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いよいよ念願の八百屋開業!

「私が新国王となるクルト・マーティム・キャッツランドです! 国民の皆さまの支えのおかげで発展したこの国を、さらに幸せな国へと導き……」



 長男で王太子に任命されていたクルトが二十歳の誕生日を迎えてから、十回目の満月が過ぎた。国王は即時交代。私とラセルからは神力の名残のようなものは残ったけど、今までのようなブースト魔術は使えなくなった。


 そして今日、クルトが王都テールの国民広場で、国王就任の挨拶をしている。今回はなんと、キャッツランドの守護神・テトネス様を国民の前に降臨させるという。


 通常は海底神殿の上じゃないと来てくれないらしい。でも、今回は特別に来てもらえることになった。


 テトネス様を降臨させるのは次男のアレクだが、三男・四男の双子兄弟の力も借りるという。キャッツランドでは双子王子は大変縁起が良い。縁起の良い双子の頼みということで、テトネス様も上機嫌で引き受けてくれたのだ。



「クルトもアレクも立派になったねぇ。生まれた時はあんなに小さかったのに」


 就任のスピーチをしている長男、次男を見上げて、私はしみじみと呟いた。


 キャッツランド王家に嫁いでから色々大変だった。蒸発したパパに取り残された情緒不安定な義弟達の面倒を見たり、子供は全員男の子だからうるさいし。聖女仕事は忙しいし。


 すっかり肝っ玉母ちゃんのようになってしまったよ……。


「なに引退みたいなこと言ってんだよ。まだ双子は13歳なんだから、まだまだ楽しい子育ては続くんだぞ。それに……孫娘もできたしな!」


 ラセルは腕の中にいる桃色の髪の赤ちゃんを愛おしそうに頬づりしている。ラセルは子煩悩なパパになった。息子たち全員を可愛がってくれたが、孫はさらに格別なようだ。


「ユリアは可愛いよなぁ。むさくるしいキャッツランド王家に女の子が誕生するなんて奇跡だ」


 ラセルはユリアにメロメロだ。腕の中にいる赤ちゃんは、次男のアレクの娘。学校を卒業してすぐ結婚し、子供が生まれた。


「ていうかさ、ユリアって聖女じゃね? 初めてカナと会った時に感じた特殊な迸りをずっと感じてるんだけど」


 実は私もそれを感じていた。自分に近いものを感じるというか。孫だからじゃない。持っている魔力の質が近い感じがするのだ。


「二代目聖女が誕生したかー……。聖女は俺らのこれからのジョブチェンジに相性バッチリだよな。離宮の畑仕事、双子だけじゃなく、ユリアにも手伝ってもらおうかな」



◇◆◇



 王宮は新国王、王弟一家にお譲りするので、私たちの住まいは王宮の隣に位置する離宮に移る。前々国王が出奔して離宮に住まなかったから、離宮の畑は荒れ放題。そこを開拓して、聖女の力をフル開放。農家兼八百屋を開業する予定なのだ。


 ラセルは騎士団長へのジョブチェンジも選択肢に入れていたみたいだけど、クルトとアレクが猛烈に反対したのだ。護衛対象が息子というのもどうなのよってことで、八百屋一本に絞った形だ。


「ついに、シリルの嘘が真実になるのね」


 義妹のレイチェル――通称・レイは、野菜を積むための高機能移動馬車を見上げ、感慨深そうに呟いた。


「今の僕は八百屋の番頭さんで、君は八百屋の番頭の妻。何も嘘は言ってない。ちなみに、僕が男なのも本当だったでしょ?」


 シリルは小悪魔な微笑みを浮かべ、レイの肩を抱いた。


 シリルはレイと初めて会った時、「八百屋の番頭」をしていると言ったそうだ。どこでそんな嘘を思いついたのやら。


 レイはレイで、シリルが何度も自分は男性だと言っても、全く信じなかったそうだ。


「私も活動の傍らで、八百屋の番頭の手伝いをするわ。世界中を周るから取引先も増えるわよ」


 レイは女性革命家として名を馳せた人物だが、元々は下らない男達とのお見合いが嫌で、家出をした家出令嬢だ。


 彼女は、世の女性が家の言いなりの結婚しかできない、自活できる道がないことを大変憂慮している。


 カグヤやキャッツランド、ヒイラギ皇国では女性官吏、女性騎士の登用もしているが、他国では男性のみと制限をかけている国も多い。宰相や大臣クラスの要職、王位継承者も圧倒的に男性が多い。


 また、カグヤやキャッツランドでは、官吏募集自体はしていても女性の応募がなかなか来ない。そんな現実を少しでも変えたいと、レイチェルは世界を飛び回り、女性の活用についての啓蒙活動に励んでいる。


 そんな中、キャッツランドで初の女性宰相が誕生した。レイの活動が少しずつ実を結びつつある。


「そうそう、モエももうすぐ皇帝を引退するみたいなの。皇太子に譲るって。そしたらキャッツランドの別荘に住むみたい。あの子、猫派だからね。お義姉様、モエと遊んであげてね」


「きゃーーっ! 嬉しい!! そしたらしょっちゅう遊びに行けるじゃないの! アイゼル殿下も一緒に来てくれると嬉しい。ラセルも喜ぶよ!」



◇◆◇



 私達は高機能移動馬車に野菜を積んで、移動八百屋をやることにした。


 警備の問題があるから、と、一応ビスと、ビスの息子さんが専属SPでついて来てくれる。


「俺も忘れるなよ! 八百屋開業したら俺も手伝うって言ったじゃん」


 キースも参戦してくる。私とラセルは神力の影響で二十歳のままだけど、キースとビスは普通のオジサマになってしまった。


 五十歳だから、やってやれないことはないと思うけどさ。


 キースは別の公爵家へ婿入りし、ずっとラセルの秘書官をしてくれた。「ラセルの」秘書官だから、ラセルが八百屋になるなら八百屋の秘書官になってしまう。


「私も手伝いますからね! カナ様のメイク担当はずーっと私だったんですから。八百屋さんもメイクは大事!」


 レイナも張り切って畑を開墾してくれる。当然ビスの奥様だ。一家総出で八百屋さんへジョブチェンジだ。


 そこへラセルが帰ってきた。国王の装束から農家ファッションへ変化した。農家ファッションでもやっぱり私の旦那様はカッコいい。


「じゃあ、みんなで頑張って野菜育てますか!」


【完】


ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

本作品は来年書きなおすかもしれませんが、しばらくこのまま置いておこうかと思っています。


こちらは前ページで宣伝しておりました新連載です。


銀髪の第二王子と桃色髪の公爵令嬢は両片思いに気付かない

https://ncode.syosetu.com/n1448js/

もし楽しんでいただけましたら☆で評価いただけると嬉しいです(≧▽≦)

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