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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第二章
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コロシアム③

 大ブーイングで始まった第二試合、あっさりと幕引きとなった。第一試合よりも見応えがなかったと感じたのは、俺だけではない筈だ。

 観客は盛り上がることはなく、静寂な時間が続いた。

 勝ったのは、サラングレッジ。五分も満たない時間の決着に、観客はブーイングを送る暇などなかった。


「どう?彼の戦いは」


 どう?と聞かれても、反応に困る。そもそも、戦いとすら言えるものではなかった。一回戦と決定的に違うのが、敗けた者の状態だ。この戦いで敗けた男は、かすり傷一つしか負っていない。何故それだけで敗けてしまったのか。理由はシンプルだ。サラングレッジは、自身の短剣に致死量の毒を塗っていたのだろう。

 もちろん、何でもありなコロシアムでは、毒を使うことも許させている。ただ、敗れた男は、まさか毒を使われているとは思っていなかったに違いない。そうでなければ、あんなに無謀な攻めはしなかった筈だ。


「いつも、こんな戦い方なのか?」


「ううん、毎回違うよ。特に今日は、大人しい感じかな。だから、客も反応に困ってるんじゃないかな」


「例えば、どんなことをするんだ?」


「前回だと、対戦相手が瀕死の状態になるまで斬って殴ってを繰り返していたね」


 なるほど。今の戦いを見て、さらにシエナの話を聞いたうえで理解した。サラングレッジという男は、俺の思う悪役ではなく、ただの変態野郎だと。だからこそ、サラングレッジという男の存在は不快でしかない。

 こんなことならば、俺も出場しておけば良かった。そうすれば、堂々と消すことが出来るのに。

 

「ねぇ、今あの男のことを、消してやりたいと思ったでしょ」


「よく分かったな」


「何年一緒にいると思っているのさ。それくらいのことなら、あの馬鹿でも察するだろうね。それと、サラングレッジのことなら、手を下す必要はないよ。だって、次の対戦相手は・・・・・・」


 そう言ってフレンは、俺にトーナメント表を見せてきた。たしかに、フレンの言ったことは、正しいのかもしれない。何せ、サラングレッジの次の対戦相手は、第一試合で衝撃を与えたベレッカなのだから。ここで、俺の思考が止まれば良かったのだが、そうもいかずに、ふと思ってしまう。トーナメント表を作成するのは、主催者側だ。そして、そのトップが俺の隣にいる。ならば、聞かないわけにはいかない。


「まさか、仕組んだりはしてないよな?」


「し、失礼な。流石の私でも、そんなズルいことをしないぞ。まぁ、ただ・・・・・・」


 何かを隠しているのは間違いないだろう。いくらなんでも、誤魔化すのが下手すぎるだろ。本当に王女として、やっていけているのかよ。こんな誤魔化すのが下手な奴に、俺は色々と喋っていたのか。もしかしたら、俺の目は節穴と化してきているのかもしれない。

 いや、俺のことは置いておいて、問題なのは、シエナだ。濁らせた言葉の続きを聞こうと、問い詰めたら、簡単に教えてくれた。

 本人の話によると、ベレッカとサラングレッジが二回戦で戦えるように仕組んだらしい。最初こそは、コロシアム悪役として興行的には順調にいっていたようだが、徐々に客から、参加を認めるなという声が増えていったそうだ。ただ、過去に罪を犯しているサラングレッジが、コロシアムという行き場をなくしたら、再び犯罪に走る確率は高い。


「だから私は、コロシアムで興行的に始末しようと思ったのよ。彼が敗ければ、客は盛り上がるだろうから」


「それじゃあ、第一試合と第二試合以外は何もしていないんだな?」


「当然。だって、残りの人たち全員が初参加だから」


 仕方がない。小細工があったことは、聞かなかったことにしておこう。それに、俺たちが今いるのはコロシアムだ。コロシアムは誰かの裏話を聞くのではなく、戦いを観る場。今くらいは、試合に集中するべきだろう。

 第三試合は、前の二試合と違って、互角の戦いを繰り広げた。やはり、互角の戦いの方が、観客の盛り上がり度合いが違う。

 大柄な拳闘士と小柄な槍使いの戦いとなった第三試合は、槍使いの男が勝利した。


「次ですね」


 次の第四試合は、ユリウスが出る試合だ。俺もフレンも、ユリウスが敗けるとは思っていない。ユリウスが油断して敗けることも、まず起こらないだろう。俺たちが気にするのは、敵を殺さないかだ。ルール的には問題ないが、もし殺してしまい、その者が王族の側仕えだと知られれば俺への印象が悪くなる。今イメージが悪くなるのだけは避けなければならない。だからこそ、ユリウスに望むのは勝利よりも健全な試合だ。

 そして、ユリウスと対戦相手の男が姿を見せる。

 ユリウスは、いつもと変わらない装備。対する相手は、弓を手にしている。一対一のコロシアムで、不利だと思う弓を使うということは、何らかの策があるのかもしれない。

 

「あの子が、アレン王子の側近なんだよね。どんな戦いをするのか楽しみにしているよ」


 観客の熱量が、より一層高まっている。そんな中で、二人の対戦のゴングが鳴り響いた。

 先に攻撃を仕掛けたのは、弓使いの男だ。

 ただの矢ならば、大した攻撃力にはなりえない。ただ、男が放ったのは、ただの弓ではなく魔力を纏わせた弓だ。魔力を纏うだけで、岩を貫通する威力にもなり得る。

 男は、ユリウスに反撃の暇を与えないよう弓を引く手を止めない。その攻撃に対して、ユリウスは剣一本で受け続けている。その戦う姿を見て思う。普段のユリウスの戦い方ではないと。それは、フレンも感じているようだ。他の観客からすれば、普通の戦い方なのかもしれない。だが、ユリウスが反撃の隙を狙わずに、攻撃を受け続けるなど何かがある筈だ。

 そう思った俺は考える。そして気付く。ユリウスの戦い方が、第一試合のベレッカと同じであることに。

 もしかしたら、何か感化されたのかもしれない。

 今の様子を見ているだけでは、勝敗が分からなくなってしまった。持久戦のユリウスなど見たことはないが、成長するタイミングだと考えれば、良い相手なのかもしれない。

 

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