表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
7/47

ドルックという男

 ユリウスからの情報をもとに、俺たちはゲーテ商会の会長であるドルックの家の前に来た。

 大きな建物の前では、何人もの騎士が警備を行っている。普通に考えれば近づくことは出来ななさそうだ。しかし、この世界での俺は第六王子だ。たとえ第六と言えども、その権力は一人の商人とでは比べものにならない。


「そこを開けてもらえないか」


「これは!アレン王子。ど、どうぞお入りください」


 第六王子が急に訪ねてきたということで棋士達は動揺を隠しきれていなかった。思っていた通り、彼等は俺を止めることが出来ないため、すんなりと中に入れてくれた。

 流石は名の通った商会と言うべきか。建物の中は貴族に匹敵するくらい広くて豪華なものとなっている。俺は豪華な装飾などを好まないが、ドルックという男は、そういったものを好む男なのかもしれない。面識のないドルックという男について考えていると、一際大きな扉の前に着いた。

 明らかに、この部屋の中にドルックがいそうだ。

 警戒しながら、ユリウスが扉を開けた。


「だ、誰だ!?」


「失礼するよ」


「おぉ、第六王子のアレン様じゃないですか。今日は、どのような御用でいらしたのですか?」


 部屋の中には、ドルックが一人でいた。

 ドルックは、外にいた棋士達とは違って、俺が来たことに対して動揺は感じられない。余裕があるのではなく、単純に俺のことを子供だからと思って舐めているのだろう。

 俺が椅子に座ると、向かい合う形でドルックも椅子に座った。ユリウスには、後ろで控えてもらっている。

 話す準備ができると、早速本題を切り出した。


「何故、俺に暗殺者を送り込んできたんだ?」


「何のことでしょうか?暗殺者?そんな奴らが、アレン王子を狙っているのですか?」


 当然、ドルックは暗殺者を送り込んだことを素直に認めることはなかった。認めたら、即刻逮捕、もしくは死刑が待ち受けているのは考えなくても分かることだ。

 ドルックは心の込もっていない心配の言葉を並べた。

 俺はユリウスに、持ってきた荷物をテーブルの上に置かせた。荷物が重かったからなのか、この部屋が静かだったからなのか、荷物をテーブルに置いた音が響いた。

 ドルックは、自分の目の前に置かれた荷物に不思議そうにしていた。


「これは?」 


「開けてみるといいよ」


「何を今さら・・・。ヒィッ・・・・」

  

 中身の見えない箱の荷物を開けたドルックは、一転して顔が青ざめた。

 箱の中には、五つの生首が入っている。ドルックの反応を見る限り、見覚えのあるものだったに違いない。それもその筈だ。なんと言っても、五つの生首は、俺を狙った暗殺者達のものだからだ。仕留めた時に、ユリウスに首だけ保存しておくように頼んでおいた。

 まさか、自分が送り込んだ暗殺者の生首が目の前に突き出されるとは想像してなかっただろう。動揺が隠しきれていないのが伝わってくる。

 

「どうしたんだ?見知った顔でもあったか?」


「わざわざ、こんなものを見せて、何が目的だ?」


「目的か。そんなことより、俺からの問いは『はい』ということで間違いないんだよな?」

 

 ドルックは否定をすることはなかった。俯きながら、ゆっくりと頷いた。自分がしたことを認めると、それ以上は口を開くことをしなかった。

 大人しくするように伝えると部屋を出ようとした。大人しくしておけば、そこら辺にいる棋士達に任せることができる。ただ、残念なことに、物事は上手くいかないようだ。

 

「捕まるのなら、お前を殺してからだ!」


 俺が背中を見せたタイミングを狙ってきた。

 どこかに隠し持っていたのか短剣を所持している。

 しかし、俺が訓練もしていないような中年男性に遅れをとることなどない。短剣が俺の身に届くより先に、ドルックの懐に入り込んだ。魔力で強化した右の拳で、腹に一発殴りを入れた。

 攻撃を受けたドルックは、壁にまで吹っ飛んでいった。


「よし、そいつを連れていくぞ」


 身柄を拘束するために、ユリウスに紐で縛るように命じた。

 ユリウスは指示通り、その場に置いてあった紐状の物でドルックを縛ろうと近寄っていった。しかし、僅かに意識があったのかポケットから何かを取り出した。

 ドルックは取り出した何かを、自身の体に打ち込んだ。得体の知れない液体が、ドルックの体に入り込んでいった。数秒も経たないうちに、ドルックの様子が変化した。

 体が一回り以上大きくなり、感じられる魔力量も数秒前とは比べものにならない異業種となった。


「ダ・イ・・ロク・・・オウジ・・・・」


 どうやら、ドルック自身の意識はなさそうだ。言葉も上手く喋れない様子で、会話をすることは無理と言える。何より、会話が出来ても、俺の話を聞く気はなさそうだ。自分の意識がない中でも、俺を殺そうとすることだけは残っているということは、相当強く意識づけられていたのだろう。

 この異形な様子の原因は、取り出した何らかの物質なのは見れば明らかだ。

 異業となったドルックが腕を振り払うと、部屋の物や壁が壊れていった。こうなってしまっては、ドルックを殺す他ない。

 暗殺者を送り込んだ奴を追っていたら、化け物討伐になるとは思っていなかった。だが、俺の計画の邪魔をするならば、どんな生き物だろうと葬ってやる。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 騎士というか護衛かな、商会なら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ