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先にあいつをやろう サイランside

「チッ! 絶妙なタイミングを逃したな」


 隣国のルーシブルに飛ばしていた使役鳥が戻ってきた。


 クソガキご一行はダンジョン遊びという、おおよそ王子がやらないような娯楽を楽しんだようだった。


 いくら喧嘩っ早いクソガキでも、ダンジョンなんていうものに王子という立場で行かないだろうと決めつけていたのだ。


 ダンジョンだったら攻撃魔法撃ちまくれるし、死んだところで自己責任で終わらせられたというのに。


 そして庇護者であるクソガキを失って茫然としている聖女を攫う。完全犯罪が成立するのだ。


 何階層まで行ったのかは不明であったが、目で見る限りかなりボロボロになって帰ってきたようだ。サイランであればダンジョンに深いところまで潜っても、そこまでボロボロになることはない。


 意外とクソガキも大したことがないのかもしれない。もしかすると、ナルメキア王立魔術アカデミー首席という経歴も、上級魔術師の資格も金で買ったものかもしれないと思い始めてきた。


 剣術の成績もなかなかよかったようだが、それも怪しい。そもそも魔術アカデミーの剣術なんてお遊びだ。本職の騎士は、騎士学校の方へ進む。


 たまに魔術も剣術もバチクソ強いです、というようなものが魔術アカデミーにも現れるが、ほんの一握りだ。


 そのへんのゴロツキをポーション増強して数を当てればいけるのかもしれない。


――それにあのクソガキは恨みを相当買っていそうだしな。


 前回の変装をして港へ向かった。



 ◇◆◇



 クソガキの情報をくれた人攫いのごろつきは、今日も元気に不幸な女達を運搬している。声をかけるとあちらも覚えていたようだった。


「よぉ、あの情報は役立ったか?」


 絵心のあるごろつきは、上機嫌で声をかけてくる。また金をもらえると思っているんだろう。その通りなのであるが、もう一つ二つプレゼントがあるのだ。


「お前に金と面白いことをやらせてやろうと思ってな」


 金を握らせ、さらに紙を渡す。


「あーッ! こいつぅぅ!」


 そう、憎っくきクソガキの画像付きプロフィールである。これは魔術師協会の資料から情報を抜き取って、画像を魔術で貼り付けたものだ。


 ちなみにクソガキの本名から現在の移住地、行動パターンまで載せておいた。狙い目は、クソガキと、クソガキ子飼いの赤髪の騎士団長が別行動の時だ。さすがにクソガキと赤髪の両方を相手にしたら勝ち目はない。


「げっ……こいつ王子か!」


 ごろつきは第七王子、のところで顔色を変える。


 懸念点はそこだ。ごろつきとは言え、王子を殺ることの重大性はわかるだろう。


「しかしそいつは王子といっても書いてあるとおり第七王子でね。こっそり闇打ちにすれば問題ない」


 問題は大いにあるのだが、関係ないだろう。あえて初めから王子と伝えておいたのは、闇打ちの際に向こうから名乗る可能性を考えてだ。


 行動を抑止するために「俺様は王子なんだぞー、偉いんだぞー、俺を殺したら死刑だからなー」と言いだしかねない。そうなったときにごろつきが動揺する。


 初めから王子と教えておけばその辺は安心だ。それに王子だろうが平民だろうが、ルーシブルでは人を殺したら死刑なのだ。


「そいつは王子として金に苦労することなく、女にもチヤホヤされ、お前らごろつきを心底下に見ている。身勝手な正義感を振りかざす傲慢で偉そうなお貴族様の典型的なヤツだ」


 恨みもブーストしておく。調べたところ、実際のクソガキは「典型的ないいヤツキャラ」なようであるが、そこは伏せておく。


 ごろつきの顔色が怒りで赤くなってきた。いい傾向だ。


「しかしヤツはそこそこ強い。ただし、お前らにはこいつがある」


 もともとの身体能力を大幅に向上させるポーションだ。一般的に流通しているものに効果を50%上乗せしたもので、殺意を上昇させ理性を飛ばせる効果もある。


「あいつに恨みがあるものを好きなだけ連れて行け」


 そして大量のポーションを渡すと、ごろつきの顔がみるみるうちに興奮に変わっていく。


「ついにあのムカつくクソガキを始末できるのか!」


「そうだ。好きなだけいたぶってこい」


 サイランはほくそ笑む。暴れ馬のような王子が、自分に恨みを持つごろつきに殺られるだけの話だ。そしてヤツさえ始末してしまえば、聖女奪還はかなり容易になる。

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