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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第二章
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予期せぬ反乱④

 無数にも及ぶ毒の飛ぶ斬撃が襲いかかってくる。二本の短剣は見掛け倒しではなく、一本で攻撃してきた時よりも格段に増えている。単純に二倍になったわけではなく、攻撃にリズムが生まれたことで、攻撃の数は何倍にもなっている。

 攻撃が増えれば、周りにも多大な被害を及ぼす。とは言え、相手が周りの被害など一切気にしている様子はない。

 だが、俺は違う。約束をしたからには、一人でも死傷者を出さないようにする必要がある。ただ、そればかりを意識していると、俺が傷を負ってしまう。

 俺が反撃出来る隙も減っている。

 何度か反撃をしているが、これといった手答えが感じられない。


「おいおい、こんなもんかよ。警戒して損したぜ」


 確実に攻撃は当たっている。しっかりと、傷も負っている。それなのに効いているようには見えない。痛みを感じていないのか。

 そう思っていたら、いつの間にか俺が与えた傷が消えていた。いや、正確に言うならば治っていたと言うべきだろう。ドルックが使用した時には、回復するなんてことはなかった。

 一瞬見えただけで、俺は五年前にドルックが使用したものと同じと判断してしまっていた。これといった証拠もないのに決めつけていたが、今になって思う。この男が使ったのは、五年前にドルックが使った薬とは違う。少なくとも、改良がされているものであることは確実だ。

 俺は、かすり傷を負うことすら許されない。それに加えて、周りを見ておく必要もある。対する相手は、傷を負っても時間が経てば治っていく。

 現状を見れば、誰であっても俺を不利だと思うだろう。実際、戦っている俺が一番不利だと感じている。もちろん、俺も全ての力を出し切ったわけではない。もし、全ての力を使っていて、今の現状ならば戦わずに撤退していた。

 一先ず、相手からの斬撃をどうにかする必要がある。全てを打ち消すことで、距離を詰めて戦うべきだと相手に判断させる状況にするしかない。

 

「攻撃の数での戦いなら、こっち数で応戦すればいいだけだ」


 そうは言っても、俺が今持っている武器は一本だけ。

 俺は近くに落ちていた誰かの剣を拾った。とても良い剣とは呼べる物ではないが、ないよりはマシだ。

 二本の剣を手に構える。二刀流なんて初めてだ。ただ、この戦いに限って言えば、二刀流の剣技など必要ない。とにかく数さえあればいいのだから。

 相手は一秒間に約三発の斬撃を飛ばしてくる。ならば、俺も同じスピードで、相手が放った斬撃にピンポイントで斬撃を当てていく。

 相手が、俺だけを狙って斬撃を飛ばしてくれたら幾分かは楽に戦えた筈だ。斬撃が飛ぶ方向がランダム故に、攻撃の先読みなんてものは意味をなさない。

 とにかく集中だ。

 同じような攻撃をしている俺だから分かる。少なからず、魔力を消耗して疲れ始めている筈だ。


「クソッ、クソッ、どうして当たらねぇんだ。こっちは何倍にも強くなってるんだぞ」


「たしかに、お前は急激に強くなったよ。だが、王族の魔力量を舐めるな」


 徐々に相手の攻撃ペース落ちてきている。

 数分が経ったタイミングで、相手の斬撃による攻撃が止まった。数分と言えど、その間に放った攻撃の数は数えきれないものだ。このまま同じことを続けていても、魔力が減り続けるだけだと認識しただろう。

 ならば、取る選択は一つしかない。


「そうだよな、そうくるよな」


「わざわざ遠くから殺そうとするなんて勿体なかったんだよ。どうせ殺すなら、しっかりと自分の持つ短剣を刺して殺さなきゃ。そうでないと、殺した感覚が実感出来ないじゃないか」


 攻撃を切り替えた瞬間、相手は自分の間合いにまで距離を詰めてきた。

 間髪入れずに、短剣による直接攻撃。相手の初撃を、左手に装備していた剣で受け止めた。直接剣で受け止めたことで分かる。一撃の重さが、段違いだ。短剣を使っている筈なのに、デカい斧で攻撃されたと勘違いしそうな程。

 攻撃を受け止めはしたが、左手に持つ剣が折れてしまった。やはり拾った剣の質は、あまり良くなかったようだ。

 それに、俺には二刀流は合わない。さっきは数で応戦するために使ったが、直接剣を交えるなら、一本の方がしっくりくる。

 とは言え、俺が有利になったというわけではない。圧倒的に不利な状況を、少しだけ不利な状況へと変えただけ。そう、未だ俺が不利な状況にあるのは、相手の回復力だ。

 今も普通だったら、致命傷になるであろう攻撃を何度か与えているのに、数分も経てば、無傷の状態へと元通り。

 だが、確信できることは一つ。回復力は圧倒的だが、不死身ではない。それは、分かっていても決定打となるものが・・・・

 このままでは、相手は捨て身の攻撃を選びかねない。


「捕まえたぞ」


 回復力があるとは言え、体で剣を受け止めるなんて常人の感覚ではありえないな。ただ、予想が出来ていたおかげで、咄嗟に剣を引き抜けた。しかし、次こそは相手も確実に剣を奪おうとするだろう。

 今、俺に必要な攻撃は相手の回復力が意味をなさないほどの攻撃。大きく別けて、二つの策しかない。

 回復が追い付かないほどのスピードで斬り刻むか、回復が出来ないくらい灰の状態にするかだ。

 確実性を考えれば、後者なのだが、その攻撃をするのには躊躇いがある。相手を殺すことにではない。攻撃を放ったことによる、周りの影響だ。

 俺を中心とした半径百メートル以内に居る者は無傷では済まないだろう。

 だからこそ、俺が求めるのは一つの合図。


「主様、避難完了したよ」


 フレンからの、観客の避難完了の言葉。事前に命令していたわけではないが、察して動いてくれていたのだろう。

 目の前のコイツを倒すことで、配下の働きに応えたことにするか。

 俺が放つ攻撃は至ってシンプルなものだ。だが、発動には約三十秒の時間を要する。そして、その三十秒の間に逃げられてはいけない。

 何より、この攻撃を実戦で使うのは初めてだ。

 

「どうだ、流石に疲れてきただろう。さっさと殺されれば、こんな思いをしなかったのにな」


 十秒・・・・


「聞いているのか!」


 二十秒・・・・


「おい、いい加減に・・・・・・」


「三十秒。良かったよ、お前が馬鹿で」


 俺は相手の体に左手の人差し指を突き刺した。

 これだけでは、人は死なない。相手も呆気ない攻撃だと感じているだろう。だが、もう既に攻撃は終わっている。

 この攻撃は、魔力による攻撃を考えている中で、真っ先に思いついた技だ。あえて名をつけるならば・・・・


『死弾』

 

 これは、ただの突きではない。自身の魔力を、指に集約させて放つ攻撃。

 そう、たとえ今気づいても遅い。指を突き刺された以上、男の体は内部から破壊されて、灰すら残らない。

 魔力による爆発は、周囲にも及んだ。

 相手の体内に直接与えたことで、周囲への被害は極限に減らせたが、それでも被害はある。

 あの男が回復にかかっていた時間は、致命傷であっても十秒ほど。十秒経っても灰すら見えることが出来ない。

 敵を殺すことには成功。

 しかし、俺には心残りが・・・・


「最後の聞いておけば良かったな」


 いや、俺が知る悪役は、そんなことは聞いたりしない。つまり、俺の行動は正しかった。

 薬のことなど考えるべきことは増えたが、今はゆっくりと休むとしよう。

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