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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第三章
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悪を脅かす悪

 ルカの報告を受けた俺は、すぐ馬車を用意した。ここに留まっている暇などない。一分一秒でも早く、ウルシェラ王国に戻らなければならない。

 シエナ王女には、一言だけ伝えると、何も聞かずに見送ってくれた。

 

「国王が死んだことは、アレン様にとって喜ばしいことなのでは?」


「そうだな、それは王位戦が終わっていたらの話だな。このタイミングで死ぬのは、最悪でしかない」


 ユリウスの言ったことに間違いはない。問題なのはタイミング。まさか、こんなタイミングで死ぬとは。たしかに父は、弱ってきてはいた。だが、こんなに早く死ぬとは考えにくい。疑うとすれば、病死や衰弱死の可能性ではなく、暗殺の可能性。

 でも誰が。候補になりそう奴で思い浮かぶのは、一人だけ。

 フレンは、事の重大さを理解しているようだが、ユリウスの方は、何を焦っているのか分からないといった様子だ。

 仕方がない。今後の為にも、説明をしておこう。


「我が王国は、代々王位戦によって王が決まっている。だが、一度だけ、そうじゃなかった時がある。何故だか分かるか?」


「王が王位戦の最中に死んだ時ですか?」


「ああ、その通りだ。結果としては、長男である第一王子が王位を継ぐことになった。その一件を踏まえて、新たなルールが作られた。もし、王位戦の最中に王が死んだ時、王位は年齢が一番上の者に引き継がれると」


「でも、それだとさ・・・・・・」


 フレンが何を言おうとしているのかは分かる。そう、そんなルールが生まれれば、王族の長男長女は、王を暗殺しようとする。もちろん、王は暗殺を警戒している。

 その為、暗殺が成功した例はない。それ故なのか、暗殺を試みるの者はいなくなったとされている。俺だって、そう思っていた。

 とはいえ、念には念を入れて、万が一の時のことを考えて、『影』の者たちに監視するように命じていた。

 監視を命じたのは三人。いずれも、ユリウスたちには劣るが、それなりの実力者。そこらの暗殺者に負けることはない。

 だが、ルカの報告では、三人とも殺されていたようだ。

 おそらく、王を暗殺した者と同じ奴に殺されたのだろう。


「一番可能性が高いのは、第一王子だよね」


「遺体を見ない限り断定は出来ないな。確率は低いが、衰弱死や何かの事故という可能性だってある」


 戻って確認しないことには何も分からない。

 来た時よりも、倍のスピードで馬車が移動していく。

 間違いなく、街はパニックになっている筈だ。そう、パニックになっているのが自然。

 そうだと言うのに、街に戻ると、目に写るのは普段と変わらぬ光景。自国の王が死んで、日も経っていないのに民衆は楽しそうに暮らしている。

 民衆たちに話を聞きたいところだが、今はそんな時間すら惜しまなければならない。

 

「静かですね」


 王宮は、街中と同じで、普段と変わらぬ様子だ。王宮の中にいる警備の兵士や、メイドたちも忙しそうにしている様子はない。

 ユリウスの言うように、あまりにも落ち着いている。もっと騒がしくなっていても不思議じゃない。

 俺は真っ先に、王の部屋へと向かった。俺は、国王の死については何も知らない様子でなければいけない。だからこそ、何も知らないふりをして、部屋の中へと入る。


「ただいま戻りました」


「お帰り、どうだった?」


 俺を待っていたのは、笑顔で玉座で構えている第一王子だった。側には、しっかりと護衛の騎士が立っている。

 玉座に構えているということは、そういうことなのだろう。

 

「何とか、無事に話を済ませることが出来ました。それよりも、どうして兄さんが玉座に?」


「いや~、国王である父上が急死してしまってね。こうして、僕が座ることになったんだよ」


「そうですか、それは大変ですね」


「そうなんだよ、でも頑張るよ。アレンも頑張って疲れているだろうから、部屋で休むといい」


 様子は、俺が知っている第一王子そのものだ。何も変なところはない。

 これ以上、この場に留まっても意味はないだろう。仕方がない。ここは素直に部屋で休むことにすべきだろうな。

 俺は、他に何も聞かずに部屋を出た。

 今の俺に出来ることは数少ない。なんといっても、情報が少なすぎる。今は、微かな情報でも欲しい。ならば、話を知っているであろう人物に聞けばいいだけだ。

 その為に、自分の部屋へと向かった。

 自室には、話を聞くべき相手であるルカが待っていた。

 今なら、落ち着いて話が聞ける。


「それで、国王の遺体はどうなった?」


「それなんですが、死んで直ぐに火葬が行われたことにより、遺体は残っていません。ちなみに、火葬を行うように命じたのは、第一王子でした」


 情報を手に入れたのと同時に、大事な情報源を失ってしまった。

 手に入らないものは、どうしようもない。

 他に何か情報はないかと求めた。

 ルカは、国王の死を伝えた時と同様に、何かを伝えづらそうにしている。まだ何か伝えづらいことでもあるのか。そう思っていたが、一度伝えづらいこと伝えたからなのか、話をする決心がついた様子。


「報告しなければならないのですが、主様が裏から支配しようとしていたユーリシア王国で、あることが起きてしまいました」


「あることとは?」


「行方の知れなかった第二王女が姿を現して、彼女の指揮のもと国家の運営が行われるようになりました」


 なるほど。たしかに、聞きたくはなかった情報なのかもしれない。

 だが、早急に手を打つ必要がある。このままでは、後手に回ってばかりだ。

 ただ、面白いとも感じていた。ここまで自分が追い詰められたと感じるのは初めてだ。そんな相手だからこそ、盛大に報いを受けさせようじゃないか。

 

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