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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
22/47

正しい事

 まもなく投票が開始される。

 その投票方法が、国王によって発表された。方法自体は、シンプルなものだった。簡易的な建物が建てられ、その中に国王が入る。民衆は一人ずつ建物の中に入っていくという内容だ。

 当然、建物周辺の警備に抜け目はない。


「あれでは、どうなっているのか分かりませんね」


 ユリウスの言葉通り、中の様子を伺い知ることば不可能だ。その為、投票時の不正も不可能に近い。

 民衆は一人数秒の間隔で、建物の出入りを繰り返している。

 俺を含めた王族たちは、投票が終わるまで待つしかなかった。数時間を要するのは理解しているが、その場から移動する王族は誰一人いない。立候補した皆、自分以外の者の動向を気にしているからだ。


「皆の者、長い時間ご苦労だった。これより、結果の発表を行う」


 気が付けば、夕日の昇る時間となった。

 国王を含めた王族一同が、民衆の前に並び立つ。

 そして、順番に名前が呼ばれていく。


「まず、投票数が一番多かった第一位は、第一王子ルート。それより僅差での第二位が、第三王子ギール」


 名前を呼ばれた者が、順に勝ち抜けていく。名前一つ呼ばれるだけで、民衆の歓声が響き渡る。

 残された枠は三つとなった。

 少なくなっていくごとに、独特の緊張感が走る。

 

「続いて、第三位が第一王女のクリシア。第四位が第六王子のアレン。そして、残り一枠を勝ち取った第五位が、第二王女のミランダ」


 俺の順位は四位だった。全体の結果は、予想していた通りのものとなった。

 呼ばれた五人に納得の民衆たち。

 だが、納得がいっていない者もいるようだ。


「国王、いえ、父上。何故俺が・・・・」


「グレント、お前は黙っていろ。父上、こんな結果、僕は認めませんよ」


「サイスに、グレントよ。王族が民衆の前で見苦しい真似をするな」


「しかし、私は何も・・・・。そう、そうです、この五人の誰かが企んだに違いありません」


「フンッ、何を言っとる。仮に、お前の言うことが真実であっても、負けであることに変わりない」


 第二王子のサイスが、国王に訴えかけた。当然、受け入れられるわけがなく、受け流させる。

 二人の諦めの悪さに、民衆が不快感を露にした。それを感じ取ったのか、グレントは諦めたように身を引いた。

 それでも、第二王子のサイスは諦める気は一切感じられない。

 

「クソクソッ、そ、そうだ。力を示したら認めてくれるんじゃないのか」


「何を言って・・・」


「これさえ使えば、全員が僕のことを認めるに違いない!」


 そう言って、第二王子のサイスは懐から液体の入った容器を取り出した。

 その液体を、躊躇うことなく自分の体に打ち込んだ。とても見覚えのある光景だった。

 見覚えのある通り、第二王子のサイスは異形の姿へと変わっていった。それに合わせて、感じられる魔力量も格段に変化していった。

 突然の展開に、民衆たちは慌て始めた。


「コ・・ロ・・・し・・・」


 異形な姿となったサイスは、その場で暴れだした。やはり、サイスには自我がないようだ。

 ドルックと違い、魔力の量が桁違いとなっている。

 暴れる衝撃で、周辺の建物などが壊れていく。

 民衆たちは、避難を試みようとする。だが、人が多すぎて混み合っていた。最前列にいた民衆は、サイスの攻撃に逃げきれず多数の被害を受けていた。

 そんな様子を見て真っ先に動いたのが、第三王子のギール兄さんだ。


「醜くなったな、兄上。そんなに暴れたいなら、俺が付き合ってやるよ」


 暴れ続けるサイスの前に、ギール兄さんが立った。

 それでもサイスは、ギール兄さんを無視して、周りのものを破壊していく。当のギール兄さんは、剣を抜いて近寄っていった。その様子を見ている他の兄妹や、父たちは何も言う気はないようだ。

 魔力を纏わせた剣を、サイスに向けて振るった。

 ギール兄さんの斬撃がサイスの体に傷を負わせた。こうなれば、自我のないサイスでも反応せずにはいられない。

 

「コ・・ろし・・・テ・・ヤル」


「さっきから、そればっかりだな。他に喋れないなら生かす理由も無くなるがいいか?」


「コ・・・・」


「理解できてないか。それじゃあ、これ以上暴れられるわけにもいかないから、死んでくれ」


 サイスは、攻撃の対象をギール兄さん一点に定めた。

 ギール兄さんからは焦る様子が一切感じられない。サイスの攻撃を簡単に躱していく。その様子を、避難しようとしていた民衆たちが立ち止まって見始めた。

 周囲の様子など気にする素振りは見せずに、戦うことだけに目を向けている。

 二人の戦いは、戦いと言えないくらい一方的な攻防だ。

 サイスの攻撃は、一度も当たっていない。それどころか、ギール兄さんの攻撃を受けるばかりとなっている。その攻撃の衝撃波が、こちらにまで飛び火してくることもある。

 

「結局、この程度か・・・」


 傷が増えすぎたサイスは、力尽きたように倒れ伏せた。間違いなく死んでいるだろう。

 それを見た民衆は歓喜する。

 今の民衆たちは、歓喜のあまり気付いていない。王族が王族を斬ったという前代未聞の出来事に。彼らが事の重大さに気付くのは、少し遅れてからだろう。

 

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