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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第二章
36/47

コロシアム

 俺とシエナ、二人の話し合いは、思いのほか早く終わった。いや、サンドラル王との話し合いが長すぎたのだ。

 

「それで、どうするの?もう帰るの?」


「いや、まだ帰るつもりはない。色々と見ていきたいしな。それに、あまりにも早く帰ったら怪しまれてしまう」


「それなら、一緒にコロシアムの観戦に行かない?」


 それは、シエナからの唐突の誘いだった。普通に考えれば、ここはデートに誘われたと思って喜んでおくべきなのだろう。だが、残念なことに、俺は何か裏があるのかと疑ってしまうのが常となっている。とは言え、今のシエナからは、何かを考えているようには感じられない。純粋に、楽しんでもらおうとしているのだろう。

 その誘いを無下にするわけにはいかない。それに、俺の後ろに控えているユリウスが、連れてけと言わんばかりの視線を送ってきている。ただ、俺も行ってみたいと思っているのは確かだ。

 だからこそ、俺は素直に言葉を返す。


「シエナ王女の案内を楽しみにさせてもらうよ」


 俺は諦めることにした。

 何かある度に、疑いを持ってしまうが、今だけは疑うのをやめた。もし、何か企んでいたとしても、それはその時に対応すればいいだけの話だ。

 そうだ、目的意識を変えればいいだけのことではないか。俺は、この女とのデートに行くのを目的とするのではなく、コロシアムの観戦に行って、良い人材を探すのが目的だと思えばいい。

 

「それじゃあ、行こうかしら。今からなら、午後の試合を見ることが出来るわ」


「そうか、それならば是非とも特等席で観戦したいものだ」


「そう言うだろうと思って、貴族専用の席を貸し切ってあるわ」


 流石は第一王女様だ。仕事の出来る女は違うな。

 そんな彼女に案内されて、王城内を歩く。

 争った国の王子というだけあって、周りにいた貴族たちからは強い視線が向けられた。だが、俺は、そんなことに腹を立てる気などない。むしろ、当然の反応だと思っている。ある程度の強い視線は、予想の範囲内であり、我慢すればいいだけのことだ。

 ただ、それも当初の話である。第一王女であるシエナと歩いていると、貴族たちからの強い視線は少なくなっていった。これが、彼女の第一王女としての周りからの信頼の証なのかもしれない。

 当の本人が、それに気付いているかは不明だ。

 一緒に歩きながら、コロシアムへと向かっているが、道中も会話は続いた。しかし、周囲の目もある為、部屋の時とは違い、互いに丁寧な言葉で、話す内容も限られる。


「どうです?これが、この国名物のコロシアムです」


 俺は返答に困った。

 決して、コロシアムを目の当たりにして何も言葉が浮かばなかったわけではない。抱いた印象を言葉にしようにも、大きいというシンプルな言葉しか浮かばなかった。仮に俺が、素直に大きいとだけ答えてしまったら、馬鹿のように思われてしまう。

 

「大きいですね」


 良かった。どうやら、俺の気持ちを代弁してくれた馬鹿がいるようで何よりだ。そして、その馬鹿は、なぜかは知らないが姿を消した。

 とりあえず、馬鹿のことは無視して、コロシアムの中へ入っていく。他の客とは違う通路を歩いていき、貴族専用の席へ座った。貴族専用の席というだけあって、リングだけではなく客席まで見渡せるくらいの良い場所だ。

 国の名物であるのを証明するかのように、客席は隙間なく埋め尽くされている。

 まだ戦いが始まっていないが、既にコロシアム内が熱気に包まれていた。


「はい、これが今日の対戦カードよ」


「八人か・・・」


 シエナから渡されたのは一枚の紙だ。

 その紙には、トーナメント表が記されていた。よく見ると、消えた馬鹿の名前も記さている。俺たちがコロシアム内に入る前にエントリーしたのだろう。

 

「結局、ユリウスはエントリーしたんだね」


「アイツの数少ない楽しみなんだから、存分に楽しんでもらおうじゃないか。それに、アイツがどこまで戦えるのか気になるしな」


「でもさ、そんな実力者っているの?」


 そう。フレンの言うことは尤もだ。

 有名とはされているが、ユリウスに匹敵するような相手が出てくるとは思えない。ただ、隣に座るシエナの表情が、その心配はいらないと語っていた。

 そして、リングでは最初の対戦者たちの名前がコールされる。

 俺は、戦いが始まる前に、シエナにルールの確認をとった。だが・・・・


「ルール?そんなの特にないけど」


 真面目に聞いた俺が馬鹿のような反応だ。それもその筈だと言うべきだろうか。このコロシアムには本当にルールなどないらしい。武器は何を使ってもよく、殺しも許可されている。そして、優勝者には相応の賞金が貰えるんだとか。

 そんなルールならば、当然のように荒くれ者たちも集まってくる。しかし、それも一つの狙いのようで、本当に強者を集める為ならば、何も制限をつけるべきではないのが主催者の考えらしい。

 ちなみに、このコロシアムを主催しているのは、隣にいる王女様だ。

 

「さぁ、楽しんでいってくれ。この国名物の戦士たちによる戦いを!」


 戦いの始まりを告げるゴングが鳴り響いた。その音を聞いた瞬間、観客たちは歓喜する。リングにいる二人は、音を聞いた瞬間、戦いを始めた。

 果たして、俺を楽しませてくれるような戦いを見せてくれるのだろうか。折角の観光だ。気楽に観戦させてもらうとしよう。

 

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