協力
俺が帰ってきて、三日が経った。
王国内で、これといった変化は見られない。強いて言えば、この三日で、新たな王というのが完全に定着してしまった。こればっかりは、試行錯誤しても覆せない。
最悪だ、最悪としか言いようがない。
「あ~、どうしよっかな・・・・・・」
「あの、一つ良い案があるのですが」
「ほう、それは是非とも聞かせてくれ」
「はい、あの王を殺してしまうのです」
やはり、ユリウスは馬鹿だ。いや、少しでも期待して聞いた俺の方が馬鹿なのかもしれない。あまりの馬鹿な発言に、側にいるフレンも呆れ果てている。ただ、そんな馬鹿な案しか出ないくらい、現状、出来ることがない。
何かするとしたら、今は情報集めだ。何と言っても、分かっていないことが多すぎる。ただ、そこらにいる者に話を聞いても意味がない。聞くならば、情報を多く持っていそうな人物。その候補として、真っ先に上がった人の下へと向かうことにした。
正直、気乗りはしていない。
そうは思ってながらも、目的の人物の部屋の前にまで来てしまった。明らかに他とは違って、華やかな装飾が施された扉に目がいってしまう。王宮内で、これだけ華やか装飾を施した部屋にいられる人物など、彼女をおいてほかにない。
「ご無沙汰ですね、クリシア姉さん。変わらず、お元気そうで何よりです」
「ありがとう、貴方も元気そうで良かったわ」
俺たち姉弟の長女であり、この国の第一王女でもある彼女ならば、何か良い話が聞けるかもしれない。
こうして、面と向かって話をするのは初めてだ。急に押しかけたにも関わらず、嫌な顔せずに接してくれる。そんな彼女のことを、この国の中には聖女と呼ぶ者もいると聞く。
その本心は定かではないが・・・・・・
いや、そんなことはどうでもいい。この際、有力な話さえしてくれれば、それでいい。
「クリシア姉さん、僕がいなくなっていた間に何が起きたのか教えていただけませんか?」
「やっぱり、その話ね。話せるなら、話したいけど、話せることは何もないわ」
「それは、どういうことですか?」
「どういうことも何も、寝て起きたら、国王が死亡したと報せが入り、その頃には既に新たな国王が誕生していたわ。貴方が疑問に思っているのは、民衆が普通すぎることでしょう?それについては、私も疑問に思ったけど、明確な原因が分からないの」
まさか、一番何か知っていそうなクリシア姉さんでさえ、ここまで情報しかないとは。嘘を吐いているようには見えない。何せ、今の状況はクリシア姉さんにとっても好ましくない筈だ。つまり、クリシア姉さんも俺と同様で、何か打開策を練っているのだろう。
いや、この人は、そんなことを考えていないのかもしれない。現に今も、優雅に紅茶を嗜んでいる。焦っている奴は嫌だが、ここまで落ち着きすぎていると、何を考えているのか分からないから、逆に嫌だ。
ただ、そんな彼女だからこそ、ここで協力を申し出るのは良い手かもしれない。信用と言う点においては、不明なところが多いが、そこはあまり気にしなくてもいいだろう。この話は、彼女にメリットのある話。明らかに手詰まり状態の姉さんが、話に乗って来ない確率の方が低い。
そう思って、話を持ちかけようとしたが、クリシア姉さんの話には続きがあるようだった。
「これは、あくまでも想像だけど、民衆たちは洗脳された可能性があるわ」
その言葉を聞いて、この人は馬鹿なのかツッコミそうになってしまった。真剣な話をしている中で出てきた突拍子もない内容。ただ、喋っている彼女は、至って真剣な様子。いくら真面目に話しているとはいえ、そんなことを急に言われて、真面目に聞く者は少ないだろう。
クリシア姉さんなりに、根拠があっての言葉なのだろう。それを聞かない限り、彼女の言葉は妄言としかならない。
これだけの話をしているんだから、特に遠慮はしなくていいだろう。
「民衆を一斉に洗脳なんて可能なんですか?」
「不可能ではないよ。『纏まりの笛』を使えばの話だけど」
「何なんですか?それは」
「貴方は知らないのね。『纏まりの笛』とは、この王国に隠されていた宝の一つで、その効果は笛の音を聞いた者に強い洗脳に近い効果をもたらすというもの」
何で、そんな物が残されているのか。そう思わずにはいられなかった。
クリシア姉さん曰く、元々は、洗脳の為に使用されていたわけではなく、反乱などを被害を生まずに止める為に作られて物らしい。それと、『纏まりの笛』の音を聞いたとしても、魔力量の多い者には効果がないそうだ。それでも充分すぎるくらい、危険な代物。
「その笛は、今どこに?」
「あれを保管している場所は、国王しか立ち入れないわ。だから、今どうなっているかは分からないの」
「姉さんは、笛の音を聞いたんですか?」
「いいえ、私は聞いていないわ。おそらく、全員が寝ている夜に吹いたのかもしれない」
手詰まりだと思っていたが、少しだけ兆しが見えた。やはり、俺も知らない情報を持っていた。しかも、そのことについて包み隠さず話してくれた。
とは言え、情報の真偽はハッキリとしていない。
だが、協力を申し出るだけの価値はある。
俺が、協力の提案をすると、一考することなく了承の返答をくれた。
ここからだ、着実に反撃を進めていくのは。




