第1話 平常運転
この物語には、
大きな事件も、劇的な展開もありません。
誰かが傷ついたり、
何かが壊れたりすることも、ほとんど起きません。
それでも、
「問題が起きなかった」という事実だけは、
確かに積み重なっていきます。
静かな話です。
もし途中で、
「何も起きていない」と感じたなら、
それは、たぶん正しい読み方です。
朝は定刻に始まった。
目覚ましは一度で止めた。二度鳴る設定にはしていない。必要がないからだ。
洗面所の鏡に映る顔を確認する。寝不足の兆候はない。肌の状態も平均値の範囲内だった。髪を整え、制服を着る。しわはない。昨日のうちに準備してある。朝に確認する項目は、減らしておいた方が効率がいい。
朝食は軽めに取った。食欲の有無は特に意識しない。時間と量のバランスだけを見る。食べ終わった皿を流しに置き、洗う。水量は一定。手順は決まっている。
家を出る時刻も、予定通りだった。
通学路では、何人かと挨拶を交わした。声の大きさは相手に合わせる。立ち止まる必要はない。会話が発生しそうな場合もあったが、今日は急ぎの用件はないようだった。自然に流れる。
校門を通過する。遅刻ではない。早すぎもしない。
靴を履き替え、廊下を歩く。混雑はしていない。移動はスムーズだった。
教室に入ると、すでに数人が席についていた。誰かがこちらを見る。目が合ったので、軽く会釈する。それで十分だ。席に着く。机の中を確認する。忘れ物はない。
出席確認が始まる。
名前を呼ばれたので、返事をした。声量は適切だった。
特に指摘はない。
授業は予定通り進行した。
板書は読みやすい。必要な部分だけをノートに写す。すべてを書き取る必要はない。要点は明確だった。
指名される場面があった。
質問は想定内だった。答える。
教師は頷いた。それ以上のやり取りはなかった。
休み時間、後ろの席から声をかけられる。
次の提出物についての確認だった。期限と形式を伝える。相手は安心した様子で、自分の席に戻った。
別の生徒が近づいてきて、部活動の進行について意見を求められる。現状の問題点を整理し、無理のない代替案を提示する。誰かを否定する必要はない。全体の負担が均等になるように調整した。
「それでいこうか」
そう言われたので、頷いた。
昼休みは混雑を避けて過ごした。席を移動する必要はない。弁当を食べる。味については評価しない。栄養と量は足りている。
雑談が始まりそうになるが、深い話題にはならない。誰かが不満を口にしかけたが、別の話題に自然と移行した。空気は保たれている。
午後の授業も、問題なく終わった。
小テストの結果が返却される。数値は想定の範囲内だった。平均との差も把握する。特に修正は必要ない。
放課後、委員会の作業があった。
資料を確認し、不備を指摘する。言い方は穏やかにした。相手はすぐに修正案を出す。作業は予定より早く終わった。
「助かった」
そう言われたので、「大丈夫」と返した。
帰り際、担任に呼び止められる。
最近の様子について軽く確認された。特別な報告事項はない。そう伝える。
「安定してるね」
その言葉に、頷いた。
帰宅途中、連絡が一件入る。明日の集合時刻の変更についてだった。了承する。カレンダーを更新する。これで問題は解消された。
家に着く。靴を揃える。
部屋に入り、鞄の中身を出す。提出物をまとめ、明日の準備を済ませる。時間には余裕があった。
机に向かい、今日の予定を確認する。
すべて完了している。
記録を残す必要はなかった。
特筆すべき事項はない。
風呂に入り、就寝の準備をする。
布団に入る。明日の天気を確認する。支障はなさそうだった。
電気を消す。
目を閉じる。
今日も、問題は起きなかった。




