日銀、17年ぶりに0.5%まで利上げの意図は何か?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は去年の利上げのたびに同じようなことを書いていて以前読まれている方には大変恐縮なのですが、
日銀が「現実が全く見えていない利上げ」をしているのはどうしてか? について個人的な意見を述べていこうと思います。
質問者:
実際のところ景気は最近どうなんですか?
筆者:
日本の24年全体の実質GDP成長率の見通しは、+0.3%と「ゼロ成長」継続。
家計実質消費支出は24年4月と7月以外マイナスで消費は低迷しています。
物価高が起きているのは需要が爆発しているからでは無く、単純に価格転嫁をしているだけであることを示しています。
最近の消費者物価指数が発表され速報値で先月は3%を超えましたがこれは物価高支援策が縮小しているために過ぎません。
実質賃金もここ30カ月で6,7月の2カ月しか上昇しておらず、基本的にはマイナス続きであり、利上げに対しては様子見しなくてはいけない段階のはずです。
賃上げが進んでいるのも、高齢化に伴って現役世代が減り続けているために「若者争奪戦」と化しているからです。
これを「景気が回復した」と捉えるのはちょっとズレているのではないか? と思えてしまいます。
質問者:
しかも給料が上昇しているのは大企業の若手がほとんどみたいですからね……。
物価上昇を抑えるわけでは無いとなると一体何が目的なんですか?
円安対策ですか?
筆者:
これはですね。念仏やお題目のように唱えることで本当に叶うという。
いわば「引き寄せの法則」を狙っているものと思われます(笑)。
質問者:
もう! 真面目にやって下さい!
筆者:
は、はい……。
確かに円安になった背景は「日米金利差が開いたから」と言うのが大きな要因としてありました。
これまでは日本でお金を借りて、アメリカで国債を買うと言った行動を取る人が出てきていました。
これを「円キャリートレード」と言います。
今、世界的に見て相対的に日本の利率が低いからですね。(日本がコロナ対策を渋ったことが原因だと僕は考えています)
1カ月金利差で見て日米金利差が5%程度を超えていると、その金利差の絶対水準がドル/円を押し上げる傾向が見られる。一方、日米金利差が4.75%前後を下回ると調整反落リスクが高まる――と一般的に言われています。
しかし、アメリカは今現在4.5%と既に4.75%を切っているわけです。
ここでほんのチョット差が縮まったからと言って戻ってくるのか? と言ったら全く違うと思います。
質問者:
どうして利率差が4.75%を切っても解消されないんでしょうか……。
筆者:
金利差が開けば確かに円安にはなる可能性は高いのですが、金利差が縮まったからと言って円高になるとは限らないんですね。
長期的に見てドルやユーロが利下げをしたとしても別の資産(ゴールド、仮想通貨など)になるだけの可能性があるんです。
今現在、「反落」には程遠い状況であるのは「よっぽど円に魅力がない」と思われていることの証左だと思います。
※トランプ氏が「アメリカを仮想通貨大国にする」とおっしゃっているので、
仮想通貨市場と言うのは今後拡大していくものと思われます。
質問者:
確かに、今増税で緊縮、人口減の日本に敢えて投資しようというのはどちらかというと、安く買い叩けるからに過ぎませんよね……。
一体日銀にはどんな意図があるんでしょうか……?
筆者:
現時点において「金融政策の正常化」をとにかく目指しています。
金融政策の正常化とは利率を一定以上を維持することを指します。
「金融政策の正常化=景気の回復」
ということですから、政府や日銀の目標としては当たり前と言えば当たり前なんですがね。
僕はどうしても「穿った(うがった)見方」をしてしまうんですね。
質問者:
良いことを目指しているのであれば良いのではないですか?
実情を伴っていないのはどうなのかと思いますけど……。
筆者:
僕が懸念しているのは「景気が回復している」と言うイメージを国民全体に植え付けることによって、
「給料が上がっていないのは、上がっていない奴らの頑張りが足りないからだ!」
と自己責任論を振りかざして減税を行わない言い訳にしようとしているわけです。
この手法は小泉政権時代の非正規雇用を増やす手法時代から使われていたようで、
伝統的な「政府の責任(失敗)を国民に擦り付ける戦術」です。
質問者:
確かにどうしても減税をしたがらない雰囲気がありますからね……。
「PB黒字化(収入で支出を賄う)を達成しなくてはいけない」と与野党の偉い方が皆で口を揃えておっしゃっていますからね……。
筆者:
どうにも国家財政と普通の一般家庭財政をごっちゃにしてしまっている印象があります。
一般家計には存在しえない「通貨発行権」や「信用創造」と言った観念を全く無視してしまっているんです。
また、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と言う指標では、
政府純債務/GDPだけで見た場合では世界で一番悪い数値でこればかりが話題になるのですが、残る対外純資産/GDP、政府債務対外債務比率、経常収支の3つの指標では世界的にはかなり良い方で4つを総合するとドイツに次いで2番目に先進国では良い財政状態なのです。
このことから本来であればもっと減税を積極的に行ったり、「壁」の引き上げを能動的に行う事も出来るはずなんです。
質問者:
国債を発行して赤字とは言え、ほとんどは年金受給者に支払われ、
大企業への減税ばかりですからね……。
現役世代の一般国民に全く行き渡っていない状況ですよね。
筆者:
しかもこれを指摘する人間と言うのが非常に少ないために、状況が好転していないのです。
それどころか「マイナス金利が日本経済を悪くした」とまで言うアナリストまでいます。
マイナス金利をやっている間に起きた現実は消費増税や社会保険料の増額インボイス導入など国民負担が増すことばかりでした。
その間の10年で国民負担率は10%弱増えたぐらいですからね。
これではアクセルを踏みながらブレーキも踏む状態で回復するものも回復しませんからね。
異常なのは「異次元の金融緩和」では無く、国民の窮状を30年まともに救済して来なかった政府と法人減税を訴えてきた経団連、それを追求していないマスコミであると言えます。
◇利上げがさらに進んだ先の未来
質問者:
その大きな組織を崩すのは中々厳しそうですけどね……。
今後も利上げ予測と言うのはあるのでしょうか?
筆者:
彼らの大義名分である「物価高抑制」「景気の好循環による賃上げ」の2つが起きているように見せかけることが出来ていれば普通に上げてくることでしょう。
しかしながら、企業が借り入れる金額に負担が増すので、利上げをして物価が下がるどころか利息分が価格転嫁される可能性まで出てきます。
現役世代も減り続け人件費は上がり続ける(ただし物価高は上回らない)ために苦しい物価高は続くことでしょう。
長期金利は住宅ローンなどに大きく影響してきます。
更に利上げとなってくると現状の「手取りが減る」状況ではいよいよ上級国民以外はまともにマイホームすら持てなくなるかもしれませんね。
また、一般的に経済成長率より利率を上げてしまうと皆が銀行に預けてしまうために非常に危険なことをしていると言えます。
利率が2%まで上がれば現状の「ゼロ成長の日本」では本格的な景気悪化に繋がることでしょうね。
本当に恐ろしいことをやろうとしていることに全く日銀が自覚していないのが驚きと言えますね。
質問者:
この毎回利上げのたびに似たような感じのお話をしているのはやっぱり気づいてもらうためですか?
筆者:
そうです。
「自己責任論」と「勝手に経済回復している」と政府が宣言してしまわないためにこうやって指標を確認していっているわけです。
正直なところ日本国民はこれだけ政府に虐げられておきながらなんとか現状維持でとどまっている(それどころか現役世代の生産性はアメリカより上がっている)と言うのは非常に凄いことだと思いますよ。
これで恒久減税や農業や介護の補填をしっかりしてくれれば一気に実質成長も上がっていくと思うんですけどね。
質問者:
でも実際は増税ばかりで利上げまでして2024年の出生数は70万人割れと言う発表までありました……。
筆者:
政府が一般国民から搾り続け、お仲間にお金を配り続ける状況では更に少子化が進んでいくでしょうね。
そして足りない人口は外国人労働者で補おうって言うんですから本当に安易な考えに走り続けているなと思います。
これで石破首相は「楽しい日本」を目指しているらしいんですから、ブラックジョークにしか見えません。
この流れを少しでも食い止め弾き返したいなと思いますね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は「利上げ時恒例」とも言える、経済は全く上向きじゃないのに利上げをすることは間違いだという事を永遠にお伝えし続けました。
今後もこのような政治・経済について個人的な意見を述べていこうと思います。
よろしくお願いします。