対談
俺たちを出迎えたのは、この国の第一王女であるシエナだ。その名は、我が国でも国王に次いで広まっている。
そんな人からの、出迎えとあっては、無礼を働くわけにはいかない。一先ず、挨拶だけでも済ませておこう。
「この度は、会談の申し出を受けていただき感謝致します」
「いえ、気になさらないでください。私たちも会談の申し出を考えていたところなので」
挨拶とは言っても、形式的なものに過ぎない。
軽い挨拶を済ませると、第一王女のシエナによって王城内を案内される。
「スゴイね、私たちが普段いる王城とは全然違うね・・・」
フレンの言う通り、この場には目につく物が数多くある。少し歩いているだけでも、俺たちが暮らす王城では見たことのない物ばかりだ。
第一王女の案内で、長い通路を歩く。
道中には、見るからに高そうな物がズラリと並んでいた。
目の前に、大きな扉が見えたところで、第一王女のによる案内は終わった。
「ここで、王がお待ちになっています。ゆっくりと話し合いを行ってください」
そう言いながら、第一王女が目の前の扉を開けた。そのまま、俺たちを部屋へ入るようにと促してきた。
俺たちは、言われるがまま部屋へと入る。
部屋の中には、椅子に座っている男が一人と、その後ろには、護衛と思われる男が二人いた。
部屋に入ると、真っ先に椅子に座った男と目が合う。
「私が、この国の王であるサンドラルだ。色々と話したいことはあるだろうが、一先ず座ってくれ」
どうやら、椅子に座った男が王で間違いないようだ。
第一王女のシエナは、二十代前半だと聞いている。その父親である王は、四十代の男性をイメージしていたのだが、会ってみた印象は二十代前半の男性だ。一瞬、本物の王なのかと疑いそうになったが、すぐに彼が王だと納得した。
名乗った時の、雰囲気から王だと思う独特の何かを感じ取る。
「丁寧な対応に感謝いたします。申し遅れましたが、私はフェルナ王国が第六王子、アレンと申します」
冷静に挨拶を返した。
話始める前に、王と握手をする。警戒しながら手を握ったが、その必要はなかった。サンドラル王が俺を握る力が、優しかったからだ。
重要な話をするというのに、緊張感が全く感じられない。
話し相手となる王に至っては、部屋に入ってきてからニコニコし続けている。その様子に、拍子抜けとも言える感情を抱きながら椅子へと座った。
特に期待した話し合いは出来ないだろう。早めに話を終わらせて、別の用を済ませよう。そう思って、俺から話を切り出そうとしたが、サンドラル王の方が一足先に口を開いた。
「それで、お互いにどうやって落とし前をつけようか?」
サンドラル王の一言で、部屋の雰囲気が一転した。
言葉を発するトーンも、表情も数秒前とは違う。俺が王だと感じた雰囲気と同じだ。その雰囲気に危機感を抱いたのか、後ろで控えるフレンとユリウスの警戒心が背後から伝わってくる。
話す気のなかった俺だが、一気に話す姿勢が変わる。
「その前に、どうして私たちの国に攻めてきたのか聞かせてください」
「そうだな、国としての理由という理由は特にない。別に、フェルナ王国に恨みを抱いているわけでもない。ただ単に、ある情報が回ってきたからだ」
「ある情報とは?」
「フェルナ王国が、ウルシェラ王国を侵略しようとしているとの情報を聞いた。それならば、先手を打とうと王位戦の最中であるフェルナ王国に兵を向かわせたわけだ」
サンドラル王は、戦のキッカケを淡々と語った。それを聞いているサンドラル王の護衛の兵士たちは、何も違和感を抱いている様子はない。
聞きたいことや、言いたいことは色々とあるが、一つ一つ情報を整理しながら話を進めていくしかない。
「たった一つの噂程度の情報に兵を差し向けるのですか?」
「何を言っている。噂程度の情報一つあるだけで、兵を差し向けるのか考えるには充分だよ。それに、フェルナ王国は隣国だ。自国のことを思えば、兵を差し向けなかったことの後悔よりも、兵を差し向けたことの後悔の方がマシだというものだ」
サンドラル王の言い分は、俺にも理解できる。それに、起きてしまったことを、この場で話しても埒が明かないのは、お互いの共通認識だろう。だからこそ、今回の戦の落としどころを決めなければならない。
「今回の戦で、お互いに死傷者は出しましたが、その数は同じくらい。それならば、お互いの国宝を送り合うということで、手を打ちませんか?」
「私は別にそれでも構わないよ。品も何でもいい。それなりに価値あるものを、後日送るように手配しておくよ」
「そうですか。それならば、戦のことはこの場をもって終わりとしましょう」
「ああ、そうしよう」
二つの国の王族による独断とも言える形で、正式に戦の終わりが告げられた。
これで、第六王子アレンとしての仕事は果たした。後は、個人的な用事を終わらせるだけだ。ならば、この部屋に留まる理由はない。
「それじゃあ、私はこれで・・・・」
「ちょっと待って、何を言っている。まだまだ話そうじゃないか」
最悪だ。どうやら、サンドラル王は話し足りないらしい。
ここで断るのが良くないのは、ユリウスでも分かることだろう。仕方がない。そう思いながら、おっさんの語りに付き合うことにした。




