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さきにあいつをやろう② サイランside

「やはりごろつき50人ではダメだったか」


 サイランは使役鳥から集めた映像から状況を把握した。


 剣に毒はいいところまでいったらしい。しかし、毒が回ったのにそこそこ動きまわれたのは意外だった。魔術も使えたようだしそこも謎だ。


 王子という人種は暗殺を避けるために、毒耐性をつけるように訓練されているのだろうか。第七王子までその訓練を受けているとは考えにくいのだが。


 そして、「あ、確かに盲点だった」と気付いたのは、クソガキの副官の彼の一言だ。全方位の敵にシャインボムを投げれば簡単に切り抜けられたということ。


 それどころかスリープ(催眠)を使えばよかったのだ。


 スリープは自分よりレベルの高い魔術師には使えないが、自分よりレベルが低い相手なら、防御装備を見つけていない限り簡単に引っ掛かる。まさかクソガキとごろつきで、ごろつきの方がレベルが高いということは考えられない。


 それを「フェアじゃない」の一言でやらないということは、相当クソガキは自分の腕を過信しているのか。


――次は、魔術師と剣士の二本立てで行くか。


 クソガキは上級魔術師である。金で買ったものなのか、正規のものなのかは謎だが、レベル50以上と考えておくのが無難だ。


 剣の腕前は専門外なのでどのくらいのレベルなのかは謎だ。魔術アカデミーの成績では剣術は次席の成績だったようだが、近衛騎士の中の上レベルと考えておくに越したことはない。


 サイランは魔術師と騎士で自分の言うことを聞いてくれそうな人間を二名ほどピックアップしてみた。第三騎士団と第三師団に以前所属していたものだ。


 第三王子は第二王子以上に始末が悪い。あの無能でアル中の第二王子以上なのだから相当なものだ。


 理不尽なパワハラは当たり前で、上記二人は挨拶の仕方が気に入らなかっただの、俺が目をつけていたメイドに先にアプローチしただの、しょうもない理由でクビになっている。


 金には困っているだろうし、無職で時間は無限にある。サイランはまた変装して二人を呼び出すことにした。



◇◆◇


 転職コーディネーターのユージェフ・ジェイソンという偽名で手紙を出し、二人を平民が集う酒場へ呼び出した。ここならざわざわしているし、話を誰かに聞かれる心配もないが、念のため軽い結界を張ることにした。


 魔術師は中級魔術師だったので、上級魔術師サイランがひそかに張った結界には気付いていない。


「転職コーディネーターとして、二人を新たな雇い主の元へ送ってやろう」


 雇い主の心当たりなんてない。あったら自分がそこに行ってる……のだが、この変装からサイランに辿りつく心配はなさそうなので、適当にウソを言っておくことにする。


「だがその前に、やってほしい仕事がある」


 元騎士が怪訝そうにサイランを見る。


「なんですか? ヤバい仕事じゃないですよね?」


「実は結構ヤバい仕事だ」


 ここで帰られては困る。ヤバい中身を言う前に、大金を二人の前に置いた。普通に暮らせば一年は余裕でもつ金額だ。この金は第二王子の懐から出ている。


「この人物を殺してきてほしい」


 ササッとクソガキのプロフィールを出してみる。二人はプロフィールを見てギョッとした。


「この人、割と有名な人ですよ。王子様の割にいろんなこと助けてくれるって。ちょっと便利屋みたいな感じで」


 魔術師はこの仕事に不満そうだ。


 クソガキは外交特使の傍ら自らのスキルを売り込んで、魔獣退治をしたり、要人を護衛してくれたりと、便利屋バイトに励んでいる。第七王子の性なのか、金が足りないらしい。


「すごいいい人って噂ですし。なんでわざわざそんな人を殺さないといけないんですか?」


 騎士の方も断ろうとしている。やはりいい人と評判の人物を殺すのは気が乗らないのだろう。しかしこの二人は直接クソガキとの接点はないようだ。多少人物像を捏造してもバレはしない。


「その噂は真実ではない。このクソガキは大変なクズ野郎なんだ。実は私の妹はこのクソガキに手篭めにされたんだ……ッ! 無理やり、かつ乱暴に扱い、用が済んだらポイ捨てだ。そして金の力で揉み消しを図ったんだ! そして妹はそれを苦にして……うぅっ」


 多少どころか根も葉もない嘘で、サイランには妹などいないのだが、演技に熱が入り、目に涙まで浮かんできた。


「そしてヤツは顔だけはいい。妹の友人の多数がこの鬼畜なクソガキの犠牲になったんだ……ッ! 私はこのクソガキを生かしてはおけないと決意した! そこでこの金を貯めたんだ……ッ!」


 さらに金を上乗せしてみた。二人はぽかーんとした顔をしていたが、サイランの涙を見て演技に引き込まれてきたようだ。


「そして、君たちならわかるだろう? 王子という人種がどんなヤツらか……」


 彼らには「王子」のイメージモデルとして最適な人物がいる。


「このクソガキはキャッツランドの王子だが、王子という人種に国籍による差はない。君達がよく知る男にそっくりだ。いや、そのもの……それ以上のクズだ!」


 彼らの目の色が変わる。第三王子にやられた理不尽な数々が脳裏に蘇ったようだ。


「「やります……! クソ王子を血祭りにあげてやりますよ!!」」


 今回の作戦としては、剣に前回以上の即死に至るような猛毒を塗る、魔術師は完全援護で、とにかく一撃を与えればよい、というもの。一撃さえ与えれば即撤退でよい。


 さらに奥の手もあることだし、殺せたらラッキーというくらいなものだ。

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