を直す。余計な装飾は加えない。
作業は短時間で終わった。
提出用のデータを確認する。
不備はない。
記録として残す必要はない。
特別な判断はしていない。
机の上には、やるべきことが残っていなかった。
確認する項目もない。
電気を消す前に、明日の予定を見る。
変更はない。
今日も、
誰も困っていない。
それで十分だった。




