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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第二章
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予期せぬ反乱②

 盛り上がりを感じさせていた歓声が、嘘のように一瞬で悲鳴へと変わった。

 サラングレッジの要求は、俺とシエナ王女の身柄だ。

 仕方がないが、ここは、素直に相手の要求通りに動くべきだろうな。


「一応聞くが、この王国では王族に対する不敬罪の量刑はどの程度のものなんだ?」


「即刻死刑だね」


 念のために確認をとったが、サラングレッジからすれば、罪の量刑など気にすることでもないのだろう。だからこそ、俺たちが姿を見せても武器を下ろそうとしない。

 当然と言えば当然か。

 俺たちが姿を見せただけで武器を下ろすような奴なら、そもそも、こんなことはしないだろうからな。

 悲鳴を上げていた観客たちは、シエナが姿を見せたことで、少しだけ落ち着いた。何をするのかは知らないが、さっさと終わらせてほしいものだ。そう思っていたら、サラングレッジの方から動きを見せた。

 

「お前ら、観客どもを一人残らず殺せ!」


 誰に向けての指示なのかは分からないが、この場にいる者たちを確実に殺そうとしている。それが冗談ではないことは、この場にいる皆が理解している筈だ。必死に逃げようとしているが、簡単に逃がしてくれるわけがない。

 事実、サラングレッジの掛け声で、武器を持った者たちが複数人現れた。そんなタイミングで出てくれば、誰だって敵だと思うだろう。

 その者たちは武器を手にして容赦なく襲いかかっていった。この距離では、俺が止めに行こうとしても間に合わない。それ以前に、俺よりも先に動いた奴らがいる。このコロシアムの警備を担当している者たちだ。そいつ等が観客を守ろうとしている。

 それならば、俺が集中するべきなのは、目の前にいるサラングレッジだけだ。

 サラングレッジ本人は、武器を手にしているだけで、未だ本人は行動を起こそうとしてない。

 

「はぁ~、やっぱ面倒だから、今ここで殺してやるよ」


 何もしてこないと思っていた途端にコレだ。

 俺とシエナを殺そうと真っ直ぐ向かってきた。両手に武器を構えて。おそらく、いや確実に、あの武器には毒が塗られている。

 かすり傷を負うのも許されないだろう。

 

「シエナ様には、指一本たりとも触れさせんぞ」


 このタイミングで、シエナを守るための騎士たちが、壁になる形で俺たちの前に現れた。

 ただ、相手が相手なだけに、壁としての役割を果たせていない。次々と騎士たちが出てくるが、それを上回るスピードで騎士たちが殺されていく。

 やはり、かすっただけでも致命傷になるようだ。

 騎士たちでは、相手にすらなっていない。それは、騎士たち自身も理解しているようだ。それでも、シエナのために犠牲覚悟で戦っている。

 当然、それを目の前で見ている当の本人からすれば、気分のいいものとは言えない筈だ。

 

「私のことはいいから、貴方たちは逃げてください」


 このまま見ておくのも悪くはないが、あの騎士たちを助けて、シエナにより一層の恩を感じさせるのも悪くはない。

 その為には、サラングレッジを倒す必要がありそうだ。

 

「私が始末してこようか?」


 たしかに、フレンに任せるという選択肢もある。フレンならば始末してくれることに疑いはない。それに何より、こんな場所で戦えば目立つのは確実だ。しかし、幸いなことに、ここは隣国。多少目立っても、俺の王国にまで情報が回ってくることもないだろう。

 フレンに任せないのは、俺が個人的にサラングレッジのことが気に食わないのもある。どうせ始末するなら、俺の手で始末してやりたいという思いしかない。

 だから、俺は剣を握って前へと向かっていく。

 目の前で壁となっている騎士たちの間を掻い潜りながら進んでいった。


「標的の一人が、自ら向かって来るとはな」


「残念だが、狩られるのはお前の方だ」


 一番前にいた騎士たちは既に全滅していた。

 俺に気付いたサラングレッジは、周りの騎士たちを無視して、すぐに攻撃の対象を俺へと切り替えた。攻撃対象が切り替わった途端に、サラングレッジの動きが格段に変わる。

 今日見た中で一番のスピードで俺の懐にまで近づいてきた。

 速いのは間違いないが、想定内のスピードだ。コロシアムでの決闘の時が本気でないのは見ていれば分かった。ならば、過剰な想定くらいはするものだ。

 攻撃の一つ一つに殺意が籠められている。これだけ殺意が籠った相手とは何度か戦ったことがあるが、どの相手も首や心臓、殺すことの出来る箇所を狙ってきた。だからこそ、極端に殺意の籠った相手の動きは読みやすい。だが、この男は違う。

 かすり傷でも致命傷になるのならば、狙うのは何処だっていい。極端なことを言えば、指先への攻撃さえも、心臓を狙った攻撃と同等ということだ。

 

「どうした、どうした。受けるだけかよ!」


 この男の短剣は、避けるより剣で受ける方が安全だろう。もし避けて、かすり傷でも負えば笑い事じゃ済まなくなる。

 攻撃の一つ一つを確実に捌いていく。

 この数秒間の攻防の中でも、数回だけだが反撃の隙はあった。

 それでも反撃しなかったのは、単なる私情に過ぎない。周りのことを思えば、すぐにでも始末するべきなのだろう。ただ、それ以上に俺は、この男に思いしらせてやりたい。圧倒的な強者と弱者の違いを。その為には、ユリウスたちがやったように、全ての攻撃を受けきってから殺すことにした。

 

「クソッ、クソッ、話と違うじゃねぇか」


「おい、もしかして、これで終わりなのか?だとしたら、この程度の実力で、よく俺を殺そうと思ったな」


 分かりやすく、サラングレッジの動きが雑になってきた。

 かすり傷でも良い。そう思って動いている筈なのに、かすり傷さえ負わせられない。それだけでも焦るには充分だ。

 今の焦る姿を見る限り、間違いなく本気を出し尽くしている。戦っていて、より疑問に思う。

 まさか、この程度の実力で反乱を起こそうと思ったのかと。

 毒は脅威ではあるが、そこまで対処は難しくはない。動きを読むことも、時間をかければ難しくはないだろう。ただ、未だにこの男の思考が読めない。

 俺とシエナを始末するとは言っていたが、明確な目的が分からない。この男が、今回の反乱のリーダーだと予想される。そんな男を、すぐに殺してしまっては手に入れられる情報も手に入らなくなってしまう。

 どうやら、私情をなしにしても、この男との戦いは面倒なものになるかもしれない。

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